第89話 ミニゴーレム(遠隔操作中)戦2



 いったい、戦闘の最中に誰だ?

 見ると、ミニゴーレムたちの奥からブタさんがやってきた。

 えっ? なんで、グレートマッドドクターが? 毒かぶって自滅したのに?


「グレートマッドドクター?」

「ノー。ノー。それはミーの愚かなる次兄ですね。ミーはグレート大海賊キャプテンでーす。ブヒッ」


 ああ……やっぱり、ブヒッていうんだ。名前もくどいね。自分で自分をグレートって言うのがそもそもイタイんだけど、せめてグレートキャプテンでよくない? 大海賊いる?


「そっか。グレート研究所長、グレートマッドドクター、それにグレート大海賊キャプテン。三匹の子ブタなんだ」

「グアーッ! 誰が三匹の子ブタじゃ、われェー! ブヒッ」

「うん。もう、そのキャラ、飽きてきた。やっつけちゃうよ」


 すると、グレート大海賊キャプテンはブヒヒと鼻をならす。


「おまえたちはミーを倒すことはできん。なぜなら、ここにいるミニゴーレムたちがすべて、ミーを守ってくれるからだぁー! そして、ミニゴーレムは自らミーにくわえられる攻撃にあたりに行くため、かかえている子どもたちにも同時に危害がおよぶのだ。ブッヒッヒ。どうだ、手も足も出まい!」


 うーん。たしかに、ミニゴーレムは仲間を守るっていう技を使うよね。


「どうしよう。このままじゃ、何度倒しても復活するミニゴーレム相手に、ただただ僕たち、タコなぐりにされるだけだよ」

「だからもう壊しちまおうぜ。かーくん、三百億円くらい、チョロいんだろ?」

「チョロいけど……」


「ブヒヒ。手も足も出まい」


 ああ、なんか気にさわるーっ。


 猛が言った。

「よし。じゃあ、次からミニゴーレム倒したら、すぐに子どもを奪いかえすんだ。馬車はNPCを人数としてカウントしない。子どもを全員入れてしまえば、あとはミニゴーレムだけだろ」

「う、うん」


 その方法もやってみた。でも、途中で根本的な解決になってないことに僕は気づいてしまった。


「兄ちゃん。子どもはとりもどせるけどさ。ミニゴーレムがブタさんを守ることはふせげないよね?」

「そうだよ。だから、子どもがいなくなったら、ミニゴーレムを破壊するんだ」

「ダメー! ミニゴーレムは悪くないよ。悪いやつにあやつられてるだけ! ミニゴーレム虐待反対!」

「だからって、このまま、おれたちが倒れたら、子どもはぶじに家に帰れない」


 それもそうか。くうっ……どうしよう。


「ブッヒッヒ! 手も足も——」

「しつこいな! わかってるよ!」

「ぶ、ブヒ……」


 えーと、どうしたらいいのかな。ミニコだって僕らの仲間だ。壊れたら悲しい。きっと、このミニゴーレムたちの持ちぬしだって、家族の一員として大切にしてるはずだ。お金ですませられる問題じゃないんだ。


 うーん。うーん。


「ブヒヒ……早くそっちのターンを終わらせて——」

「わかってるよ!」

「ぶ、ブヒ……」


 そのときだ。

 困りはてる僕の袖を誰かがツンツンとひっぱった。


「ん? 誰? 兄ちゃん?」

「違うぞ。おれじゃない」

「ん?」

「ピー」


 あっ、ふえ子だ。

 どうしたんだろう?


「ピーピー、ピピー」

「ごめん。ふえ子。何言ってるかわかんない」

「ピー……」


 ところがだ。


「かーくん。手紙を読んでと言ってるな」

「えっ?」

「えーと、なんとか先生の手紙」

「ホムラ先生」

「たぶん、それ」

「なんでわかるの?」

「モンスター職、あれこれマスターしたから、なんとなくわかるようになった」

「…………」


 ああ、わが兄がますますモンスター化していく……。


 ともかく、手紙だ。

 さっきのあの古代楔形文字こだいくさびがたもじがソレか。僕に解読できるだろうか? いちまつの不安。


「ミャーコ。ホムラ先生の手紙、お願い」

「ミャっ」


 あっ、鳴いた。たまに返事するよね。ミャーコ。


「えーと、なになに? うーん。やっぱり読めない!」

「ブヒっ、そろそろ攻撃を——」


 くるっと僕と猛は同時にふりかえる。

「ウルサイ」

「黙れ」

「はい。ブヒヒ……」


 手紙の文字は走り書きすぎて意味不明。でも、ミニゴーレムがなんとか書いてあることだけはわかった。


「かーくん。これ、研究だ。ギガ?」

「ギガゴーレムだね!」

「暴走を止めるって書いてあるな」

「わかった。ギガゴーレムに同調して暴走したミニゴーレムを、ミニコが止めたときのことを調べるって言ってた。その結果なんじゃないの?」


 すると、ふたたび、ふえ子が僕の袖をひっぱる。


「ピー。ピピ、ピピピー」

「かーくん。リボンをミニコにつけるんだって言ってる」

「ああ、リボンあったね。封筒にいっしょに入ってた」


 ズルズルとミャーコの口から出てくる赤いリボン。

 これをミニコにねぇ。

 ま、いいか。つけてみるか。

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