第95話 義留堂



 異国のギルド。

 ヒノクニにもギルドがあってよかった。


 見た感じ、設備はボイクドのギルドとあんまり変わらないみたいだ。

 武器屋、防具屋、雑貨屋などの店屋。教会、マーダー神殿。酒場。情報屋。銀行! 僕の大好きな銀行。


 僕はダッシュで銀行にむかった。けど、受付のお姉さんに呼びとめられてしまった。


「そちらのお坊ちゃん。わが国のギルドには初めてどすな? 一見はんはこちらで、まず名前を登録してくれまへんか?」


 誰が坊ちゃん? えっ? もしかして、僕?


 僕はお姉さんを見ながら、自分の鼻を指さす。お姉さんは大きくうなずいた。

 もしかしなくても、僕だったか。子どもじゃないんだけど……。


「ボイクドのギルドで登録したんですけど?」

「義留堂はわが国独自に運営しとるんどす。もちろん、ボイクド国は友好国やさかい、銀行、預かり所、称号は連携しとります。ただし、ボイクド国からお金を引き落とすには手数料がかかりますけどな。そのほかの設備の利用には、当国の義留堂への登録が必要になりますえ」

「そうなんだ。もしかして、ギルドランクも別になるの?」

「さようどす」


 受付は和服のお姉さん。

 舞子口調。楽しい。いいギルドだ。気分だけでもお座敷遊び。


「じゃあ、登録してください」

「へえ。こっちゃへお名前どうぞ」


 僕は必要事項を登録用紙に書きこんで手続きをすます。

 せっかくSランクまで行ったのに、また最初からかぁ。と思ったけど、称号の確認をされたら、いっきにAランクになった。


「お客はん、たいそうな冒険者どすなぁ。竜殺し、朱雀殺し、寄生木ヤドリギ殺し、豚殺し、牛殺し。勇ましい称号、ぎょうさん持ってはりますなぁ」

「いやぁ、それほどでも」


 朱雀はフェニックスのことかな? 言っとくけど、殺してないからね? 戦闘に勝っただけ。


 それに、竜殺しや朱雀殺しはカッコイイけどね。牛殺しだけでも肉屋なのに、豚殺しまでくわわって、ますます屠殺業感増し増しだからね。


「あ、あとね。ギガゴーレムも倒したよ」

「ほんまどすなぁ。巨大機械兵殺しの称号もさしあげますえ」

「巨大機械兵! カッコイイ」

「お客はんならギルドに寄付さえしてくれはりましたら、すぐにトリプルAランクになりますえ」

「するする。寄付する。いくら?」


 なんか乗せられてる気もするけど、ギルドランクは高いほうが何かと旅がしやすい。ヒノクニに汽車があるかどうかは知らないけど、蒸気船は確実にボイクドとのあいだを結んでる。チケット購入にもランク高いほうが優遇されるからね。


 僕は受付で、ぽんと五百億円を寄付だ。ゲンカンからここへ来る道中だけでも、六千億円ひろったからなぁ。貯蓄が増えれば増えるほど、一回でひろうお金が巨額になっていく。


 それに、やっぱり、招き猫のガマグチが戻ってきたせいか、ミャーコの機嫌がいい。僕が言わなくても、せっせとひろってくれる。


「五百億円の大口寄付、ほんま、おおきに。かーくんはんにはトリプルAのランクをさしあげますえ。現状、ヒノクニのギルドでは最高ランク所持者どすえ」

「へえ。そうなんだ。ランクとして最高はS?」

「さようどす」

「どうやったらなれるの?」

「青龍の守護者の異名を持つ

 、タツロウはんを負かさはったときどすな」


 ん? タツロウ?

 僕はピンと来たね。

 この国には僕が書くあのシリーズの主役もいるらしいぞ。

 だよね。同じシリーズの穂村先生や清美さんが出てるんだから。


 そう考えて、僕はにわかに不安になった。思いだしたのだ。


 ゲンカンの街で見かけた女神級の美女。あれって、もしかして、青蘭せいらだったんじゃないか?

 青蘭の最大の特徴って、さらわれ癖なんだけど……大丈夫かな?

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