第84話 侵入! 魔物船



 えーと、ウツボ兵士、ヒトデ船員、サザエ戦士。どれも新しいモンスターだなぁ。たぶん、ウツボ兵士は竜兵士の海バージョンなんだろうと思う。


「ぽよちゃん。聞き耳お願い」

「キュイ」


 いつもどおりのお耳ピクピク〜

 よかった。ぽよちゃんがいてくれて。いやされる。


 聞き耳によると、ウツボ兵士の特技は、かみちぎる。うっ、痛そうな特技。あきらかに攻撃特化型だな。


 前にウツボンってモンスターがいたけど、あれはまんまウツボだった。でも、ウツボ兵士はニョロっとした長い頭の二足歩行モンスターだ。竜兵士とよく似たよろいを着てる。キモイ。


 あっ、キモイって言ったら、またモンスターを傷つけるかもしれない。やっかいだから言わないでおこう。


 ヒトデ船員は船乗りっぽい服を着た、赤いヒトデだ。これもキモ……いや、まあよそう。特技はヒトデ分身。ん……たぶん、分身して増えるんだ。


 サザエ戦士は、これもよろいを着たサザエ。つまり、この三種類は頭部が魚介類になった人型モンスターだ。

 サザエ戦士の特技はツボ焼き……なんか美味しそうな技だけど、まさか自分の身を調理してさしだしてくれるわけじゃないよね?


「とりあえず、戦おうか。あっ、僕、蘭さんの預かりボックス借りたままだから、傭兵呼びはいつでもできるね。手紙もあとで書けば、連絡はとれる」


 港は競走だったから、落ちてる小銭ひろうヒマもなかったけど、これなら僕の最大の攻撃は使用可能。安心。安心。


「僕が最初に行動するから、そのあと残ったモンスターの数によって、みんなの行動を決めるよ」

「キュイ」

「ゆらり」

「ミ〜」


 うーん。モンスターだけだと、会話がさみしい。人間語が通じるって、大事なんだな。


 とにかく、足パタパタ。素早さあげる、あげる。

 うんうん。らくに動けそう。

 コイツら、そんなに素早くはないね。というより、陸地の敵よりちょっと弱い?


 試しに僕は精霊王の剣をぬいて、一番見ため凶暴そうなウツボ兵士に切りかかった。最近、つまみ食いしてるヒマがない。


 ギャー! クリーンヒットして、ウツボ兵士の頭がもげちゃった! 魔王軍とは言え、殺してしまった……と思ったら、ウツボ兵士はウツボンになった。あれ?

 ミニコが僕に追随ついずいする攻撃で、あっけなくウツボンを失神させる。


「もしかして、コイツら、人型モンスターなんじゃなくて、前に出てきた海洋モンスターたちがよろいの上に乗っかってるだけ?」


 そう言えば、ヒトヒトっていうヒトデのモンスターや、サザエは……サザエはいなかったな。ホタッテっていうホタテ貝のモンスターはいたっけ。


 ウツボンもヒトヒトも、前はそれなりに歯ごたえのある敵だったけど、今さら出てきても、ぜんぜん僕らの敵じゃない。それにレベルも1のままだ。


「首さえ切り落とせば、楽勝だね」


 これなら、傭兵呼び使うことは、まずないね。

 僕は続いて、ヒトデ船員の首も切りはなした。コロリ。

 そしてやってきたミニコが、かかと落としで倒す。


 あとはサザエ戦士か。

 サザエは前にはいなかったけど、きっと切りはなせば、らくに……。


「えいっ!」


 ポロリ。

 やっぱり、かんたんに頭が落ちる。うーん。海産物。ツボ焼きにしたら美味しいのかなぁ?


 なんて考えてたら、サザエのフタがあいて、急にジュウジュウと音を立てる。しょうゆのこげる、いい匂い。


 ん? これは、ツボ焼きでは?


 次の瞬間、サザエのフタがひらき、ビシャーッと熱湯がとびだしてきた。

 うぎゃっ、アツイー!

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