第190話 紙よ、サラバ



「ところで、かーくん。小説を書くのランクがあがったと言ってたな」


 ワレスさんのタイムリーな質問。


「アイテムの説明と、魔王軍との戦闘で重要でない人の蘇生ができるようになりました」


 ノット重要人物。つまり、NPC、サブキャラの一部のことなんだと思う。


 蘭さんが割って入る。


「かーくん、特別試合の前にスマホをいじってましたよね? もしかして、なおったんですか?」

「うん。ロランのステータスも書きなおすよ」

「ほんとっ?」


 蘭さんの食いつきがいいこと。


「体力を五万にすればいいんでしょ?」


 しばし蘭さんは考えた。


「体力は危険察知で、確率50%だけど五万になれるから……HP、体力、素早さを一万ずつ、知力を二万増やしてもらおうかな。ミニコを見てたら、魔法効果高いのもアリだなって」

「了解」


 さて、じゃあ、今の蘭さんのステータスは——


 レベル28(魔道戦士)

 HP288(317)、MP135(148)、力50000(55000)、体力5、知力131(144)、素早さ191、器用さ134、幸運144。


「あれ? まだ魔道戦士なの?」

「そうじゃないんです。ほかの職業についてても、寝て起きたら、魔道戦士に戻ってるんです」

「なるほど。バグってるね。じゃあ、それもなおすよ。あのあと、ロランはなんの職業をマスターしたのかな?」

「あと、レベルもあげることできますか? ずっと28のままだから」

「だよねぇ」


 今現在、蘭さんがマスターしてる職業は以下のとおり。これは職業ツリー欄に残ってるから、かんたんに調べがついた。


 基本職

 戦士、武闘家、魔法使い、僧侶、盗賊、詩人、踊り子、ニート、遊び人

 中位職

 大盗賊、魔道戦士、賢者、弓使い、武人、騎士、大僧侶、大魔法使い、大ニート

 上位職

 勇者、聖騎士


 つまり、マスターボーナスの補正が、MPに10%、力、体力、素早さに5%ずつついてる。


「聖騎士か。今、聖騎士なんだね?」

「そう。マスター中です。とにかく、僕になれるものをいろいろ覚えてます」


 すると、よこで見てたワレスさんが口をはさむ。


「聖騎士をマスターしたら、勇神になれるじゃないか。あれをマスターすると、全ステータスに25%のマスターボーナスがつく。それに装飾品も二個多く装着できるしな」


 そう言えば、前に「ロランは早く勇神になれ」って言ってましたね。


「勇神は最上位職だ。就労中のボーナスもいい。早くなれ」


 蘭さんは誇らしげに胸をそらした。


「僕はあなたにくらべたら、まだまだかもしれないけど、いつかは見返してやりますから」


 ワレスさんは笑った。

「ああ。待ってるよ」


 からかってるふうではなかった。心から勇者の成長を待ちのぞんでるって感じ。


 そう。ワレスさんがどんなに強くても、選ばれし勇者は蘭さんだ。きっと、そこに大きな意味があるんだろう。勇者の成長は、ワレスさんにとっても喜ばしいことなんだ。


 さて、じゃあ、あらためて、今の蘭さんのステータスだ。

 レベルはじっさいに、このくらいあがったはずだったという蘭さんの言葉を信じて、三十あげた。


 レベル58(聖騎士)

 HP10588(11646)、MP508[558](585)、力50000[52500](57750)、体力10171[10679](12280)、知力20090(21094)、素早さ10201[10711]、器用さ470、幸運500。


 ちなみに、MP、器用さ、幸運の数値にも二百ずつ足してる。というのも、力が五万の上に武器とプラスして、攻撃力十万になってしまう。余剰ぶんは数値上、消滅したのと同じだ。だから、そういう多めの数値を、少なめのとこに割りふったわけだ。


「じっさいには、マスターボーナスついてる。力からまだ二千五百くらいけずって、ほかにあてても問題ないと思うけどね」

「そこはまたレベルあがったときに、あらためて相談します。今はとりあえず、これで」


 やっぱり、人のステータス書きなおすと、電力めちゃめちゃ食うなぁ。いっきに20%使った。


「ああ、充電量が30%に……」

「明日にでも、ホムラの研究所に行けばいい。それとも、おれがプチサンダーを——」

「いえ! けっこうです!」


 せっかくのワレスさんの申し出だけど、プチサンダーでも死にますから!


 でもこれで、名実ともに勇者が神ステータスになったよ〜

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