第185話 特別試合5



「あっ。僕、もう一回、動ける。まだ自分の行動が残ってた」

「かーくん! もう五千万とかケチなこと言ってるな! 億だ。億で行け」


 と、そのときだ。

 巨大化したテディーキングが暴れだす。


「く、クマりん! そっちは敵だよ? 早く正気に戻ってー?」

「ガオー!」


 ダメだ。聞こえてない。

 ワレスさんを守るつもりだ。


「そうか。傭兵呼びは全体攻撃だ。だから、さっきの五千万攻撃、クマりんが大半、ダメージを請け負ったんだ」

「かーくん。急げ! クマがあばれてる」

「わかった。小切手を切る。一億円!」


 再度、大軍がやってくる。あばれるクマめがけて突進だ。あのキングたちが合体したメガキング状態だと、HPはマックスに達するみたいだ。つまり、約十万。


 すでに、ケロちゃんは失神。

 クマりんとワレスさんで一億ダメージをわけあう。ということは、ワレスさんは五千万ダメージを受けるはず。なんだけど、そのうちクリティカルしか効かない。


 一千万のとき、五千ダメージを受けてたよね。五千万なら、単純に考えて五倍の二万五千ダメージ……。

 ん? 最大HPが約六万六千ってことは、二万五千だと……足りてない?


 えーと、最初のターンに小切手を切るで五千、次に猛が二千を与えた。ぽよちゃんが五百くらい。


 で、二ターンめで猛が八千。

 小切手を切るを五千万ずつで二回やったけど、最初はケロちゃんもいたから、ワレスさんにかかるダメージは三分の一。多めにとっても、一万ダメージ。次の五千万のときには、ケロちゃんはダウンしてるから、二万五千ダメージか。


 えーと、ここまでの合計が五万とんで五百。次に二万五千行けば……あっ! 足りる! 七万五千超えるぞ。


「今度こそ、行けるんじゃない?」


 僕は期待しながら見つめた。

 だけど——


「ああっ! 立ってる!」

「立ってるなぁ……」


 いやぁ、憧れの英雄とは言いつつ、強すぎて困惑したね。ドン引きだ。


「わかった。かーくん。『ふんばる』だよ」

「ああ。最大HP以上のダメージを受けても、HP1だけ残して、戦闘不能にならず持ちこたえるって技だね」


 ということは、今、ワレスさんはHP1!

 蘭さんの攻撃があたれば、確実にダウンだ!


 蘭さんがムチをかまえた。

 いや、ムチはやめたぞ。ワレスさんがクリティカル以外きかないって、蘭さんも気づいたのかな?


「燃えつきろ〜!」


 HP1なのに。

 燃えろ〜でも倒れるのに。

 念には念を押して、最上位魔法を使ってきたか。蘭さん、なかなかに容赦ない。


 最後は勇者の燃えつきろでキマるのかぁ——と、僕は思っていた。

 でも、キッと顔をあげたワレスさんがにらんだとたんだ。大きな火球がはねかえった。アンドーくんにあたる。


「アッツ……」

「ごめんなさい」

「ヘッチャラさでも、カウンターのやつはダメージになるだね」

「そうみたいですね」


 なんで、はねたんだろう?

 ワレスさんも反射カウンター? でも、それなら、これまでの攻撃も全部、はねかえされてたよね?


「かーくん。さっきのミラーアイズってやつ。自分とパーティーにかけられた魔法をはねかえすぞ」

「うう……」


 バランはもう一度『みんな、ヘッチャラさ〜』を使うのか? それとも、攻撃か?

 ワレスさんのHPは1だ。でも、彼に順番をまわしたら、絶対に全回復されてしまうぞ?


 しばらく、バランは蘭さんと相談していた。


「みんな、ヘッチャラさ〜」


 手堅てがたく来たか。蘭さんらしい。

 次のターンを持ちこたえて、僕の傭兵呼びがもっと高額になることを期待したんだな。


 よし。次こそは。

 でも、ワレスさんのターン、今度は乗りきれるかな……。

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