第152話 お姫様を助けに行こう!



 いろいろ波乱はあったけど、準々決勝は終わった。

 勝ち残ったのは、蘭さんたちのトーマスパーティー、ゴライパーティー、ビーツパーティー、そして僕らのパーティーだ。


 明日はトーマス対ゴライ、ビーツ対僕らで、午前と午後に一試合ずつ。僕らは午後からの試合だ。


「最悪、明日の昼までにヤマトに戻っておけばいいんだよね」

「そうだな。明日からはパーティー戦みたいだぞ」

「へえ。そうなんだ」


 パーティー戦だと一対一とは、だいぶ違うな。


 僕らがあたるビーツパーティーは、リーダーのビーツが騎士で、副将のウォーターメロンが戦士、あと魔法使いと僧侶が一人ずつに弓使い。すごくバランスがいい。しかも一人ずつがけっこう強い。弓使いがいるってことは一人が後衛になれる。


 対する僕らは僕、猛、ミニコの数値はバカみたいに高いけど、アジという弱点をかかえてる。


 アジを前衛に出すとすぐに倒れるだろう。後衛に隠しとくにしても、弓使いの職業につけないから、うしろにいるあいだ、アジはなんにもできない。


 申しわけないけど、お荷物をかかえて四対五で対戦するようなもの……。

 せめて弓使いになってくれればなぁ。


「とにかく、お姫様を助けに行くよ」

「そうだな」


 タツロウに託されたカギと地図。地図によれば、問題の別荘っていうのはヤマトの北に位置している。


 ついでだから、特訓もかねて、僕らは転職した。


 僕は賢者。ほんとは持たざる者っていうのになりたいんだけど、職業ツリーがどこにつながってるのかわからない。こういうのはワレスさんが詳しいんだよな。機会があれば聞いてみよう。


 猛は武人だ。たまりんは大学者。学者と賢者でなれる。アジはまだ学者をマスターしてないんで、今日は転職してない。


 北へむかう道すじに出てくるのは、ニンジャ、サムライ、落武者。オリヅルっていう折り紙のモンスターと、まつぼっくりだ。たまに小さいカメが出てくる。カメりんだ。


「カメ、ちっこいのに経験値が二千だね」

「白虎の森のネコりんと同系列だなぁ。たぶん、玄武の守護を受けるためのダンジョンも、どこかにあるんだ。そこに出てくるモンスターなんだよ」

「ああっ、玄武の守護もすごかったよねぇ。四神の守護って、どれか一つしかもらえないのかな?」

「さあなぁ。そのへんはこの国の人に聞いたほうがいいと思うぞ」

「まあそうだ」


 猛もいるし、ミニコもいるし、目的地にむかうあいだは平穏そのもの。バトルもなんの問題もなし。たまに、つまみ食いして。


 やがて、別荘が見えた。今度は杉林のなかだ。なんとなくだけどさ。こういう山や森のなかにある和風建築って、お化け屋敷っぽくない?

 豪邸だ。でも、古い。


「平家建てだな」

「よこに長いね」

「いや、よく見ろよ。つづら折りになってる」


 一見、よこ長の屋敷だけど、じつは細長い平家が何棟も奥に重なって、廊下でつながっているのがわかった。


 たぶん、一番奥まで行かないといけないんだろうな。


「ボスはいるのかなぁ?」

「それは兄ちゃんにはわかんないなぁ」

「蘭さんの危険察知、やっぱり便利な技だよねぇ」


 今のところはしょうがないので、前情報なしでとびこむしかない。


「このカギ、どこのだと思う? 裏口?」

「裏口にしてはデカイよな」

「あっ、表門だ。まさか、ここのじゃないよねぇ?」


 ナマコ塀にかこまれたお屋敷の門を見つけた。門は閉ざされている。大きな両扉のよこに、ふつうの家の玄関戸くらいの通用口がある。


 僕はなにげなく、通用口の鍵穴にカギをさしこんだ。

 なんと、まわる!

 あいたじゃないか。

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