第149話 ビーツかゴールディか



 次鋒戦は昨日のクールなお姉さん、ブルーベリーさんだ。

 けど、対策練られちゃったかな。今日の相手は素早さ数値の高い暗殺者だった。1ターンに三、四回の攻撃を受け、回復がまにあわなくなって倒れた。


 中堅に人間アレルギーのラフランスさん。

 水の結界からの大波小波、冷却水で見事、勝利。冷却水は前に鍛冶屋のダディロンさんが使ってた特技だ。


「冷却水って個人が生まれつきに覚える魔法ですよね?」


 デギルさんはうなずく。

「ラフランスはそのために魔法屋でバイトしてるから。珍しくて強い魔法書を見つけたら、客に見せずに自分で買いあさってる」

「ズルイ!」


 だから、雷神の怒りも知ってたのか。職権濫用だ。ブツブツ。


 とにかく、これでビーツパーティーは二勝。あと一勝だ。

 勝敗をわける副将戦——と思ったら、ここでゴールディパーティー、大将が出てきた。


「ゴールディはあとがないからかな? でも、副将戦で勝てても、次で負けたら、どっちみち負けなのに」


 すると、デギルさんが考えこむ。

「もしかしたら、あのウワサはほんとだったかな?」

「ウワサですか?」

「じつは昨日の晩、ゴールディのパーティーが何者かに闇討ちされたって話があるんだ。そのせいでメンバーの一人が大怪我したって」

「えっ?」


 闇討ちですとっ?

 な、何それ。


「そ、そんなことが? でも、それって犯人は?」

「何者かって言ったろ。もちろん、まだ捕まってない」


 ええーッ! そんなの怖い!


 猛がにぎりこぶしを口元にあてる。こっちで猛の推理中ポーズを見るとは。


「大会参加者と知ってて襲われたんだな?」

「ゴールディは推薦枠だ。大会運営側の用意した高級ホテルに泊まってる。部屋の戸口には、ゴールディ様ご一行って名札がかけてあったって話だな」

「じゃあ、そこに大会参加者がいることは、周知の事実だった。ということは、ゴールディパーティーを大会に参加させたくなかったヤツが襲ったってことだな」

「つまり……」

「大会参加者のなかに犯人がいる」


 そう考えるのが妥当だよね。

 今日の対戦相手か、またはちょくせつ対戦はしなくても、これからあたるかもしれない相手をしらみつぶしにつぶしてる。それか、これまでにゴールディたちに負けたヤツらの腹いせ。


「ゴドバの仕業かな?」

「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。みんな、大会に優勝して、天下一の称号は欲しい。なかには手段を選ばないやつもいるさ」


 そうこうしてるうちに、副将戦が始まっていた。

 僕らが気づいたときには、ゴールディが勝ってた。さすがに大将なだけはある。


 でも、そのあとすぐ、ゴールディパーティーは大将戦を棄権した。残りのメンバーが勝てる見込みがないと読んだからだろう。最後の一人はケガした人の代理の補欠か、または急きょ雇った傭兵に違いない。


「なんだよ。ビーツたち、不戦勝か」と、デギルさんがぼやく。


「代理人で負けて完敗するより、せめて二勝二敗、棄権って形にしたかったんでしょうね」

「代理人じゃなくても、勝ってたのは、うちだけどな」


 その自信はどこから?


 それにしても、闇討ち。

 どんどん物騒になってく。

 ほんとに参加者のなかに、ゴドバが……?

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