第192話 ワレスさんからのプレゼントは?



「わ〜い。わ〜い。優勝祝いもらっちゃった〜。何かなぁ?」


 あっ、魔法書だ。

 あいかわらず、呪文じたいは変な字で書いてあるけど、意味は日本語で理解できる。


「雷帝、だね。聞いたことない魔法だなぁ」


 すすすっと蘭さんたちがよってきて、僕のまわりをかこむ。


「あの人の最高魔法って、雷神の怒りじゃないのかな?」と、蘭さん。

「でもさ、これ説明見たら、一回使用するのにMPが二百もいるよ」

「ええっ? 二百ゥー?」


 はははと、笑いながら、猛が爆弾宣言。


「おれ、聞いたことあるなぁ。前に魔王を封印したときの勇者最大奥義が、雷帝っていう魔法だったって」

「ええ? もしかして、じゃあ、これ、最強魔法なのかな?」

「少なくとも雷系の最強だろ」

「なんで、ワレスさん、こんなの持ってたんだろな」


 蘭さんが首をかしげる。

「生来魔法なんじゃないですか? だって、あの人、前から雷系、使ってた。それに自分の知らない魔法なら、あの知力なんだし覚えないわけがない。だから、白紙の魔法書に自分で写したんですよ」

「そうか。そうだよね」


 問題は、この魔法を誰がおぼえるかだ。前に買った『雷神の怒り』もまだ使ってないのにさ。


「MPがたっぷりある人じゃないと使えないよね。あと、知力が高いほうがいい」

「兄ちゃんにくれ」

「ダメー。兄ちゃんは自分で雷属性おぼえるじゃん」

「雷帝までおぼえるか、わかんないだろ」

「ダメー」


 僕の考えを述べよう。

 一、自分でおぼえる。

 二、ミニコに会得させる。

 三、または蘭さん。

 この三択だ。


「魔王との戦いは絶対、熾烈しれつだよね。みんなが一つずつ、奥義って呼べる技を持ってるほうがいいと思うんだ。僕は傭兵呼びがあるし、ミニコと山びこのコラボで、魔法も強力になった。物理攻撃、魔法攻撃の大技を持ってるから、あとはブレスかな。レッドドラゴンとグリーンドラゴンをおぼえようかと思う」

「そうですね。どれかの攻撃が効かない場合でも、別の方法で攻撃できる」

「ミニコは僕の装備品だから、実質、僕が魔法おぼえるのと大差ないし、やっぱり、ここはロランかな。ロランの今の大技はブレイブツイストだよね?」

「はい」

「あれってMP使うのに、じつは物理攻撃なんだよね。だから、魔法の奥義も持ってるのは悪くない」


 蘭さんがこれまでイベントで獲得した魔法は、補助系ばかりだ。パーティー全体の補助をしながら回復したり、みんなが攻撃する号令をかける。雷属性は一個も習得してない。


 そう言えば、ラフランスさんが前に、蘭さんの魔法属性は魅了系だって言ってたもんな。これはもう、蘭さんは雷属性の攻撃魔法はおぼえないと見ていい。


「じゃあ、これ、ロランがおぼえて。万一、生来魔法として習得したら、そのときは白紙の魔法書に写せばいいんだし」

「ありがとう」


 せっかく知力二万になったんだからね。強い呪文を知っとかないと。

 それに、蘭さんなら旅の途中で脱落する可能性はゼロに等しい。だって、選ばれし勇者だから。ほかの人だと何かの理由で離脱するかもしれない。


「じゃあ、ロラン。行くよ?」

「はい!」


 僕はもらったばかりの魔法書で、パコンと蘭さんの頭をたたいた。キラキラの金粉が一瞬、舞った。


「どう?」

「おぼえました。すごいマジックです。パーティーの知力の総計の二倍ダメージを、敵単体に魔法防御無視であたえます。しかも、必中。付属効果で必ずマヒさせますね。マヒ耐性を上まわるって」


 パーティーの知力の総計。それって、蘭さんの知力二万、ミニコの三万、猛の四千五百、僕の六百なんかも足されちゃうってことか。しかも、その二倍!


「パーティーメンバーによっては、ダメージが十万超すね」

「ですね」

「しかも魔法防御力無視で必中——ってことは、この魔法だと、ワレスさんでもワンパン……」

「ですね!」


 とんでもない魔法だなぁ。

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