第181話 特別試合1



 剣聖——

 そうか。それって、最上位職なのか。たまりんの賢神と同レベルの職業。

 ワレスさん、鬼の首みたいに職業とりまくってるもんな。ついに最上位職になったんだ。


「蘭さんの十万攻撃を受けられたのも、剣聖だからかな?」

「いや、と言うより、かーくん。数値をよく見てみろ。HP減ってないぞ。速すぎて見えなかったけど、たぶん、蘭の攻撃をかわしたんだ」

「ええーッ?」


 ぜんぜん、そんなふうに見えなかったんだけどな。

 どれどれ。数値は?


 レベル62(剣聖)

 HP65930、MP45020、力54640、体力24730、知力25660、素早さ28080、器用さ25300、幸運9160。


 ……ん?

 数値、おかしくない?

 たしか、前に仲間になったとき、高めのHPでも3、4000だったような? あれからレベルもあがってるし、またいくつかの職業のマスターボーナスを取得したんだろうけど。それにしてもケタが一個多くない?


「HPが六万超えてる……」

「だな。おれ、自分より数値高い人間見るの初めてだ」

「これ、人間じゃなくない? ドラゴンのHPが三万なのに」

「まあ、そのへんのボスの百倍強い」

「だよね」


 HPが万の単位のボスはたまにいるけど、そのほかの数値も全部なんて、そんなボスこれまでにはいなかった。たいていは百の位だ。


「猛。これ、勝てると思う?」

「つまみ食いすれば」

「でも、それ、しちゃいけないんだよね?」

「ダメだよな」


 いや、これはアレだ。今こそ、ゴライの反射カウンターが効く。相手が強ければ強いほど、その攻撃力が自分に返って自滅する。


 蘭さんが先制攻撃したから、行動順はトーマスパーティーが持ってるみたいだ。僕らは聞き耳以外の行動ができない。聞き耳は行動数使わないからね。


 待ってるけど、蘭さんはもう動かない。蘭さんでさえ、一回しか行動できないんだ。そうだよね。ワレスさんの素早さ、二万八千だもんね。


 トーマスパーティーの行動。

 バランの薔薇が自動発動。同じく自動発動のケロちゃんの石化舌は、もちろん効果なし。クマりんがパパを呼んだ。


 自動発動は行動数は消費しないんで、バランが『みんな、ヘッチャラさ〜』を使った。

 あっ、今までは単体魔法の『ヘッチャラさ〜』だったよね。みんなってことは、全体にかかる魔法をおぼえたんだ。


 ケロちゃんは水の結界で水属性魔法の効果を高める。

 最後にアンドーくんが、『みんな、かたくなれ〜』を唱える。アンドーくんも大魔法使いをマスターしたみたいだね。僕らと離れてるあいだに、蘭さんたちも特訓してたんだ。


 けど、今の回、おもに防御だ。攻撃ができたのは蘭さんだけ。それもかわされてる。


「えーと、次の行動は、当然……」

「相手側だろうな。素早さ二万八千だ」

「う、うん……」


 うちで一番素早い猛でさえ、五千弱。流星の腕輪効果で一万。僕が風神のブーツの能力で最大限までアップしても一万あまり。ワレスさんの半分にも満たない。


 つまり、行動はこっち側から見れば、基本的に全員一回ずつだ。たまりんだけは賢神の効果で三回行動できる。


 だけど、この回、ワレスさんは身を守るを使ったみたいだ。攻撃してこない。

 まあ、攻撃されたら、たぶん、こっちはほとんど全滅。試合を見てる観客的には楽しくないかもね。


「どうぞ。このターンはご自由に」とまで言われて、ゴライパーティーのメンバーが憤った。


 ゴライは反射カウンターを活かすためだろう。これも身を守ったらしい。ほかの前衛三人が次々に技をくりだす。


「毛刈り!」

「剣の舞!」

「剣の舞!」


 重騎士と武闘王は同じ技か。

 毛刈り、出た!

 どうやら、通常攻撃に相手の防御力を最大値の10%減少させる付属効果がつくようだ。

 ワレスさんの装備品こみで三万近い防御力が三千減るのか。三千、大きい。あの羊飼いを守らないといけないな。


 でも、そう思った瞬間だ。

 ゴライパーティーの羊飼い、重騎士、武闘王は一瞬で石になった。


 な、何が起こったんだーッ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る