EP.4.0「省エネな板橋ギャング①」

 新宿から山の手線で池袋へ。さらにそこから東上線に乗って北へ数駅。


 僕らは普段あまり北へは行かない。行っても池袋までだ。



(意外と栄えてるんだな)



ってのが僕の板橋の印象だった。


 緑が多いわけじゃない。アスファルトはしっかり地球の肌をかさぶたみたいに覆いつくしていたし、空は電線によって封じ込められている。


 ただ地面はごみひとつ、吸い殻ひとつ落ちていない。


 商店街の往来は行儀よく、右と左にしっかりわかれて流れていた。



「おっと、ごめんよ」



 うしろからブツかられて僕は転びそうになった。僕はそんなに大きくない。身長も並より小さいぐらいだから大人にブツかられるとすぐによろけてしまう。


「すまねえ、坊主。パチンコで大当たりしちまってよ」


 見ると両手に大きな紙袋を3つ抱えていた。オシャレな人だった。これが板橋スタイルかな。真っ白なシャツにサスペンダーをつけている。


 僕は警戒したが。


(〝血盟団ブラインダーズ〟は帽子をかぶっている)


 金髪の頭には帽子は載っていなかった。



「いいえ。こちらこそぼーっと突っ立っててすいません」

「お、その制服は新宿の? 再来学園じゃないかい? めずらしいな」

「友達の家に来たんです」

「住所はどれどれ? ああ、それならそこの路地入ってまっすぐいったところだぜ」

「ありがとうございます」

「いいってことよ」


 彼はさわやかに言って去っていった。


「イケメンよねぇ。それにすごいさわやか」

『日本人じゃないんじゃないか?』

「そうかもな……」


と僕は頷いてから「オイ」と隣と自分の胸にツッコんだ。



「どうしてお前らまで来てんだ!」

『ヒマだから』


 塩津が紙で言った。


「彼女が彼氏を心配して来たら駄目なの?」

「お前は家から電話してるだけだろ!」


と僕は胸のスマホに向かっていった。


 学校を出て気づいたら胸ポケットに入っていたのだ。梨本が魔法で転移させたのだ(勝手に)。


 梨本との連絡専用のものだった。


 スマホなんて高価なものさすがに受け取れないと思ったが


「いいのよ。私が自作したやつだから」


(この天才が……)


と僕は内心で舌打ちした。こいつらやっぱりぜんぜんエコじゃない。

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