第151話 ゲンチョウの正体



 ズルズルと大蛇がはいより、僕を頭からモグモグ……うーん。僕の力がぬけていく……。


 と思った瞬間だ。

 キーンと耳鳴りのような音が響いて、僕のまわりが金色に光った。何かのバリアだ。

 ん? なんだ、これ?

 身におぼえのないバリア。


 瞬時に黒い大蛇は消えた。

 僕の力も戻ってくる。


 僕は気づいた。

 あの力を吸いとられていく感じ、だ。技名がつまみ食いなのかどうかはわからないけど、それに該当する能力。特技

 。


「反則だ! 試合後も相手の数値に傷をつける技は禁止だぞ!」


 ゲンチョウは金縛りにかかって動けないみたいだ。


 僕の服の下が光ってる。

 白虎の守護石だ。

 そうか。これ、神獣の気だ。以前、僕らが子白虎からつまみ食いしようとしたせいで動けなくなった。あれと同じように、ゲンチョウも神獣の気の効果でスタンがかかっている。


 僕が身がまえると、まわりの光が集まって白い虎の姿になった。


「白虎だ!」

「あいつ、白虎の守護を受けてる!」

「どおりで強いんだ」

「すげぇ。一日で玄武の守護者と白虎の守護者を見れるなんて」


 スタンド、さわいでるなぁ。

 えへへ。気持ちいい。

 白虎に勝てたの、ほぼミニコのおかげだけど。


 よし。行くぞっ。

 今日の僕、カッコイイ!


 さやつき精霊王の剣(レプリカ)をかまえて走りだすと、白虎の幻影がゲンチョウに迫る。速い。目で追うのがやっとだ。白い稲妻みたいな光が、ドンとゲンチョウの体のどまんなかにぶちあたる。


 すると、ゲンチョウから感じた、あの黒いモヤモヤした感じがいっせいに、はじけとんだ。悪い術が解けた。


「女の人だけど、ルール違反はダメだよ!」


 白虎が体あたりしたあとの胴体を剣で打つ。ミニコが追ってきて、チョンと指さきでついた。


 ゲンチョウは失神した。顔を隠していたあの白い布が外れて、目をまわしているのが見えた。


「先鋒戦、かーくんパーティーの勝利! しかし、ここで審判たちが何やら話しあっています。何が起こったのでしょうか」


 審判、いたんだ。知らなかった。


 しばらく待っていると、またもやアナウンス。


「ここで主審より重大な発表です。ゲンチョウパーティーは規約違反により失格。失格です! 相手に後遺症を残す攻撃の行使により、ゲンチョウ、失格となりました!」


 よかった。審判たちも、ちゃんと見てたんだ。そうだよね。ズルはいけないよね。


「わ〜い、兄ちゃ〜ん。勝ったよ!」

「よかったな。かーくん」

「白虎の守護石つけといてよかったぁ。装備してるだけで効果発揮するタイプだった」

「だなぁ」


 ある意味、ラクな試合で助かった。僕らはこれで準決勝に勝ちあがりだ。

 とか思ってたら、ドタバタと足音がして、バックゲートの前まで、ダルトさんとキルミンさんがやってきた。ちょうどタンカに乗せられて運ばれるゲンチョウを見てわめいてる。


「スリーピングだ! そいつは暗殺者スリーピングだぞ!」


 えっ? あれが因縁の暗殺者スリーピング?

 暗殺者スリーピングはいろんな国で暗殺してたらしい。ヒノクニでもお尋ね者になっていた。すぐに兵隊さんたちが来てつれていった。


 だけど、ゲンチョウことスリーピングは、その日のうちに牢のなかから消えたって話だ。

 闇討ちに暗殺者。

 武闘大会はどうなってしまうのか。

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