第6話 能力強化

「……話を戻そう。異世界から来た、佐々木零次だ。残念ながらチートスキルは貰えなかったが──ああ、異世界言語理解なら……?」


「単に日本語だから分かるんだと思います」


飛鳥に否定される。

異世界(笑)。


「ともかく、少女を愛する気持ちなら、誰にも負けない。それは、俺の矜持であり、生き様だ」


胸を張る。

元の時代では迫害されそうな台詞。


「優秀な勇者様、という事ですね」


涼風が頷く。


「ただ1点、言っておく。ロリコンと、少女性的嗜好者は、同義では無い。俺達紳士のモットーは、イエスロリコン、ノータッチ。少女に手は出さないし、好きなタイプは飛鳥の様な大人の女性だ──いや、俺と比べて飛鳥も十分若いんだが」


飛鳥は20代後半だろう。

40半ばの俺とは、一回り以上違う。


沈黙。

そして。


「どどど……どういう事ですか?!ロリコンと言えば、少女を見たら問答無用で襲いかかるケダモノでは!?騙したのですかあああ!?」

「少女に手を出さない勇者に生きる価値が有るんですか!?貴方、偽物ですかあああああ!?ふざけないで下さい!!!」


詰め寄られる。

アルテミスと涼風に。


それを見て、スルトがひいている。


飛鳥から聞いていた。

勇者PTに入る終末少女は、基本的に婚活目的だと。

流石、飛鳥の言ったとおりだ。


「落ち着け、アルちゃん」

「落ち着いて、涼風ちゃん」


スルトと飛鳥が、2人を抑える。


市長は、ただ狼狽している。


「ね、スルトちゃん、アルちゃん、涼風ちゃん。少しの間でもいいから、零次様のPTに入ってくれないかな?クラスも上がるかもしれない……いや、きっと上がるから」


飛鳥がそう頼むと、


「あたしはかまわないぜ。正直に言ってくれたのは好感が持てるしな。あたしの勇者様を見つけるまでは、付き合ってやるよ」


意外と快諾したのがスルトで。


「神の思し召しに反しますが……レベル上げもしたいですし、付き合って差し上げます」


むくれながらもアルテミスが承諾。


「あわよくば手を出されて仕方なく……と考えてましたのに、台無しですわ!手を貸す理由は有りませんわね!」


涼風には断られた。


「神凪涼風少尉……キミに関しては、勇者様の支援が任務なのだがね……お母様、神凪天命あまめ中将に報告して構わないかね?」


市長が、ぽつりと言う。


「勇者様!神凪少尉、誠心誠意、勇者様にお仕えしますっ!」


「お、おう。。。」


手のひらくるー。


まあ、序盤戦力不足の時に、助けてもらえるのはありがたい。


「さて、PTも集まりましたし……実戦してみましょうか」


飛鳥がそう提案した。


--


「さて、零次様。まずは、PT戦力の把握です。ねえ、ステータス見せてくれる?」


飛鳥が、終末少女達に尋ねる。

ステータスって見れるのか?

俺は何も出ないんだけど。


「ああ、勿論良いぜ」


進み出たのは、スルト。

俺の額に、小さな手を伸ばし──


ボウ


いわゆるステータスが、頭に浮かぶ。


################

名前:スルト

LV:8

CLASS:1

STR:D

DEX:E

VIT:F

AGI:F

MND:F

MAG:F

スキル:

 なし

神具:

 大剣:B

################


なるほど。

強いのか、弱いのか。


「次は私ですね」


こつん


アルテミスが、俺とおでこをくっつける。


################

名前:アルテミス

LV:1

CLASS:1

STR:F

DEX:F

VIT:F

AGI:F

MND:D

MAG:D

スキル:

 なし

神具:

 楽器:C

################


ほわん。

可愛すぎて、あまり頭に入らなかった。


「召喚直後の終末少女は、伸び代が大きいのですわ。わたくしの能力は、長年の修練の賜物ですから、参考程度に見て下さいませ」


涼風が、フォローだか何だか分からない台詞を言う。

そして、小さな手を伸ばし、俺の手のひらに触れる。

涼風のステータスが浮かび──


################

名前:神凪涼風

LV:38

CLASS:3

STR:E

DEX:B

VIT:E

AGI:B

MND:E

MAG:F

スキル:

 疾風迅雷フリーラン

  移動による命中低下補正を0にする。

神具:

 銃:A

 すべて:E

################


「うわ、強っ」


思わず叫ぶ。


くすり


涼風が微笑み。


スルトとアルテミスがむくれる。


「……すまん」


2人に謝る。

比べる様な発言は良く無い。


「どうでした?」


飛鳥が、微笑みながら尋ねる。

飛鳥が続ける。


「ステータスがAであれば得意ステータス。S以上であれば、かなり強いですね。C以下であれば、苦手ステータスと言えます」


スルトとアルテミスが膝をつき、涼風が目を見開く。

基準が厳し過ぎる。


「クラスは、他者との絆の強さで上昇。レベルは修行や勉強、異獣討伐等で上昇します」


得意気な様子で、飛鳥が続ける。


「ステータスランクは、クラスアップ時に稀に上昇。通常は上昇しませ──どうしました?」


「ステータスAなんて、英雄クラスですわよ!S以上のステータスなんて伝説級ですわ!終末少女の事が詳しくないのであれば、黙っておいて下さいませ!」


涼風が飛鳥に叫ぶ。


飛鳥は、きょとんとすると、


「……Aのステータスがないのですか?」


「有る訳ないでしょう!」


微妙な空気が流れる。

神具のAはまた違うのかな。


「こほん……閑話休題……さて、零次様。次は、終末少女の育成です」


こほんって口で言ってるよ。


「コモンマテリアルに手を触れた状態で、終末少女のステータスを表示して下さい。そして、成長させたいステータスに意識を集中して下さい」


えっと……


スルトにおいでおいでする。

右手をスルトとつなぎ、左手でコモンマテリアルに触れ。


STRに意識を集中すると……


################

名前:スルト

LV:8

CLASS:1

STR:D→B

DEX:E

VIT:F

AGI:F

MND:F

MAG:F

スキル:

 なし

神具:

 大剣:B

################


コモンマテリアルが3個消失。

STRがランクアップした。

どのステータスが伸びやすそうか、伸ばすのに必要な消費量は……そういったのは、なんとなく感覚で分かった。


「すげー、さすが勇者様!」


スルトが目をきらきらさせる。


「コモンマテリアルによるステータスのランクアップ!?そんな簡単にできる筈──これは何ですか!?」


涼風が俺の道具袋に手を突っ込み、コモンマテリアルやレアマテリアルを見て叫ぶ。


「なんで、A級異獣のドロップ品を、貴方が持っているのですか?前線でも滅多に見ないのに」


「あー、なんか珍しいとは言ってたな。勇者が召喚された影響?とかでこの辺に出現してて、通りすがりの終末少女に助けて貰ったんだ。ドロップ品も、その終末少女に貰った」


「何でそんなに強い終末少女が通りすがるのですの!?そして何でドロップ品貰えますの!?」


「勇者を支援する為と言ってたぞ」


「むむ……名のある終末少女なのでしょうか……」


ぱん


飛鳥が手を打つと、


「低いステータスは成長できるし、経験を積めば強くなります。零次様の愛情によりランクアップも望めます。勇者様のPTと言えば、最強のチート能力PTに決まっています。みなさん、頑張りましょうね!」


綺麗にまとめた。


「おう、よろしく頼む!」

「神の思し召し通り」


スルトとアルテミスは乗り気だ。


「……おかしい……」


釈然としない様子の涼風。

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