第五部 夢の巫女を探せ!

第十三章 大会は終わっても

第189話 大会終わって、日が暮れて

https://kakuyomu.jp/users/kaoru-todo/news/16816700428894327907挿絵



 長かった一日が終わった。

 今日だけで、いろんなことがあったなぁ。


 けっきょく、ゴドバの腕は奪われた。ゴドバ自身も逃がしてしまった。


 これでよかったんだろうか? ワレスさんは謎の微笑を見せて、作戦は成功だって言ったけどさ。


 それより、ゴドバが去っていったんで、僕らは心置きなく、蘭さんと再会を喜んだ。


「わあっ、かーくんたち。すごく強くなったんですね。僕らも特訓したんだけど、かなわないなぁ」

「えへへ。毎日、白虎の竹林に通ったからねぇ」

「へえ。僕らは朱雀の山林に通いました」

「そっか。最初に朱雀門から入ったんだね」


 と、この会話はボイクド城のなかの僕らの宿舎でしている。

 武闘大会が終わったら、転移魔法でボイクドに帰ってこれるようになった。

 でも、まだヒノクニにも行ってみるつもりなんだけどね。シャケも探さないといけないし、ちょっと気になることが残ってる。


「それにしても、ゴドバの腕を持ち逃げされたのに、作戦成功って、どういうことなんだろう?」


 すると、戸口から声がする。

「あれは、わざと持って行かせたんだ」


 ワレスさんだ。

 アンドーくん特製鍋をかこむ僕らのかたわらへやってきて、あたりまえの顔をして手をさしだす。

 僕はせっせと、白菜や肉を器によそってあげた。


 アジなんか、まだ痺れてるもんね。


「はぁ……カッけぇ」


「わざとって、どういうことですか?」

「あの腕には、ホムラが開発したマイクロチップが埋めこまれている」


 むうっ。ホムラ先生のSFが、どんどんファンタジーを侵食してくる!


「つまり、逃げられても、ヤツの居所がわかるように?」

「というより、はなから逃がして、その居城を調べるために」

「なるほど」


「あえて持っていかせるためには、まず腕のありかを不自然でなく世間に知らしめる必要があった。その上で、つねに大勢の兵士が監視できる設備と、奪われてもおかしくない状況を作らなければならなかった。その舞台として、武闘大会は最適だったんだ。あの特別試合のあとなら、おれや勇者パーティーが疲れはてて、手も足も出なかったとしても不思議はないだろう?」


 僕はうなったよ。

 そこまで考えてのことだったなんてね。


「居城がわかったら、どうするんですか?」

「もちろん、攻めこむ。ホムラが今、その場所を解析している」と言ったあと、ワレスさんは考えこんだ。


をつきとめられるんじゃないかと期待しているんだ」

「それって、つまり……」

「そう。おまえが以前、ゴドバのキャラバンにつれさられた謎の城だ。人を魔物に変える製造工場。その場所をぶっつぶす」


 僕は大きくうなずいた。


 そうだ。大会場に残されたガーゴイルたちも、ほんとは人間だった。ボイクドやヒノクニや、その他の国で行方不明になった人たちだ。


 こうしてるあいだにも、新たにさらわれている人たちが、きっといる。いつまでも続けさせちゃいけない。早く工場を壊滅させて、こんなことは終わりにしなければ。


「わかりました。もしも、そこへ行くときには、僕も同行させてもらえますか?」


 すると、蘭さんが僕の肩をたたく。

「かーくん。じゃありません。です」

「ありがとう。ロラン」


 早く、あの謎の島へ行って、ナッツのお母さんを助けたい。せっかく、小説を書くのランクがあがったんだから。

 待ってて、ナッツ。もうすぐ、そこへ行く。

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