第184話 特別試合4



 さあ、僕らの番だ。

 素早さで言えば、挑戦者三組のなかで、僕らのパーティーが一番早い。


 けど、最初に動いたのは、ゴライ。身を守ってる。仲間が攻撃して石化されたことで用心してるんだろう。反射カウンターさえあれば、自分が行動しなくても、相手が自滅してくれるからね。


 けど、そんなこと、ワレスさんが計算してないと思えないんだよな。ワレスさんって、かなりの策略家だよ?


「猛。行こうか?」

「待て。蘭たちがどう動くか見てみよう。あっちの効果をうまく利用できるかもしれない」


 ここにも策略家いた。


 蘭さんたちは察したようだ。蘭さんが行動しようとする。

 なんだけど……なんか、ようすが変だぞ? ケロちゃんとクマりんがフラフラと歩いていく。


「あれ? 何してるんだろ?」


 ケロちゃん、クマりんはパパもひきつれて、ワレスさんのほうへ歩いていく。なんか、あやつられてるっぽい? クマりんなんかファミリー呼んで、合体し始めるんだけど。超巨大グマ出現だ。


「あっ? アジっ? どうしたの?」

「し……しびれた。カッコよすぎ……」


 こ、これはもしや……マヒにかかってるのでは?

 ということは、クマりんたちは魅了?


「あっ、むこうも、アンドーくんが動けないみたい。金縛りだ」

「スタンだな」

「ワレスさん、なんかしたかな?」

「かーくん。見ろ。アイツの生来特技に超絶美形ってのがある」

「超絶美形だからね」

「戦闘中、一定の確率で、敵をスタン、魅了、麻痺のいずれかにする。これのランク4が確率100%だ」

「100%?」

「そう。装備品で防御してないメンバーは、確実に魅了、マヒ、スタンのいずれかになる」

「ん? ということは……」


 僕が見ると、ぽよちゃんは金縛りにあってた。スタンだ。僕とたまりんはアクセサリーで全状態異常から守られてるし、猛は自分の特技で異常にならない。


「トーマスパーティーは、バランと蘭さんだけか。バランは守りは固いけど、攻撃技はほとんど持ってないよ。蘭さんの攻撃力をいかして、通常攻撃するしかないだろうね」

「じゃあ、さきにこっちが試すか。たまりんに三連続でハープ弾いてもらって、そのあと、おれ、かーくんで行動をする」

「わかった!」

「ゆらり!」


 ぽよちゃんが動けないのが残念だけど、しょうがない。


 ポロン、ポロロン、ポロポロロン〜。

 会場に場違いに美しいハープの音色が響き渡る。

 僕らは力が二倍になり、詩人支援で動けるようになる。

 さらにたまりんがもう一度、ハープを弾くと、詩人のバラードですべての装備品魔法が発動。詩人支援がもう一回かかる。


 たまりんは増えた行動数で、あと二回ハープを弾く。月光のセレナーデと小悪魔のワルツが発動。

 これだと、次のターンでも竹林のエチュードが出せるから、詩人総攻撃がまた二回できる。


「火の結界! ギガファイアーブレス! ギガファイアーブレス!」

「小切手を切る! 小切手を切る!」


 いくらなんでも、やれたんじゃないの?

 猛の二倍になったギガファイアーブレス二回で、八千ダメージ。

 僕の小切手を切るが、それぞれ五千万ずつ。どれくらいあたったかだよね。


 傭兵の大軍が去っていく。

 会場から人ごみが消えると……ウソだよね? ワレスさん、立ってるんだけど。けっこう効いてるみたいだなぁ。けど、どんだけ回避力高いんだ?


「わかった。かーくん。アイツ、クリティカルしか効かないんだ」

「えっ?」

「ミラーアイズって生来特技のランク5。戦闘中、敵の行動を予知することによって、クリティカルをのぞく通常攻撃を完全に回避するって書いてある」

「あっ、ほんとだ」


 つまり、たまりんと同じ状態だ。魔法かブレスかクリティカル攻撃しか通用しない!


 ついでに言えば、さっきの超絶美形のランク5。戦闘中、すべての数値が十倍になるって。だからか。だから、あのとんでもないステータスなんだ!


「兄ちゃーん。化け物だよぉー」

「化け物だな……」


 もうダメ。勝てない……。

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