第183話 特別試合3



 ダカダカと軍靴をふみならし、突撃をかける兵士たち。 

 傭兵呼びの利点は、防御力無視攻撃なところだ。

 一人一人のほんとの攻撃力はせいぜい、300とか400とかの百単位だと思う。まれに7、800くらいの人はいるかもしれないけど。

 本来なら、体力二万超えのワレスさんに、髪ひとすじ傷はつけられない。


 だけど、傭兵呼びで召喚したときは、しっかりダメージ入るんだよな。一人三百ダメだとしても攻撃回数が多い。一千万円ぶんの行動はしてくれる。


 ただし、回避されなければ、だ。防御無視だとしても、あたらなければ意味がない。

 どうだ? どのくらい効いたかな?


 黒山の人だかりが会場から去っていくと、まんなかに、やはりワレスさんは立っていた。らんらんと青い瞳が輝いてる。無傷ではない。少しはあたったようだ。


「あいかわらず、いい技だな」


 ああーっ。笑った。どんだけ余裕なんだ?

 HPを見ると、六万近くまで減ってる!


「効いてる! てか、一千万ダメージのはずなのに、効いたのは六千ていどなんだ。九百九十九万五千攻撃はかわされてる……」

「かーくん。次は一億円なげるんだ!」

「う、うん」


 これでも、回避を見込んで、かなりゆとりある金額にしたんだけどな。まだぜんぜん足りてなかった。


「よし。じゃあ、ぽよちゃん、ブレス攻撃、行くぞ?」

「キュイー!」


 猛とぽよちゃんのブレスが会場に火花を散らす。

 観客、派手な技を連発されて大喜びだ。


 アジは『みんな、固くなれ』で、たまりんはハープを三回ひく。


 僕らの番は終わりだ。

 蘭さんの先制攻撃は戦闘の最初の回だけだから、次はワレスさんの行動だよね? 今度こそ、動くかな?


 ワレスさん、かるく片手をあげる。

 来る。来るぞ。

 魔法か? それとも直接攻撃か? まだ剣もぬいてないけど。


「雷神の怒り」


 魔法だったー!


 次の瞬間、会場のなか全体に、一つ一つが直径数メートルもある雷の柱が数えきれないほどわきあがった。


 もうほんとに雷神の怒りだよね。ワレスさん、知力も二万五千だからさ。自然界で見る雷が可愛く見えるよ?


 ダカンダカンと爆発のような音が立て続けにして、バンバン人が倒れていく。


 ゴライパーティーはゴライ以外全滅。ゴライだけは反射カウンターで残った。


 だけど、ワレスさん自身は自分の魔法がはねかえってきても、大したダメージではないようだ。


 それもそうか。魔法に関しては、敵にあたえる攻撃力も、自分に受ける防御力も、どちらも知力がちょくせつ関係してる。要するに自分の攻撃は自分の防御力と同等だから、結果、無傷なわけだ。


 蘭さんたちも全滅……いや、誰も倒れてない! あっ、そうか。バランが『みんな、ヘッチャラさ〜』をかけてたから。あれって、敵の攻撃をすべて無効にしてくれるもんね。


 僕らは……僕らは何人残ったかな? 月光のセレナーデは1500くらいしかカバーしてくれない。ワレスさんのさっきのアレは、千単位じゃなかった。万のダメージだ。神獣の気は魔法で攻められると、バリアやぶられるし。


 でも、変だな。僕らのパーティーは誰も倒れてない。ほんとなら全員、やられてても不思議はないんだけど。猛だけはギリで残ったかな?


「生きてるね」

「生きてるな。なんでだろうな」

「もしかして、蘭さんたちのパーティーの『ヘッチャラさ』がこっちにもかかってるとか?」

「それはないだろう。今は別のパーティーなんだから」

「うーん」


 でも、これで次に物理攻撃されたら、どっちみち、バリアは効かない。


 どうしよう。来るかな?

 素早さ二万八千だもんな。まだまだ動ける。こんなことなら、パタパタして僕の素早さあげとくんだった。少なくともワレスさんの行動回数を減らすことができたのに。


 緊張して、ワレスさんの行動を見守る。

 すると、ワレスさんは告げた。


「心地よいな。強い相手と存分に競いあう。もっと戦いたい」


 行動をゆずってくれた。

 つまり、ザコをさきに始末したってことですか。だいぶ、手かげんされてるなぁ。


 でも、いい。

 僕らもここで終わるより、もっともっと戦ってみたい。だいぶ熱くなってきた。

 僕らを倒しておかなかったこと、後悔させちゃうぞ?

 次のターンは、詩人の総攻撃だ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る