第88話 ミニゴーレム(遠隔操作中)戦1



 これは、アレだな。

 鉄クズ大量戦のときといっしょ。

 たぶん、前衛のAからZを倒しても、すぐに後衛のミニゴーレムが次々に出てきて連戦になるやつ。


 兄ちゃんがいてくれてよかった。じゃないと僕らだけでは、ちょっと怪しかった。いくらミニゴーレムの一体ずつは、さほど強くないって言ってもね。数で来られると、そのうちバテるからね。


「じゃあ、かーくん。兄ちゃんに任せろ。ファイヤーブレスで全滅させるから」

「ちょっと待って。ファイヤーブレスって全体攻撃技だよね? てかさ。なんで人間なのに炎吹けるの?」

「だからな。兄ちゃん、魔王軍だから、マーダー神殿に行くことできないんだよ。モンスター職にしかつけないんだよな」

「……へえ。そうなんだ。どんどん人間離れしてくね。兄ちゃん」


 ちなみに、こっちの世界での猛には、背中に黒い竜の羽がある。これには深いわけがあるんだけど、長くなるので割愛。気になる人は前作『悪のヤドリギ編267話 飛んだ、飛んだ』を読んでほしい。


 パッと見、人間と言うより竜人だ。竜兵士とかの仲間だよね。その上、特技がファイヤーブレスとか、モンスターそのものじゃん。


 そういえば、この前、ワレスさんも火を吹いてた気がする。さてはドラゴン系の職業についたことあるんだな。


「えーと、それはいいけど、なんにも見えないとこで急に火吹かれると困るんだよね。ちょっと待って。前に宝箱からカンテラひろったから」


 なんでも出てくるミャーコポシェット。

 可愛い僕らのミャーコポシェット。


 カンテラを出すと、あたりが明るくなった。

 思ったとおりだ。あたりじゅうにミニゴーレムがいる。しかも、その一体一体が、まだ子どもを持ちあげたままだ。


「ほら、ファイヤーブレスしたら、子どもも傷つけるよ。ダメダメ」

「おっと、これは難しいな。子どもはおれたちにとっての人質みたいなものか」


 どの子も泣いてる。

 そりゃそうだ。不安で怖いし、それにお腹も減ってるだろうし。


「子どもを傷つけずにミニゴーレムだけやるしかないね」

「そうだな。しかたない。めんどうだけど、一体ずつ倒していくか」


 猛の素早さは約4700だった。流星の腕輪は……つけてないと。ということは、パタパタしてマックスにしたら、僕のほうが速いのか。


「とりあえず、猛はミニゴーレム倒してて。僕、素早さあげとくから」

「へえ?」

「あっ、それと、ミニゴーレムはあやつられてるだけだから、なるべく壊さないでね。戦闘不能にするだけにしてよ。持ちぬしに返さないと」

「そんなことまで気にしないといけないのか?」

「いや、だって、一体一億円だよ?」

「高いな」

「高いでしょ?」

「ラーメン何杯食えるかな」

「えーと……計算機使わないとわからない」

「とにかく、壊さないように倒すか」


 大技を使えない、セコセコとみみっちい戦いが始まった。

 手数だけは多いんで、僕とミニコが1ターンに六、七十体ずつ、猛も四、五十体は倒す。ぽよちゃんは『はねる』で素早さをあげて、七体は。たまりんはハープひきながら僕らの援護。


 つまり、1ターンで二百体ていど倒してるのに、いっこうに終わりが見えない。


「ねえ、猛」

「なんだ?」

「変じゃない? ミニゴーレム、見た感じ、三百くらいしかいないよね?」

「ああ。だな」

「でも、もう5ターンは戦ってる」

「うーん。もしかしたら、一度、戦闘不能にしても、ターン経過で回復するのかもしれない」

「キリないよ」

「ないな」


 たしかにすぐ倒せる。こっちに受けるダメージもそれほど強くはない。でも、このまま、えんえんと復活されたら、そのうちにはこっちのMPがつきて、体力が回復できなくなる。困ったな。停止ボタン押したいけど、こう密集してると、背中側までまわりこめないし。


「もうしょうがないよ。かーくん。ミニゴーレム、壊しちまおう」

「ええー? それはなんかなぁ。賠償金払えって言われたら、どうする?」

「かーくん。金持ちなんだろ?」

「そうだけど」


 だからって、こっちが悪いわけじゃないのに、三百億円も払うのヤダなぁ。


「あっ、そうだ」


 僕は思いだした。前にミニコがプログラムFでミニゴーレムの大群を停止させたことを。

 あれだ。もう一回、あれをやってもらおう。


「ミニコ、お願い!」

「ミ〜?」

「プログラムF、やってくれない?」

「ミー!」


 ミニコは前に出て、両手をつきだす。


「ミー……」


 ぽんっ。花がひらいた。

 どうだ? 効いたか?


 赤く点滅しているミニゴーレムたちの目が、しだいに黄色く……いや、ダメだ!


「ノー。ノー。ノープロブレムですよ。ミーの増幅装置は強力ですね」


 ああ、また変なの出てきた。

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