第83話 港、ミニゴーレム競走



「わあっ、七十……八十? 百はいるよね? ヤバイ!」

「ミニゴーレム一体ずつは弱いですよね。パーティー二つにわけましょう」

「えっと、アンドーくんもいるから、三パーティーになろう。一隊は馬車を走らせて、船に先行する」

「そうですね。ゴール地点で待ってれば、ミニゴーレムたちも自分から来てくれるし」


 というわけで、僕をリーダーにした、ぽよちゃん、たまりん、ミニコパーティー。蘭さん、バラン、モリー、ヒカルンパーティー。アンドーくん、クマりん、ケロちゃん、シルバンパーティーにわかれた。NPCの先生、ふえ子、コビットたちは、ちょっと挙動の心配な蘭さんパーティーに補佐としてついてもらう。


「じゃあ、ニートでもちゃんと働ける僕が先行する! みんなは一人でも多くの子どもをとりもどして」

「わかりました」


 僕のパーティーは猫車に乗って、波止場競走だ。船までなるべく多くのミニゴーレムをぬいて、一番に到着しないと。


「猫車、お願い!」

「ミキャー!」


 トラジマの猫は僕らを乗せて猛スピードで走る。猫だからね。ミニゴーレムの集団がかたまりになってるとこを、ピョンピョンとびこえていく。馬車より障害物競走には強い。いいぞ。猫車。


 なんか左右でチャラチャラ、エンカウントのSEが流れるんだけど、たぶん、僕たちは戦闘から逃亡したことになってる。どんどん追いぬいていく。速い速い。猫車。


「あとちょっとで船だ。ガンバレ! トラっち」

「ミャッ」


 あっ、名前が決まってしまった。これからはトラっちって呼ばないと。


 でも、大変だ。船員たちは僕たちが近づいてくるのを見て、ヤバイと思ったんだろう。まだ乗りこんでないミニゴーレムがたくさんいるのに、船のタラップを外して、しまい始めてる。


 船にはさっきから見ただけでも、かなりの数の子づれゴーレムが入りこんでた。たぶん、百人以上の子どもがさらわれてるはずだ。


(港には蘭さんたちがいる。そっちの子どもたちは任せよう)


 ああっ、このパターン。また僕だけパーティー離脱する? でも、しょうがないや。


「トラっち、船までジャンプ!」

「ミャー!」


 トラっちは華麗に宙を舞った。さすがは猫。素晴らしいジャンプ力で、今まさに岸を離れようとする帆船の甲板にとびこむ。


 まにあった!

 でも、船のなかもダンジョンだ。甲板にいた船員たちがかけよってくる。


「コイツめ! やっちまえ」

「ジャマさせねぇぜ」



 チャララララ……。

 ウツボ兵士が現れた!

 ヒトデ船員が現れた!

 サザエ戦士が現れた!



 やっぱり、モンスターなんだ。それも魔王軍だ。

 この船、たぶん、ゴドバの命令で動いてるんだな。


 目的地がどこなのかハッキリしないけど、たぶん、あの場所じゃないかと思う。

 ゴドバが人間をさらって集める理由は、アレしか考えられないからだ。


 人間をモンスターに変身させる研究所。あそこへ子どもたちを送りこみ、人々を襲う魔物に変えるつもりなんだろう。


 くそッ。絶対、そんなことさせないぞ。

 目的地につく前に、この船のモンスター全部倒して阻止してやる。


「行くよ! ぽよちゃん、たまりん、ミニコ」

「キュイ!」

「ゆらり」

「ミー」


 人数は少ないけど、このメンバーなら攻撃にも回復にも優れてる。

 負けるもんか。やってやるもんねぇー!

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