第93話 街なかで出会った美女。女神級美女!
さて、僕は港町の外をめざして、ブラブラと歩いていく。
だいぶ出入口に近づいてきたのかな? 言っても、そんなに広い街じゃないしな。
松とか紅葉とか桜とか、見なれた樹木がポコポコ生えて、そのくせ砂地。ハマユウとかヒルガオ、月見草なんかも咲いてる。季節感があいまいだなぁ。とりあえずキレイなものがなんでも配置されてるみたい。
ん? なんだろう。
街外れにカゴが置いてある。
カゴといっても、カゴバックとか、ザルとかのサイズじゃない。人間が前後をかついで、なかにえらい人を乗せていく、大昔のタクシー的なやつだ。時代劇で将軍とかご隠居さまが乗ってるやつ。
今しも、そのなかに一人の女の人が乗せられている。大柄な男にカゴのなかへ入れられてるんだけど、本人は寝てしまってるのか?
それにしても、も、ものすごい美女だー!
蘭さん? いや、ちょっと違うな。スズラン? んー、それともちょっと違うな。似てるけど、なんか違う。もっとこう、お色気全開な美少女。
それに着てる服が着物だ。金糸銀糸のぬいとりのある、
僕がボーっと見てるうちに、男たちはカゴをかついで行ってしまった。
ああ、もう二度と会えないのかな。あの美女。キレイだっなぁ。いや、ここは漢字で綺麗って書いとかないと。それくらいビューティフルだった。
男たちは街の外へ出ていった。僕もそっちの方向に用があるんで、あとを追っていく。いや、ストーカーとかじゃないよ? あんまり美人で気になったとかじゃ……。
街の外は松の木林だ。防風林かもしれない。カゴは街道をそれて林のなかへ消えていく。
ああ、さらば。美しい人……。
ほんとに女の子と縁のないこの物語。
せめてさ、リベッカさんだけでもいっしょに旅をしてくれないと、男性読者がついてこないよね。
さて、街の外に出たんで、旅人の帽子をかかげてみる。けど、やっぱりダメだね。前の拠点が表示されるけど、あいかわらず、色が薄い。
さらには、
ここでは魔法が使えない!
テロップに注意されてしまった。そうか。しょうがないな。
僕はとりあえず、街なかで屋台のウマウマなものたちを買いこんで、船まで帰った。なんなら屋台ごとつれていって、ソバやラーメンや焼き鳥を子どもたち全員にごちそうした。
港で屋台パーティーをしながら、僕は猛と相談する。
「やっぱり、まだ魔法では移動できないよ。だけど、このさき、子ども三百人つれて旅するのは危険すぎるね。僕、蘭さんたちと連絡とれないか試してみる。預かりボックスで手紙のやりとりができるかもしれない」
というわけで、さっそく僕らの現状を書いた手紙を預かりボックスに入れる。すると、ほとんど数秒とたたないうちに僕の手紙が消えた。向こうでは待ちかまえていたらしい。
預かりボックスのドアをあけっぱなしにして待ってると、白い手が手紙を入れるとこさえ見えた。今のは蘭さんかなぁ。
『かーくん。待ってました。今、ゲンカンって街にいるんですね? 近衛隊の船がすぐにそっちへ向かいます。
ところで、僕たちは今、武闘大会に参加するために、ヒノクニの王都ヤマトへ移動している最中です。なので、ヤマトで落ちあいましょう。
こっちは港にいた子どもたちも全員、親元へ返したし、問題ありません。アンドーやトーマスたちといっしょです。ヤマトで再会できる日を心待ちにしています。
ロラン』
それから三十分くらいして、スマートな帆船が漁港にやってきた。華美ではないけど、よく走りそうな船。見ためもキレイ。
船長はクルウだった。そうだった。クルウは自分の船を持ってるんだったね。
「この船を
「よろしくね。みんな、バイバーイ」
「お兄ちゃーん。ありがとう」
「バイバーイ」
「クッキー美味しかったー」
「ママに会えるぅ」
「海、楽しかったよ」
「またね〜」
甲板で手をふる子どもたちに手をふりかえす。
ようやくゴドバのエレキテル占領作戦を、僕らは完全に打ちくだいたのだった。
けど、このときすでに、別の陰謀にかかわってたんだけどね……。
第二部『エレキテル攻防戦』完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます