第6話『壁と影』

格子窓の 冷たい鉄肌に頬ずりしながら

目の前の高い壁を見上げる


天気の良い青々とした空と

高い壁の中間に

国旗の白いポールが

僅かに頭を覗かせている


高い壁は日影をつくり出し

何か寒々とした

印象を与える冬の日影は

人々の目に止まらず…


価値と言う言葉には

結して当てはまることは無い…


太陽があると言う証拠に日影はでき

日影が無ければ太陽も無いだろう

人々に注視される華やかな人間もいるが

日影に吹き捲くる寒風の中で

うずくまっている人間も少なく無い


格子窓の冷たい鉄肌に頬を寄せながら

影をじっと眺めていると

錆で汚れた頬が 

高い壁の影が

ひねくれた俺の心に

わずか人間らしい明かるさを

教えてくれたような気がする…




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