EP.4.5「省エネな板橋ギャング②」
トオルこと手板通の家は青年から教えてもらった通りの場所にあった。
普通の大きさで普通の家だった。
普通のインターホンを鳴らすと中から女性が出てきた。
「あら、トオルの友達?」
「同じクラスの江古田と――」
「お付き合いさせてもらっています梨本――」
僕は慌ててスマホをミュートにした。
『塩津です』
「通の母です。いつも息子がお世話になっています。」
お母さんは僕らへ頭を下げた。
制服を見ただけで息子の友達だと看破するのはさすが通のお母さんだ。
加えて筆談しかしないアホエコ野郎にもしっかり頭を下げてくれる。
「でもごめんなさいねぇ、通ちゃんは今家にいないのよ。親戚のうちに泊まりに行っているわ」
「……そうですか。わかりました。失礼します」
僕らは早々に引き上げた。が、
「ちょっと手がかりゼロじゃない!」
「ミュートしたのになぜ……」
「私が作ったスマホなんだから私が解除できるに決まってる」
「……この天才が」
「もうちょっと突っ込んで聞いてみてよ。お母さんに。じゃないと進展しないわ」
『そうでもないみたいだぞ』
「?」
「よう、お兄ちゃんたち」
電柱から人影が音もなく現れた。顔も表情もつばの影に隠れて見えない。頭にはハンチング帽!
どこに潜んでいたのか、帽子の連中がひとりふたりと集まってきた。全員が僕より少し上ぐらいの男たちだった。みな一様に同じハンチング帽をかぶっている光景は威圧感を与えるのに充分だった。
「俺らは〝
「ぼ、ぼくらは友達が学校を休んだから心配になって来ただけなんです」
「それが手板通ってことか……」
帽子の男は立てた親指で背後を示してみせた。そちらは僕らが歩いて来た方向だ。つまり、トオルの家がある。
(見張られてた?)
そもそもトオルのことを知っているっぽい。
「と、トオルのことご存じなんですか?」
ああ、と男は頷いてみせた。「アイツの身柄はうちで預かってる」
「ど、どういうこと?」
僕は問うたが、彼らはトオルのことを説明する気はないみたいだった。
「お前と同じ用件のヤツがわんさか来てるってことさ。新宿帝国の〝女王華《ジヨーカー》〟やら、お前らと同じ制服の〝みどりの魔女〟とかよ!」
「ハナちゃんが!?」
僕は驚き、ついうっかりその名前を口にしてしまう。
男は「やっぱりな」とでも言いたげに、ハンと鼻を鳴らした。
それが引き金になった。
「
「塩津! 逃げるぞ塩津! おい塩津! あれ? 塩津ぅう!」
「省エネ解放!」
久々に聞いたクラスメイトの肉声に僕は驚く。
「え、おい!」
「身体強化!
塩津は包囲網から電車の速度であっさり抜け出した。
僕を残して。。。覚えとけよ、あの野郎。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます