第2話 出会いと別れ

「ど……どういう事でしょうか……?文献によると、ロリコンは、少女を見ると襲いかかると……?」


「その文献は間違っている……いや、異世界なら可能性があるけど……俺のいた世界のロリコンは違う!ロリコンの合い言葉は、『YESロリコンノータッチ』だ。君の言っている、少女様に手を出すのは、ペドフィリアだ」


ずさ……


女性は驚いた様子で下がると、


「でもでも……勇者様全員ではありませんが、終末少女との間に子供をもうけた方も若干名……」


「若干名しかいないじゃないか。少なくとも俺はペドフィリアではないし、少女様に手を出す気はないよ。女性として魅力的という意味では、あなたの方が好みですよ」


……と、俺みたいなおっさんが言うと、不快かな。


「ごめん、俺みたいなおっさんに容姿を褒められても不快だよね。気をつける」


「い、いえ!凄く光栄と言いますか……その、勇者様という事を抜きにしても、貴方は大変魅力的で……私を選んで頂けるのであれば、恐悦至極と言いますか……」


女性が俺の手を取り、近付く。

近い近い。


見た目からして、20代後半といったところか。

終末少女だけではなく、この人もパートナー探しに苦労しているのかも知れない。


「君が魅力的なのは本心だよ。ただ、お互い初めてあったばかりだし……付き合うにしても、もう少しお互いを知ってからが良いと思う。俺が変態なのは事実だしね」


「はい……」


女性は数歩下がると、


「私の名前は、鬼隠おにかくし飛鳥あすかです。勇者様のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


「俺は、佐々木ささき零次れいじだよ」


「零次様ですね、よろしくお願いします」


名前呼び。

いや、この世界では、名前呼びの方が一般的なのか?


「終末少女の中には、肉体の成長が進んだ人もいます。見た目が大人っぽければ、零次様も子をなして頂けますでしょうか?」


まだ諦めていないらしい。


「それは難しいね。終末少女……少女と言う事は、そのアイデンティティが少女。少女に手を出す事は、ロリコンたる俺のアイデンティティに反する」


面倒臭いと言うなかれ。

変態には、変態なりの矜持が有るのだ。


「分かりました……男性の出生率は減少の一途となっており、男性は貴重な存在です。人類の女性相手でも、ご協力頂けると幸いです」


やはり。

ハーレム推奨の世界らしい。


--


ガサ……


行く手を阻む大きな影。

トリケラトプス……的なフォルムの、機械。


異獣。


人類の文明が崩壊し、人口が激減した原因。



「異獣……何故此処に……湧いたのですか」


飛鳥が、焦りを含んだ声音で言う。


異獣は、その絶大な破壊力、速度、防御性能に加え……突如出現する無尽の個体数……それが脅威となっている。

比較的湧きにくい場所があり、そこを人類の拠点……街にしているのだ。

街道も、比較的湧きにくい場所なのだが、街程ではない……らしい。


「零次様、行って下さい。奴は私が引き付けます」


「女性を置いて行く訳には──」


「零次様。そのお考えはお捨て下さい。今後率いて頂く終末少女は、少女の姿……そして、終末少女でない女性の多くも、男性より遥かに身体能力が高い……今は、そういう時代なんです。零次様を守りながら逃げる事は難しいですが、単独で異獣を引き付けた上、逃げるだけなら、私でも可能なんです」


……なるほど。


「零次様、貴方様は人類の希望なんです。行って下さい。振り返らず、全力で走って下さい」


……!


「分かった。必ず、無事で再開してくれ」


「当然です。せっかく、ご好意頂ける異性と出会ったのですから、必ず──」


飛鳥は、俺を見ると、


「零次様、無事再開できたら、その時は、想いを告げさせて頂きま──」


「フラグ立てるなよ?!」


不吉な。

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