第三部 ヒノクニ武闘大会!

第七章 ついたよ、ヤマト〜

第94話 ヤマト到着〜

https://kakuyomu.jp/users/kaoru-todo/news/16816700428101116158(中表紙)



 船ごと子どもたちを引き渡したんで、僕らは猫車と仲間だけの少人数。

 でも、いいんだもんね。こっちには猛がいる。道々は猛に任せとけば、御者台から安全に小銭ひろえたし、らくちん。らくちん。


「ヤマトまで半日って言ってたよ。そろそろかなぁ?」

「まだ見えないよ。かーくんも外、出ないか? 兄ちゃん、そろそろ休みたいな」

「まあ、いいけど」


 猛に任せとくと、らくなのはいいんだけど、宝箱をドロップしないんだよね。経験値がもらえるだけ。


 松林が続く風景。遠景に山がつらなってる。たまに畑や田んぼ。ぽつりと茅葺かやぶき屋根の家。トンビが輪を描いてるねぇ。ビルも電柱もアスファルトの道路もない。江戸時代の日本の風景はこんな感じかなぁ。


 猛と交代して、猫車の外は僕、ぽよちゃん、たまりん。僕に付属のミニコ。

 歩きだしてまもなく、急に猫車のなかで猛がさわぐから、何事かと思えば、


「かーくん! 小人がいる!」

「えっ?」

「ふえ子のグルーミングしてたら、小人がひっついてた!」

「えっ?」


 見ると、クピピコだ。

 僕らの旅についてきてるコビット族の戦士。


 この冒険録、コロナが流行る前に書きだしてるから、当時はコビットがコロナをさしてるなんて思いもしなかったね。小人とホビットをかけたネーミングだったのに。いや、まあ、こっちの話。僕はこのネーミングのままつらぬく!


「あれ? クピピコ。いつからいたの?」

「クピっ。コピコピ、ピコクピ」

「うーん……」


 あいかわらず難解なコビット語。が、今回は猛がいる。


「ずっと、ふえ子に乗ってたそうだ」

「そうなんだ。ごめん。気づいてなかった」

「クピピー、クッピー、ピコピコ」

「いやいや、かまわん。それよりクッキーをくださらぬか、と言ってる」


 まあ、いいか。クピピコはひと突きで相手の体をコビットサイズにしてしまう、コビット王の剣を持ってるからね。いてくれると助かるかも。


 ん? もしかして、ギガゴーレム戦のとき、クピピコにプチっと刺してもらっとけば……いや、考えまい。そんな小説的に盛りあがらない展開で勝つのは邪道だ。


 ヤマトへむかう道すじに出てくるのは、ニンジャ、サムライという人型エネミー。あとは武闘大会敗残者っていう、ならず者だ。可愛いモンスターいないなぁ。でも、サムライがたまに、いい刀を落とすんだけどね。僕には必要ない。


 道中はとくに苦戦することもなく、僕らはヤマトについた。あっけなさすぎて、つまんない。よく考えたら、このところ、切羽つまった戦いが多かったもんな。


「わあっ、ヤマトだぁ。大きな街だぁ」

「なんか美味いものないかなぁ。すき焼きとかありそうじゃないか?」

「あるかもね!」


 王都というだけあって、ヤマトはとてもにぎわっていた。街の門が東西南北に四つある。僕らは西から来たので、白虎門から入った。


 街の街路は碁盤目状になっていて、中心に王城や広場がある。家屋はやっぱり明治か大正っぽい。江戸時代ほど古くはないので、ときどき赤レンガの洋館なんかもあって、風情がある。


「それにしても旅人が多くない?」

「そうだな。武闘大会のせいじゃないか?」

「そうかも。蘭さんたち、もう来てるかなぁ?」


 ここで待ちあわせって言ってたけど、ギルドに行けばわかるかな?


 お店や宿は全部、日本語の看板が出てるから、すぐになんの施設だかわかる。ギルドは『義留堂ぎるど』だ。完全にあて字だけど、義の心をとどめる堂って、なんとなく意味は通じる。


 さっそく、なかへ入ってみた。

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