Take a Chance!

Phantom Cat

1

 絞りは開放。シャッタースピードは……オートでいいだろう。


 私は両脇を締め、愛機のファインダーを覗きつつ息を止めながら、半押しにしていたシャッターボタンをそのまま引き絞る。


 フォーカルプレーンシャッターが走り、クイックリターンミラーが跳ね返る。最近のミラーレス一眼では得られないこの軽快な音が、私は好きだ。


 背面の液晶パネルの真ん中に、1/500秒で切り取られたカタクリの花が並んでいる。


 曇天。雲という天然の照明拡散板ディフューザーが、晴れていれば暴力的なコントラストを世界の全てに突きつける太陽光を、柔らかく滲ませてくれる。こんな淡い色の花を撮るには、絶好の撮影日和。


「ふぅ……」


 かがめていた体を起こしながら、私は格安の中古で買った90ミリマクロレンズの、期待以上の描写に満足していた。


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