不意打ち
篭手を外す女の子そしてブランコに座る沙羅に話しかける。
「よぉ、沙羅。元気にしていたか?」
「ぼちぼちっすよ、美波サン」
沙羅が美波と呼ぶ小柄な女の子の名前は
「エンカしてそうそう派手っすね、大丈夫すかね?」
「ンなもん関係ねぇよ!さてと、おい萌香バフを頼む、このままトドメを刺す」
「はいはい、攻撃力だけで十分かしら?」
萌香と呼ばれた美波とは正反対のビジュアルな体型の女の子は服装が修道服へと変わり呪文を唱える、すると美波は体の底から力が溢れ再び篭手を顕にする。そしてまだ気絶して倒れてる美雨の所に立つ。
「テメェには散々だったからな、いつかは殺してやると思っていた矢先にこんな巡り合わせがあるなんて最高だ。死にやがれ神凪 美雨」
拳を振り下ろした美波。その衝撃波は凄まじく周囲に地響きを起こした。周りにいた人々は地震かと疑うが美波は気にしていなかった。
土埃が二人を包む、そして美波の眼下の土埃が晴れた瞬間、そこに美雨はいなかった。
「――なっ!?どこにいっ……――ッ!」
周囲を見渡そうとした時、背後からとてつもない殺気を感じ咄嗟に篭手でガードした。背後から襲ってきたのは上下共に黒一色に染まった格好をした美雨だった。
「チッ、『暗殺者』か……まぁいい、狸寝入りが上手いな神凪 美雨」
「早々に追撃されていたら私も危なかったわ」
「よく言うぜ、だが今はパワーがこっちのが上だ!!」
「ええ知ってるわ、でもこの世界においての『職業の使い方』教えてあげる」
一歩身を引いた美雨そして服装を鎧とマント姿『騎士』へと変えると剣を抜き美波に向かって斬り掛かる。
「馬鹿だな。パワーが勝るのなら防御面なら力任せに防御しちまえばいいんだよ!その剣が折れた瞬間次こそぶっ倒してやるよっ!!」
篭手が完全に防御体勢に入る美波にか細い剣だけではほぼ間違いなく折れる展開だった、しかし斬りかかる瞬間美雨の剣は姿形を変え大剣へと変わり美波の篭手を砕いた。一瞬だけ防いだ篭手だったがその砕かれた衝撃で今度は美波がフェンスに吹き飛ばされその場に倒れる。
「……う、ウソだろ、な……なんで……」
「簡単な話『ジョブチェンジ』よ。でも本来はギルドとかで変えるのが当たり前だけどこの世界にギルドなんてない。ましてや私達は自在に職業を操れる、こんな簡単なシステム理解してない美波が悪いのよ」
「クソ……クソクソクソクソ、またアタイはこんな奴に負けるのか…………いやまだだ!まだ負けてない」
ゆっくりと立ち上がる美波は歯軋りを立てるほど怒りを露わにしていたが大きく深呼吸し呼吸を整えて再び篭手を顕にしたが美波を止めたのは萌香だった。
「ストップよ、美波」
「あ?アタイはまだ戦える」
「別にわたくし達は美雨と争いに来たわけじゃないのよ」
「神村 萌香……あなたよくそんな事が言えるわね。あなたなら最初の一撃目は止められたはずでは?」
修道服姿の
「見てて楽しそうだったから、と答えるわ」
「分かってはいたけど最悪な性格ね」
「美雨ほどじゃないわよ」
「…………」
睨み合う美雨と萌香そして美雨は制服姿に戻る。
「……悪いけど今はあなた達の相手してる暇はないの、失礼するわ」
「おい!逃げるのか!!」
「ここは逃げるのが賢い選択だと思いますけど」
そう言って美雨はその場から消える。追いかけようとする美波だが萌香が止める。
「わたくし達の目的はあくまで足止めです。それにやはり美雨は面白い人ですので一方的にやるよりジワジワとやった方が楽しいかと」
「チッ、分かったよ。んじゃま沙羅と合流したことだし始めっか」
ため息を吐いて諦めが着いた美波その後沙羅と三人で話を始めた。そしてなんとか逃げ切った美雨は学校の屋上に着くとその場に膝をつく。
「はぁはぁ……危なかった。最悪……あの二人に会うなんて……げほっ」
少量の血を吐いた美雨。その血を見て笑う。
「まさか本気で私を殺しに来てるなんて……私が先に死ぬか、物語を先に終わらすかのどっちか、しかしあの二人に早々に出くわすのは本当に厄介です、ですがこちらとしても負ける訳にはいきませんからね」
焦りを見せる美雨だがゆっくりと深呼吸したのちハンカチで唇の血を拭き取り制服を整えて美雨は教室に戻った。
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