雨を英語でなんという?
雨が降っているのにも関わらず、イリアの家に急ぐ俺。
「――この本によれば、もうじき雷が鳴り響く。ははっ、たしかにその前触れかな」
先を急ぐ俺の前には、一人の若い男性が何かを言っていた。
「どうだろう、この本は未来を予言するんだ。君も未来を知りたくないかい?」
「……何?」
その男は俺に近づきながら訳の分からないことを言ってくる。
「未来だよ。自分にはどんな未来が待っているのか……まあ、最後の行き先は同じなんだけどね」
「お前は何を言ってるんだ?」
「ははっ、初対面の人にお前呼ばわりかい?まあいい」
「ちょっとレイン、こんな時に出てこなくていいのに!」
「ああ、そこにいるのはイリアじゃないか。雨の中走る人って言うのは、君たちのことだったのか」
「……なあ、あの人何言っているんだ?」
「私もいまだに分かりません……というか、レインは何がしたいのかも分からないんです」
「……お前の名前はレインか?」
「ええそうですとも。僕は、この本の一部の人間。この世界は、この本の通りにできてるのさ」
「……まったくわからん」
話をしてもよく分からないので、とりあえず俺は先を急ぐことにした。
「もう行くんですか?ははっ、それじゃあまた会いましょう」
「――はぁ、どうしたものか……」
途中レインとかいう男に絡まれたが、なんとかイリアの家につくことができた。
イリアからタオルを受け取り、広いリビングにて濡れた髪やら服やらを拭いていく。
ふと疑問に思ったことがある。こんな広い家に、イリアが一人で住んでいるのかと。
「お兄ちゃん、何か飲みますか?」
とそこへ、なぜか服を着ずにバスタオルで体を隠すだけのスタイルになっているイリアがやってきた。
「えっ……あ、うん、もらうけど……てか、その恰好なんだよ?」
イリアのほぼ裸に近い姿に動揺しつつ、どうしてそうなっているかを聞いてみる。
「ああ、今お風呂入ってきたんですよ。えーと、何か飲み物……これでいいかな。それで、お兄ちゃんもお風呂行って来たらいいですよ」
「お、おう、そう言うなら……」
またしても疑問が生まれた。この飲み物はなんだ?
見た目は少し赤黒いというか……これ、血じゃないよな。いや大丈夫なはず。
「この飲み物って、血じゃないよな?」
「はい大丈夫ですよ。ふふっ、まあ私は吸血鬼じゃないので」
「そ、そっか。それじゃあ、いただきます……」
その飲み物を一口。
うん、普通に甘くておいしい。なんだろう、柑橘系とかの甘さじゃない気がするんだが。……まあ、味の感想はどうだっていいな。
「この世界にきて、初めてなにか飲んだ気がする」
「そうでしたっけ?それじゃあ、今日が初めての食事ということですね」
まあご飯は食べてないんだけどね。
「ふぅ……お風呂ありがと」
お風呂に入って、冷え切った体が温まった。
と、イリアに聞きたいことがいくつかあるんだった。
「イリアってこの家、一人で住んでる?」
「はいそうですよ。厳密にいえば、少し前までは家族がいたんですけどね。ある日、なんらかの原因で両親が離婚、母か父のもとに行くことになった私は、自分でも生きれるからと説得した結果、一人でこの家に住むことになったんです。思いのほか、一人で何とかなってますし、むしろ一人のほうが良かったのかなって思ってます」
「だから一人で住んでると」
「まあ、一人だから寂しい面もあるんですけどね……」
「ああ……よしじゃあ次の質問、イリアの家に来る前に会った、レインという男性について教えてほしいんだけど」
「レイン、ですか……」
イリアはソファから立ち上がり、少し歩きながら考えるような仕草をしたのち、またソファに座った。
なんとなく俺も、イリアとはちょっと距離をとってソファに座った。
「その名の通り、水を操るプリーストです。本当の名前は分かりませんが、レインという名前から、天候だったり、水に関することなら何でもできる人です」
「プリースト……そういえば、ライアって子も、女神とか言ってたな」
見た目は子供っぽいのに、どうして女神なのか不思議ではあるが……。
「ああ、あの人はそうですね……」
「それでいうと、イリアは?」
「えっ?わ、私ですか?ええと……ウィザードというものです。私は、なにかすごいことができる訳じゃないですが、基本的な魔法とかは使えますよ」
「なるほど……というか、どうして最初は動揺した?」
「えっ?そ、そんなことないですよ!ただ、あの……ただ、ウィザードって言ったら、おかしいこと言ってるのかというような目で見られると思って……」
「そんなことあるはずない。というか、魔法とかが当たり前な世界なんだ。まあ、ウィザードとかいうのは分からないけどな」
「うぅぅ……そ、そんなことより!明日から何をしようか考えましょうか!」
明日から何が始まるというんだ。面白いものならいいんだけど。
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