第90話 ミニゴーレム(遠隔操作中)戦3



 ミニコの頭には都合よくアンテナみたいなものがとびだしてる。さきっぽの丸い部分がひらいて花になる、例のやつだ。すでにプログラムFのリボンがついてる。

 僕はそこにリボンをむすんだ。リボン二重だね。

 これで何か変わるのか?


「えーと、じゃあ、ミニコ。もう一回、プログラムF、かな?」


 前にミニゴーレムを止めたときは、プログラムFだった。いちるの望みをこめて、僕はミニコを見守る。


「ミミミーミ〜!」


 両手をつきだし、からのポンッ!

 どうだ? なんか変化あるか?


 ミニゴーレムたちの目が赤から黄色……いや、赤? 黄色? やっぱり赤? 赤てーんめつ! かと思ったらオレンジ、黄色……また赤! 赤、赤、赤、黄色、黄色、赤……黄色!

 もう、どっちなんだ!


 でも確実に、さっきより強力になってる。ミニコの周波数が数十倍に強化されてるんだ。


「ブブ、ブヒッ、負けてなるか! ミニゴーレムどもよ。ミーを守るのだー! きさまらはどうせ鉄のかたまりにすぎんのだからなッ、ブヒ!」

「そんなことないよ。ミニコ、がんばれ! あんな下劣なブタなんかに仲間を支配させるな!」

「ブヒー! 増幅器、最大出力ー!」


 力は拮抗きっこうしてる。ミニゴーレムたちの目の色はめまぐるしく赤から黄色へ、黄色から赤へ。


 たぶん、このリボンがホムラ先生の作ったミニコの周波を増幅させる装置なんだろうけど、ミニコのようすがおかしい。目に見えて顔が赤くなってきた。


「ミニコがショートしかけてる!」

「かーくん。もうやめさせたほうがいいぞ」

「ミニコ、もうやめて! ミニコが壊れちゃうよ」


 でも、ミニコは聞かない。ギューッと目をとじて、がんばってる。


 このままじゃ、ミニコが危ないよっ。

 ロボットはいったんプログラムが壊れたら、たとえ修理しても、もとどおりってわけにはいかないんだ。新しいAIは前のAIとは違う。それは違う人格。別の存在になってしまうってことだ。


 そんなのはイヤだ。

 ミニコは僕らの仲間なんだ。


「ミニコ、ダメーッ!」


 ん? どうしたんだ?

 ミニコ、急に走りだした。

 一番近いミニゴーレムに指をさしだす。すると、そのミニゴーレムもミニコのほうに指を伸ばした。

 このETポーズ、どっかで見たな。


 しばらくすると、そのミニゴーレムの目が青くなった。そして、となりのミニゴーレムと指をあわせる。次のゴーレムの目も青くなる。


「ミ〜」

「ミ〜」

「ミ〜」

「ミ〜」

「ミ〜」

「ミ〜」


 おおっ、ミニゴーレムたちのETタッチが、どんどん広がってく。そのたびに青い色が増え、ポポポポポン、ポポンポンと頭に花が咲いていく。

 数分後には、船倉は花畑になった。きれいな青い花が満開だ〜



 ミニゴーレムたちは正常に戻った。戦闘を離脱した。



 よしっ。テロップも入った。


「今だよ。兄ちゃん」

「うん。行くぞ」

「あっ、待って。せっかく六十回も動けるんだから、僕、つまみ食いしてからにしたい」

「おれもしよっかな。焼き豚だ」

「チャーシュー!」

「トンカツ!」

「ポークステーキ!」

「豚生姜焼き!」

「肉祭り〜」

「豚肉限定だけどな」


 僕らはそのあと、グレート大海賊キャプテンから、たっぷり、つまみ食いさせてもらった。なにしろ、まがりなりにもボスだから、数値はそこそこ高い。


 おかげで、僕のステータスも、またまたあがったよ。

 これだー!


 HP4235『3894』、MP970『648』、力433『377』(389)、体力412『287』(370)、知力494『253』(444)、素早さ394『249』、器用さ462『247』、幸運99998(89998)


 スゴイよ。HPなんか3000増えた。


「じゃあ、兄ちゃん。倒すの任せたよ」

「ああ、いいよ。どうせ、食べつくしてHP0になるんだけどな」

「えっ? それって、どうなるの?」

「死ぬよ。もちろん。HPがなくなるんだから」


 グレート大海賊キャプテンがあわてふためいてる。


「き、きさまたち、何をするッ? やめろ。何をしてるんだー! ブヒ……力が、HPが……ブヒーッ!」

「ははは。ごめんな。肉、美味かった」


 僕らはブタさんを食いつくした。

 よく考えるとホラーな兄弟だ。魔物より魔物っぽい。恐るべきは僕ら兄弟の食欲。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る