第193話 スーパーデラックスな景品



 食後、久々にギルドに行くことにした。盗賊のツボがなくなったから、もっと欲しいんだよね。


 抽選場に行くと、合成屋のおばあさん、ゴンドリヤさんがすわってる。やっぱり、ヒノクニにいた大魔女魔女さんとそっくりだ。


「抽選させてください!」

「抽選券を出しなされ」


 ふたたび、紙吹雪の嵐〜

 ミャーコも楽しそう。


 ……あれ? ゴンドリヤさん、抽選券をかき集めると、半分以上返してきたぞ。そして、ドン! と宝の山々をカウンターに載せる。


「これを持って帰りなされ」

「ええっ? ガラガラは? わーい、当たったとか、あははウフフは?」

「カーッ! 帰りなされ!」


 ここでもヒノクニ同様、しめだされてしまった。もうガラガラはさせてもらえないのか……。


「くすん……ガラガラしたかったよ……」



 かーくんの泣きマネが発動した!

 ゴンドリヤはダメージを受けた!



「……しょうがないですのぉ。一回だけですぞ?」

「えっ? ほんと?」


 ラッキー。

 泣きマネって、こんなときに使うものなのか?


「じゃあ、一回するね? ガラガラポンポン、ガラポンポン」


 ガラガラガラガラ——


「ああ……あっ? あっ? 黒? 黒い玉なんかあったっけ?」

「おおっ! それは特等の上のスーパーデラックス特等ですじゃ! カードもブラックのほうがゴールドより上ですじゃろ?」


 ゴンドリヤさん、なんでブラックカードなんて知ってるんだ? まさか、この人もほんとは現実から召喚されたのか? この強烈なおばあさんが? こんな人、リアルにいるの? いていいの?


「じゃあ、スーパーデラックス特等は何をもらえるんですか?」

「三択ですじゃ」

「三択?」

「船! 馬車! 飛行船! どれがよいですじゃ?」

「えっ? ええーッ! そんないいもの、もらえるの?」

「もらえますですじゃ。ただし、スーパーデラックス特等の景品は二回め以降、レアな職業のツボに変わりますですじゃ」

「そっか。じゃあ、スーパーデラックスな景品は今回かぎりなんですね?」

「さよう」


 これは、悩むな。

 馬車は持ってるから論外。

 もらうとしたら、船か飛行船なんだけど。


「猛! 船と飛行船、どっち?」

「たぶん、この世界じゃ、技術的に飛行船のほうが造るの難しい。つまり、それだけ高価」

「ロラン! 飛行船でいい?」

「世界中どこでも飛んで行けたら、船は必要ないですからね」


「決まり! 飛行船ください!」

「ではな。二ヶ月後にとりにきなされ」

「えっ? 二ヶ月後?」

「場合によってはそれ以上かかるやもしれん。今、ダディロンが制作中じゃ」


 そっか。僕らがヤドリギの魔の手から救いだしてあげた、伝説の鍛冶屋、ダディロンさん。


 ヤドリギに空飛ぶ乗り物を作れって脅迫されて、断ったせいで牢屋に入れられてたんだけどさ。


 けっきょく、作ってるんだ。好奇心に勝てなかったのかな?

 ダディロンさんの造るものなら、品質には間違いないね。


「じゃあ、できあがったころにとりにきます」

「うむ。これが引換券ですじゃ。カーッ」


 なんか、しょぼい引換券を渡された。チラシの裏に手書きで『飛行船』って汚い文字が書いてある。


 ま、いいや。スーパーデラックス特等ももらったし、盗賊のツボを十個手に入れた。戦士のツボ、僧侶のツボも十個ずつ。


「おっ。アクセサリーに天使の羽がある。あとで合成して、ぽよちゃんに状態異常かからないようにしてあげよう」


 天使の羽はほかにもいくつか、たまってたから、アンドーくんたちのも作りなおそう。


「あっ、かーくん。魔法書にプチサンダーありますよ」

「これを知力低くてMPはそれなりにある人がおぼえてくれれば、僕はあんまり痛い思いせずに、スマホ、充電できるんだけどな」

「モリーなら、MPは三百以上あるし、知力は二桁ですよ?」

「よし! モリーにおぼえてもらおう! 行くよ!」

「プルプル」


 あっ、モリーってプルプル語なんだ。スライムだもんね。


「よし。パコン!」

「プルル」

「おぼえた?」

「プルル」

「じゃ、やってみて」

「プルプルルー!」


 あっ、ピリっと来た。

 でも、このくらいなら冬場の静電気ていどだ。


「モリーのプチサンダーだと、電力は8しか充電されない。やっぱり痛いほど、たまるんだ」


 でも、これで猛のカミナリ受けなくてすむ! ほんと、死ぬからね?

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