第148話 準々決勝、第三試合



 僕らはごちそうを堪能したあと、別荘への地図とカギをもらって王宮を出た。


「試合がどのくらい伸びるかだね。すぐに終われば、三時前には体があくよ」

「そうだな。特訓がわりに試合後から行ってみよう」


 第三試合は午後一時から。

 お昼ご飯のすぐあとだ。

 僕らが観客席に戻ったときには、ビーツ隊が会場に来ていた。相手のチームは白虎組の推薦枠。


 朱雀の推薦枠は蘭さんたち。青龍はゴライ。玄武は巨人のヴィクトリアパーティー。

 どの隊もものすごい強さだった。白虎組の推薦枠も、さぞ強いんだろうな。


「これより、準々決勝第三試合です。両チーム先鋒、所定の位置についてください」


 あッ! 僕は気づいてしまったぞ。


「シャケがいない!」

「ほんとだな。三村、いなくなってるな」

「ビーツパーティー、先鋒が昨日の人と違う」


「あれがアップルだよ。やっと到着したんだ」と言ったのは、デギル隊長。


 いつのまに来てたんだ。僕ら、けっこう好かれてるのかな? まあ、知りあいと話しながら観戦するほうが楽しいもんね。


 アップルさんは赤毛の弓使いだ。ここで弓使いが出てくるとは思ってなかったなぁ。たぶん、ふだんは後衛専門なんだろうな。前に出て戦って大丈夫なんだろうか?


 白虎組の推薦枠はゴールディパーティー。南国っぽい褐色の肌の人たちだ。先鋒は……なんだろう? 妙にどんよりしたドクロを首からたくさんさげた人。


「なんか変なふんいきの人だねぇ。猛」

「職業、呪術師、だってよ。兄ちゃん、あんなの初めて見たな」

「ん? 呪術師?」


 どっかで聞いたことがある。なんか知ってるぞ。


「呪術師……」


 僕が考えてるうちに、試合は始まった。


 さきに動いたのは弓使いだ。弓をかまえて、パパパっと何かしたんだけど、放った矢が見えない。呪術師にもあたってないし、エアだった? ふりだけ? なんで?


 よくわからないままに試合は進む。

 次は呪術師の番だ。

 呪術師、呪術師……やっぱり、つい最近、どっかで聞いたなぁ。


 呪術師って言うからには魔法使うのかなと予想した。でも、呪術師がとりだしたのは長槍だ。それもイヤぁな感じのするやつ。持ったら呪われそう。


「あッ! 思いだしたー! 呪術師って、前にシルバースターで買ったツボだ」


 ぽよちゃんの小鳥師といっしょに買ったツボ。まだ使ってないけど、そうか。じっさいに呪術師で戦ってる人もいるんだな。


 でも、あれってたしか……。


 思ったとおりだ。

 会場のまんなかで、ヤリを手にかけだそうとした呪術師は、とつぜん立ちどまった。自分の足にもつれて倒れる。


「あっ、かーくん。呪術師、マヒしたぞ」

「…………」


 そうだ。たしか、呪いつきの装備品を装備した数だけ、力の数値が十倍ずつあがっていく職業だ。


 あの呪術師のどんよりした感じは、呪いの装備のせいだ。あのふんいきだと、少なくとも二つ、多ければ三、四つは呪いの装備をしてるんじゃ?


「猛。あの人の力の数値、どうなってる?」

「おおっ、スゴイな。力二万だ。ほかは百や二百なのに、力だけやけに高いな」

「それ、たぶん本来の数値の百倍だよ」


 呪術師……動けさえすれば最強なのかもしれないけど、動けないんじゃ意味ないなぁ。


 しびれてるうちに、呪術師のターンは終わった。


 次はアップルさんか。名前は女の子っぽいけど、残念ながら男。

 またあのエア弓矢をパパパパっと何回かやった。何も起こらない。何がしたいのか、ほんとわかんないなぁ。


 次の瞬間だ。しびれのとけた呪術師が走った。今度は呪いの影響を受けなかったようだ。


 ああ、これはもう決まったな。二万攻撃力だもんな。


 ところが僕がそう考えたとき。呪術師の体は大きくふっとばされた。金色の筋のようなものが雨のように呪術師に降りそそぐ。


「か……カウンター?」

「いや。あれがアップルの得意技、防御弓だ」と、デギルさん。

「防御ですか」

「目に見えない矢を空間に多量に放ち、相手が攻撃してきた瞬間にいっせいに襲う。カウンターと違うのは自分が倒れたあとも残るってことだな。本来は仲間を守るための技なんだ」


 ほへぇ。ほんと、いろんな技があるもんだ。

 試合って楽しいな。

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