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写真が撮りたい。
そう思ったのは、中学の終わりごろだった。
たまたま見たカメラ雑誌に載っていた風景写真。真っ青な空の下に、棚田が続いている。山奥の田舎育ちの私には見慣れた風景のはずなのに、それはひたすら美しかった。
私もこんな写真が撮りたい。心からそう思った。
やがて高校に入り、スマホデビューした私は、早速それで写真を撮りまくった。
そして、絶望した。
全然ダメだ。お話にならない。確かにそれほど
色々調べていくうちに、やはりレンズが交換できるカメラじゃないとああいう写真は撮れない、と言うことが分かった。だけどそんなカメラはやはり高くて、なかなか高校生には手が出ない。山奥に住む私は、通学に精一杯でとてもバイトなんかやってる余裕がない。
とりあえず、私はカメラを買うのは諦め、まずはスマホでフレーミングの練習をすることにした。
写真撮影は引き算だ、とよく言われる。広い世界の全てを1枚の写真に詰め込むのは、当然のことだが不可能だ。だからその中の一部をフレームに切り取ることで、余計な物をさっ引く。その引き算の仕方――フレーミングがそのカメラマンの技術のかなりの部分を占める。
ともかく私はまず、初心者がやりがちな「日の丸構図」から脱却することに専心した。日の丸のように、被写体をフレームのど真ん中に持ってくる構図だ。被写体は特に選ばなかった。友達のスナップを撮ったり、スポーツシーンを撮ったり、建物を撮ったり……だけどやはり私が一番撮りたいと思うのは、自然の風景だった。そして、だんだん私は、プロのネイチャーフォトグラファーになりたい、という夢を抱くようになっていった。
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