第188話 現れた! ゴドバ!



「では大会優勝者である、かーくんパーティーに勝者の証、ゴドバの腕が授与されます。代表して、リーダーのかーくん。表彰台へおいでください」


 そうだった。ゴドバの腕ね。

 僕、やっぱりいらないなぁ。

 でも、くれるって言うから、しょうがなく表彰台の上にあがる。


 バックゲートから前のときと同じバニーちゃんが、大きな大きなトレーを持ってやってくる。


 それにしても、ゴライさんは襲ってこないのかな?

 ほんとはゴドバなんじゃないの? それにしては、ワレスさんに一瞬でやられてたけど……。


 このまま、ゴドバは現れないのかな? もしかしたら、もう腕のことはあきらめたとか? そうであってほしい。


 僕は緊張して、自分の前に運ばれてくるトレーをながめていた。


 それにしても、デッカいトレーだなぁ、ほんと。

 あのバニーちゃん。すごい力持ちだ。男の二、三人は軽く持ちあげられるだろうね。


「強者の証が運ばれてきました。ゴドバの腕が、かーくんさんに授与されます」


 バニーがフタをあけた。ワレスさんが近づいてきて、トレーの上の青い腕を手にとろうと——


 そのときだ。

 急に暗雲がたちこめた。快晴の青空が、にわかに夜のごとく暗くなる。


 なんだろうと思って見あげると、雲? 黒いものがいっぱい浮かんでる。


「雲……」


 違うぞ。薫。雲にしては自由に飛びまわってる。

 なんだ。コウモリじゃないか。すごいなぁ。大きいコウモリだぁ。まるで、ガーゴイルみたい。


「わあッ! ガーゴイルだ!」

「竜兵士とガーゴイルの大軍だー!」

「助けてくれー!」


 観客たちが悲鳴をあげて逃げまどう。


 なんで、こんな人間の国のどまんなかに、とつぜんモンスターの大軍が?


 すると、そのときだ。

 空に気をとられた僕の前で、何かがサッと動いた。


「グハハハハ! とりもどしたぞ!」


 あっ! バニーがトレーをなげすて、腕をわしづかみにしてる。

 その姿はみるみるうちに巨大化して、みにくく歪んでいった。巨大な魔物——ゴドバだ!


 まさか、バニーがゴドバだったなんて!


 ゴドバは腕をひっつかむと、自分の肩に押しあてた。またたくうちに、接合部が癒着ゆちゃくしていく。


 ゴドバは目の前にいる僕にとびかかってきた。

 ぽかんとしてる僕は、かんたんに餌食に……。


 いや、違ったぞ! ギガファイアーブレスだ。炎にあぶられて、ゴドバは舌打ちをついた。そのときには、ワレスさんも剣をぬいて迫ってる。


 ゴドバは空に飛びたった。

 かわりにガーゴイルの大軍が会場に降下してくる。足止めだ。ゴドバが逃げだす時間を稼いでる。


 キャーキャーとうろたえる人たち。

 僕らはガーゴイルや竜兵士を一般人のほうへ行かせないように戦った。


「小切手を切るー!」

「ギガファイアーブレス!」

「キュイキューキュウ!」

「ゆらり!」


 蘭さんたちも戦ってる。巨大化したクマりんが、バタバタと頭上を飛びまわるガーゴイルを打ち落とす。クマりん、テディーキングになるとデッカいからなぁ。


 もちろん、ワレスさんやヒノクニの兵隊も戦った。おかげで、一般人にケガ人はなかった。


 しばらくすると、ガーゴイルたちは飛び去っていった。戦闘不能になった多くの魔物は、いつしか人間の姿に変わっていた。


「この人たちも、魔法でモンスターに変えられてたんだ」

「大丈夫だ。かーくん。みんな気を失ってるだけだ」


 だけど、どうするの?

 ゴドバを逃がしちゃったよ。


「僕ら、追いかけます!」と言ってみたんだけど、なぜか、ワレスさんはほくそ笑んでる。これは、なんか企んでる顔だ。


「いや、いい。作戦は成功だ」


 ふーん? 腕を持ち逃げされたのに?




 第四部『武闘大会の行方』完

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