ヒロインを嫌うヒロイン

 美雨が勇人の家に着くと家の鍵を盗賊スキルを使いピッキングして中に入り奏美の部屋に向かう。


「まさか盗賊スキルが役に立つなんてね、強盗なんて私達からしたら余裕だけど興味無いから関係ないことね、そんな事より早く探さないと」


 机の中を念入りに探す美雨、しかし探せど探せどそれらしき物は見つからない。


「んー?無いな、探索スキルを使うしかないか」


 探索スキルを発動させて周囲を見渡す、「硬貨」という対象のみ限定させるが見当たらずほとんどがベッドの下やタンスの隙間に落ちているこの世界の「硬貨」しか見当たらなかった。


「合計211円……あとで奏美ちゃんに渡しておこ」


 見つけた硬貨全て数える。全部この世界の「硬貨」しかなく項垂れる。


「はぁ〜、戻りますか」


 美雨は家を出て鍵を閉めて歩いて学校に戻る。


「うーん。奏美ちゃんが忘れるなんてそうそう無いはずなんですけどね、もしくは見間違いの可能性もありそうですが……」


 奏美の性格は大体把握してるつもりだった美雨だが「硬貨」を見たのが約二三週間も前となると忘れる又は記憶違いにもなるのは仕方の無いことだった。


「しかし、時間的にもそろそろも動かないと面倒臭いことにはなりそうですね。とは言っても勇人君の危険は回避しないとですが」


 独りで考え事しながら歩いている途中で公園の前を通りかかる。すると一人でブランコに座りながらゲームしている沙羅を見つける。


「あっ、沙羅ちゃん」

「うわ〜面倒臭い先輩に見つかったな」


 沙羅はその場から去ろうとした時、美雨は止める。


「待って、軽く話さない?」

「ウチは話すことは何もないっすよ」

「私はある」

「……はぁ……ダルっ」


 沙羅はブランコに再び座り直してゲームを再開する、もうひとつのブランコに美雨も座り話し始める。


「ウチは別にどうでもいいです。元に戻ろうがこのままいようがどうでもいいです。はい、話は終わりです」

「沙羅ちゃんは、いえ沙羅は勇人君のことはどう思ってるの?」

「猫被りしないんすね、まあそっちの方がウチとしても話しやすいんでいいですけど、まあ勇人さんには好意は向いてますがこの好意は本当に『ゲームの好意』なのか『本物の好意』なのかは別ですよ」

「そこら辺の調べは?」

「天音さんがある程度調べた結果としてはウチ達は『本物』。ブレイブファンタジーソードは『偽物』だと言うことっす」

「なるほど、それで私は?っとそこは教えてくれるほど優しくはないか」

「別にいいっすよ」

「いいの?」

「最初に言ったじゃないっすか、ウチはどうでもいいって、それに教えないと言って先輩がウチを半殺しにしてきたらそれはそれでまた面倒なので教えますよ」


 ゲームを一旦止めて美雨を睨む沙羅。


「…………やっぱやめた、私戻るわ」

「いいんすか?」


 美雨はブランコから降りて軽く背伸びをしてストレッチしたあと沙羅の方に向く。


「私は別に勇人君に近づきさえしなければ『あの時』みたいに襲うことはしない。それだけは覚えておいて、たとえ後輩でも許さないから」

「相も変わらずっすね。あえて機嫌を損ねること言いますけど『アレ』を守るくらいならまだ『世界』を守った方がいいと思いますけど――」


 沙羅のその言葉に沙羅の額に銃が突き付けられる。それは美雨が出した武器だった。しかし沙羅は動じることなくゲームを再開して続ける。


「機嫌を損ねるにしても言葉が過ぎるわよ、後輩」

「悪かったっすよ。ところで今思い出したんすけどこの後例の二人と会う予定なんですけどどうします?」

「例の二人?」

「おそらく先輩やウチ達よりもめちゃくちゃタチの悪い二人っすよ、ほら校内の器物破損件数が十件以上に人気とワーストのダントツを持ち合わせたあの二人っすよ」


 それを聞いた美雨はすぐに誰か分かった。それこそ天音が後で合流すると言っていた二人だということも。


「たしかに相当タチの悪い二人ね」

「根は悪いのは先輩っすけどね」

「本当にこの後輩言葉選ばないわね、まあいいわ。今日は帰るわ、その二人に会うのはあんまりいい気はしないし、向こうとしても会いたくはないだろうから」

「そうっすよね。あんな事件を起こしたらそりゃ会いたくはないっすよね」

「はぁ、全てのルートを知っている者達だからこそ物事はスムーズに進みそうで進まないわね」

「んまあそりゃウチ達が問題児過ぎるからっすね」

「そこは同意するわ、それじゃあ」


 美雨自身も会いたくはない二人、さっさとその場から去ろうとした。しかしちょうど公園に入ってくる二人の女の子、二人共美雨とは別の制服を着て片方は身長が高く胸も大きく腰は引き締まって学生とは思えないほど男をイチコロに出来る体型でもう片方は身長は低く片方の女の子とは真逆で胸は無く中学生ぐらいに見間違えられそうな見た目だった。

 その二人を見た瞬間、美雨は例の二人だと瞬時に分かった、同時に向こうも美雨だと分かった瞬間、身長が低い女の子は両手に身の丈に合わない篭手を顕にすると美雨に向かって殴りかかってきた。


「――――ぶっ潰れて死ねぇぇ神凪 美雨ッッ!!」


 瞬時に美雨は剣を出して防御体勢に入ったが勢いとパワーで圧倒され大きく後方に吹き飛ばされ公園のフェンスにぶつかりその場に倒れ気絶した。

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