第5話『雨音』

降りしきる雨が消してしまった 遠い過去の思い出


だから忘れてしまいたい 昨日の事

何も考えたくない明日の事

それは今ここにある


この瞬間にいきるため

線香花火のような短い輝き

その場その場の頼り無い生き方だけど

それでもいいと思ってる


非行の誘惑は強く

更生の誘惑の弱かった俺達の心に

今 小さな明かりが灯ろうとしている


そっと胸に手を当てると

一分の狂いもない確実な

心臓の鼓動が

ハッキリと手のひらに伝わってくる


俺も俺達も生きているんだ


若い血が体中を駆け巡りそう呼び掛けている


もうすっかり暗くなっている窓の外では

水たまりに落ちる雨の雫が

心臓の鼓動と似た正確な水音を いつまでも打ち出していた





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