第47話「ルグル防衛戦-操る者-」
「何だあれ? 人形? それにカカシか?」
蓮、シンク、アスカの3人はウィルが出したと思われる人形を不思議そうに見た。
別に武器を持っている訳でもなく空中から出ている糸にぶら下がっているだけの人形だ。
どういった仕組みで宙吊りになっているかは分からないが恐らくスキルの類だろう。
「……ねぇ、あれ、クマの方なんだけど……」
アスカが突如体を震わせながら言葉を口にした。
「どうしたっ!?」
「……可愛い。可愛すぎるよ! あのクマさんの人形!」
「は? いや、待て! 敵だから! そんな迂闊に近づくなって!」
シンクがアスカを止めようとしたがアスカは何かに取り憑かれたかの様にクマの方に向かって歩いていってしまった。
「おい! アスカ!」
「え……?」
――ザシュッ
「きゃぁぁぁっ!」
「大丈夫か!?」
「う、うん! シンクの声に気付いて咄嗟に急所は避けれたよ。右腕に攻撃受けちゃったけどそこまで深い傷じゃないみたい」
(今のは……? アスカは操られていたのか?)
「ウィルって言ったな!? アスカに何しやがった?」
『ん? 僕は何もしてないよ? 僕の人形が勝手にしたことさ。ああ、熊の人形はチャームという技が使えるから気を付けなよ。ってもう遅かったね』
ウィルの出した人形は見かけによらずそれぞれスキルを持っている様だ。そして戦闘力も割と高い。
(そうだ……。俺の
《対象情報》
名称:クマさん(パペット)
レベル:??
スキル:チャーム
《対象情報》
名称:カカシ(パペット)
レベル:??
スキル:カカシの存在感
(見えた! レベルが表示されていないのは何でだ? それにカカシのスキルが意味分からん! カカシの存在感? もっと分かりやすい技名付けろよ!)
「クマの人形の技で一瞬操られていた可能性が高い! 警戒してくれ! それとアスカを一回離れた場所へ!」
シンクは分かったと言うと蓮からハイポーションを受け取り少し離れた場所にアスカを横にして置いた。
「けど、一体何がそのチャームって技の発動条件だったんだ? アスカはクマの方ずっと見てただけだが」
「推測に過ぎないけど恐らく相手と一定時間視線を交わすというのが条件なんだと思う」
(過去のゲームでもメデューサってボスがこんな技使ってきたよな……)
「それなら相手の視界を奪えば良いんだよな? 俺が蓮を見させないようにするからその内にやれるか?」
「ああ、少し時間をくれればその隙に倒せるとは思うが……」
シンクには何か考えがあるようだったので任せることにした。
「それじゃいくぜ!――天雷! 今だっ!」
カカシとクマの人形の周りに現れた稲妻の光によって2体のパペットはこちらを認識出来なくなっていた。
「これならいけるっ!」
これまでの敵とは違って隙の無い完璧な構えでも無ければ威圧感も無いただの敵だと思っていたので、ATK とAGIの改変効果のみを付与してクマの人形に斬りかかった。
剣を振り下ろそうとした時、体が勝手に動き、剣もろともカカシの方へ引き寄せられた。
(ちょっ、なんだ? 体が言うこと聞かない!)
「蓮! そっちはカカシの方だぞ? 先にクマからやるんじゃ無かったのか!?」
「いや、分かってるんだが剣ごと体が引っ張られるんだ。抵抗しようにも出来なくて!」
すると引き寄せられた蓮の剣自体はカカシに当たってカカシは真っ二つに割れた。
「ん? カカシは倒せた……のか? というかこれがカカシのスキル?」
それにしてはただ攻撃の向き先を自身に寄せるだけなら弱すぎる。現に目の前には見事に斬られたカカシが倒れているからだ。
「まあ結果オーライだろ! 次はその調子でクマもやってくれよ! まださっきの俺の攻撃で敵の視界は復活していないはずだ」
「分かった! 今度こそお前だ!」
今度は影移動でクマの後ろに回り込みすぐさま攻撃を繰り出した。
のだが……またしても別の方向に引き寄せられてしまう。
「くっそ、またかよ! 次はなんだ!? って……カカシ!? さっき倒したはずじゃ!?」
『ふふふっ、君達面白いね! 演劇でも僕に見せてくれてるのかい?』
(また神速を発動して倒すか?……いや、さっき回復したとはいえ以前使用した際のダメージがまだ残ってる。こんな短期間の内に続けて使ったら葵達の所まで行けるか分からない……)
(カカシをまずはどうにかしないと……ん? カカシ? 切っても復活するんだよな? シンクの雷に打たれても焦げた程度だったが……あれなら)
「――炎舞!」
『それで僕に直接攻撃する気ですか? カカシのスキルはこの周辺一帯全ての攻撃を集めるものですよ? それにそのカカシは炎の耐性を持っています』
ウィルの言う通り、炎舞で放たれた炎の斬撃は全てカカシの元へと集まった。
「良いんだよ。それで! 何度も復活するカカシでも所詮は
カカシは勢いよく炎を上げて燃えた。
『何か特別な仕掛けでも? そんな炎じゃすぐに消え……』
カカシの炎は消える事なくそのまま灰になっていった。
『あのカカシ使えねーな。けどこっちにはもう1体いるからな! 早くあいつらを殺してこい! この役立たずが!』
「なんか口調変わったな? そっちが本性か? それにクマの人形のこと言ってるなら……ほれ」
「蓮! こっちは片付けたぞ!」
『……なっ! いつの間に! わ、分かった! 今回は見逃してやるからさっさと何処か行きやがれ!』
(どうしたんだこいつ? いきなり弱腰になったぞ?)
「まさか、お前これまで人形や仲間の兵士に全て戦わせて戦闘したことないのか……?」
『はっ、人形も兵士も俺の力に変わりはないだろ! 俺の権力があってこそ付いてきてるんだ!』
(はぁ、警戒して損した……)
「シンク! こいつは何処かに縛っておいてくれ。それと、また人形出されても困るから程々に気絶させといてくれ。あ、殺すなよ?」
「やらないのか? それならアスカを痛めつけてくれた分だけは痛い目に合わせてやるからな!」
『ひぃ、勘弁してくれ……っ、ぎゃっ!』
蓮はこの場所はシンクに任せて葵とアデルがいる場所へと向かった。
風華には先程と同様に移動速度を上げる加護だけ掛けてもらい、優里と風華には街の兵士を相手するように伝えて別れた。
(よし、それじゃ行くか)
◇
――ズドンッ!
蓮の向かってる先で大木が大きな音を立てながら倒れた。
「あそこか!?」
蓮はさらに加速しようとした時に右後方から物凄いスピードでこちらに向かってくる影を捉えた。
(くっ、こんな時に……敵か?)
影は蓮を捕捉すると更に加速して突っ込んできた。
「ん? あれは。ってちょっと待て! 止まれと止まれ止まれ!」
ザザーッと音を立ててブレーキを掛けた影の正体はルクスだった。
「ルクス!? エルフの里には行かなかったのか?」
「がうがう! くんっ!」
「ん? なんだこれ? 手紙と薬?」
手紙を開くとそこにはアイネからのメッセージが書かれていた。
「ってことはもう往復したのか!? どんだけ速いんだよ!」
ルクスは褒めてと言わんばかりに尻尾をブンブン振り回している。
「良くやったぞ! 手紙に書かれている通りならこの薬さえ飲ませれば進行を遅らせれるみたいだな。完全に治すにはエルフの里まで行かなきゃならないみたいだ」
どうやら言葉が通じているようなので薬をティリアに届けるのをルクスに任せて蓮は先程の大きな音があった場所へ急いだ。
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