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 大学の写真学科に進みたい、と両親に話したときには、当然ながら猛反対された。写真家になる才能があると思っているのか、好きと言うだけでなれるものじゃない、写真は趣味のレベルにしておきなさい、etc. etc......


 もちろん、私にも自分に才能があるのかどうかなんて、分からない。SNSに投稿するとそれなりに反応はある。しかし、小さなフォトコンテストに何度か応募しているが、一番良くて「もう少しで入選」というところに引っかかったくらい。スマホで撮ったものでも入選している作品がある、ということは、あながちカメラのせい、とも言えない。


 結局私は写真学科は断念し、それよりももう少し応用ツブシが効きそうな情報メディア学科に進学することにした。カリキュラムの中にデジタルコンテンツの制作があり、今や写真もデジタルが主流なので、ここで学ぶことも無駄にはならないだろう、と思ったのだ。ようやく両親も納得してくれた。


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 大学で私は迷わず写真部に入部した。高校にも写真部はあったが、部員はみなちゃんとしたカメラを持っていて、スマホしか持っていない私には敷居が高く、入りづらかったのだ。でも、入学祝いにもらったお金で、私もとうとう念願のデジタル一眼レフを手にいれた。


 SONY α350。


 と言っても、もちろん中古でほとんどジャンク扱いだ。だけど問題なく撮影できる。中古市場に溢れかえっている昔のミノルタの安いレンズが使えるので、私はαシリーズの本体ボディが欲しかったのだ。


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 写真部というところは、写真部ならではアルバイトのクチが飛び込んでくるものだ。メーカーや店舗専属でカメラを売るバイトや、写真スタジオでアシスタントをするバイト。どちらもやったが、私はやはりアシスタントのバイトの方が性に合っていた。そして、そこで私は、師匠と呼ぶべき人に出会ったのだ。


 坂田さんは五十歳ちょっとのベテランで、スタジオのオーナーにしてメインカメラマン。記念写真から結婚式ブライダル、広告写真まで何でもこなす実力の持ち主。スマホで撮った経験しか無かった私に、焦点距離や絞りとシャッタースピードの関係、被写界深度に感光範囲ラティチュードといった、写真の幅広い知識を教えてくれたのがこの人だ。さすがにメインはデジタルだが、未だに銀塩で撮ることもあるという。


「坂田さん、写真が上手くなるには、どうしたらいいんですか?」


 ある日、私はいきなり坂田さんに聞いてみた。彼は少し面食らったような表情を浮かべたが、やがてゆっくりと話し始めた。


映見えみちゃんは十分上手い、と俺は思うよ」


「そんなことないですよ」私は即座に否定する。「だって、フォトコンテストにかすりもしないんですから」


「うーん……」坂田さんはしかめ面になる。「そうだねぇ……確かに君は、技術は水準以上になったと思う。その意味では君は『上手い』。でもね、表現者としては、まだまだ未熟かな」


「表現者としては未熟、ですか?」


「ああ。写真にしろ絵画にしろ、何にしても、作品というものにはね、その作者の内面が表れるものなんだ。だけど……ちょっときつい言い方になるかもしれないけど、君の作品には、それが希薄なように見える」


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