EP.5「うそのエコ」
「えー、本日は大足場の悪い中、皆さまお集まり頂き――」
椅子の上に立って演説をするお嬢様を無視して、中庭に集まった僕らはさっそく作業に取り掛かった。
「名付けて『ひまわり植えて地球を大緑化したエコポイントで大魔法』大作戦大開始ですわ!」
お嬢はスコップの代わりにいつの間にか拡声器を持っていた。もちろん劇団員の二人が用意したのだろう。
僕らは共通の目的のため、黙々と作業をした。
確かに、ハナちゃんの種をクラスへ提供したのは僕だった。
でもそれで責任を背負わなきゃいけないってのはちょっと理不尽だ。
作業も1時間続くと愚痴が出てくる。
「まだかよ~」
「あと何個ぐらい植えたら勝てるんだー?」
僕は答えなかった、というよりは知らないといったほうが正しい。
(ってか、僕は種もってきただけだってのに)
いつの間にか責任を背負わされているのが腹立たしかった。
「ソウが魔法でやってくれよ」
「草だし」
「そういえば江古田くんの魔法って見たことないわね」
「穴開けるぐらいはできんだろ」
「ちょっとやってくれよー」
「わーったよ!」
僕は大きな声で言った。
「鉄魔法」
僕は怒りをぶつけるように大声で言った。
手を目の前にもってきて人差し指と中指を立てる。
それで手の先が鋼鉄に覆われた、ように見せかける。
アタタタタタタタタタタタ
二本に連ねた指で土に穴を開けた。漫画の拳法家みたいに高速で。
実は、最近僕はぜんぜんエコしていなかったんだ。
すでに掘り返された土は柔らかく、僕の嘘はバレずに済んだ。
「向こうも穴開けるから」
「おお、頼む!」
「江古田やるじゃーん」
女子の声を背中で受け止めて、ちょっと嬉しいはずなのに、指先の痛みが尋常じゃなかった。
「いってぇー!」
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