第182話 特別試合2



「石化だ」と、猛がつぶやく。


 どうでもいいけど、たけるって打ってるのに、竹内涼真が第一候補に来るのやめてくれないかな? 僕のスマちゃん。


「でも、ワレスさん、なんにもしてないよね?」

「ケロちゃんのターン初めに出る石化舌。あれって自動発動だろ? アイツも自動で発動する石化の特技を持ってるってことだ」

「自動石化……」


 こ、怖いよ?

 もうね。憧れ通りこして恐怖だよ?

 数値だけでも神レベルなのに、自動石化まで発動しちゃうの?


 とにかく、ゴライパーティーは残り大僧侶だけだ。回復役、残っててよかったね。


「みんな、もとどおり〜!」


 三人の石化が解けた。


「みんな、もとどおりって言ったね」

「大僧侶がおぼえる最後のマジックだ。パーティー全員のすべての状態異常をなおす。ただし、MPが一回につき30もかかるんだよな」

「わっ。最高攻撃魔法なみだ」


 大僧侶のMPがどのくらいもつかだなぁ。毎回、羊飼いの石化を解きながら、毛刈りを連発してもらえば、ワレスさんの防御力が減っていく。


 たぶん、蘭さんの十万攻撃力があれば、防御力一万を切ったあたりでワンパンだ。


 通常攻撃は攻撃力、相手の防御力の相互作用。そこにレベルの差異も関係してる。レベル高い相手に対しては、どんなに攻撃力強くても、ダメージが低くなる。たぶんだけど、レベル差10に対して、マイナス10%くらい。


 蘭さんのレベルは28のままだから、ワレスさんのレベル62に対して、通常攻撃の効果は35%減になってしまう。

 つまり、羊飼いにがんばって、四回は毛刈りしてもらわないと。最低でも三回。


「じゃ、次は僕らだね」

「防御力無視で攻撃できるのは、ブレスだ。兄ちゃんはひたすら、ギガブレスファイアーを吹き続ける」

「そうだね。あっ、でも、一回しか行動できないよね?」

「ああ。今はな」

「今はって、ずっとじゃん」

「たまりんのハープの効果に、詩人職についたことのあるメンバーが行動回数消費せず行動できるってのがあったよな?」

「あった! 竹林のエチュードだ」

「おれたち、詩人をマスターしてる」

「そうだった! ぽよちゃんとアジ以外はしてる」

「竹林のエチュードは五回ハープを弾くと出るんだよな?」

「そうだ! 1ターンで、たまりんは三回ひけるよ」

「ということは、次のターンには竹林のエチュードと詩神のバラードの効果で、おれとかーくんも三回行動できる」

「そっか! そのとき、雄叫びすればいいのか」

「いや、火の結界を使う。そうすれば、おれだけじゃなく、ぽよちゃんのファイアーブレスの効果もあがる」


 次のターンまで持ちこたえれば、大ダメージをあたえられるんだ。


「よし。じゃあ、僕は今の回、傭兵呼びをやってみる。ワレスさん回避率高いたから、三百万くらい使ってみようかな」

「ゆとり持って一千万でもよくないか?」

「わかった。一千万」


 前の手あわせのとき、傭兵呼びの半分くらいをかわされてるからなぁ。あのときより、さらに回避率あがったワレスさんに、どのくらい僕の技が効くのか?


「アジの算術って、僕にかけたら、僕が使う技にまで効果ある?」


 アジは首をふった。

「算術は通常攻撃にしか効果ないよ。通常攻撃と魔法攻撃」

「そうか」


 しょうがない。素早さはあげても意味がないので、パタパタはしない。

 僕は叫んだ。


「小切手を切る〜! 一千万!」


 進軍ラッパが会場に鳴り響く。

 そして、虚空から大勢の兵士がかけつけてきた。

 観客の熱気はいっきに高まり、ワアワアとさわぐ声にまじって、先頭に立つユージイが号令をかけた。


「すいません。ワレス隊長。決まりなので、やらせてもらいます。突撃ー!」


 あはは。義理堅い。

 僕の傭兵たちは三千人はいたかな? それらがいっせいにワレスさんに打ってかかる。

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