第46話「ルグル防衛戦-再会-」

「……ん……さ! れん……さ……! 蓮さん! 起きて下さい!」


「っ……!? はっ! ヨハンは!?」


「ヨハンとはあそこで倒れている者ですか?」


「ああ……倒せたのか。良かった! って何でここに優里さんが!?」


「遅くなりました! 少し前にこのフロアに到着したのですが何やら街と思われる方が騒がしかったので近づいてみたら蓮さんがいたんです!」


「そうだったのか。でも助かったよ! 周りにまだ兵士が居たはずだが全て倒してくれたのか?」


「はい! 蓮さんも危なかったんですよ? 気絶していた所を敵に狙われていてシールド出すのがあと少し遅かったらやられてましたから!」


 どうやら優里はまさに蓮がヨハンにトドメを刺した瞬間にこの場に到着して俺を救ってくれたらしい。


 時間もなかったので手短に今起きている事を説明すると快く協力してくれる事になった。


「私達も先発隊として来ただけですので10名程しかいませんが、戦力としては活躍できるはずです!」


「それでは2人程私に着いてきて頂いても良いですか? 他の方は街の守りをして頂けると助かります!」


 そう蓮が言葉にした瞬間、街を覆う結界が音を立てて砕かれていった。


「結界が破られた!? 他の2つの部隊のどちらかに結界を破る力を持った奴がいたって事か。けどそれならそこに向かった人達は……!?」


 蓮は意識が戻ると同時にリバースヒールを使った為、まともに動ける状態までは回復していた。


「優里さん達には申し訳ないですが他の部隊が攻撃を受けているみたいですのですぐ行かなければいけません!」


「分かりました! 急ぎという事でしたら……風華! バフをお願いして良いか!?」


「はい!――速神の加護」


「この子は以前のヘルンとの戦いの後に加入したメンバーで、加護というスキルであらゆる能力値を短期間向上させることが出来ます!」


 蓮達3人の体は優しい風に包まれ足がこのまま飛んで行けるのでは無いかと思えるくらい軽くなった。


「これは凄い……ありがとうございます! では急ぎましょう!」



――ギィーンッ、ギギッ、ガギィンッ


「くそっ、なんだってここはこんなに兵士の数が多いんだ! 他の場所には兵士を向かわせなかったのか?」


 シンクとアスカがいる場所では800人程の兵士がルグルの兵士達と交戦している。


『いいぞ。もっとやれー。ふぁぁぁ。眠くなってきたな……』


 シンク達が相手をしている最奥で白い軽装の鎧に身を包んだ男が1人ふんぞり返って腰を降ろしていた。


 (あいつが敵の親玉なんだろうがこの兵士達が邪魔であいつまで攻撃が届かねぇ)


 するとそこに物凄いスピードで走ってきた3人の影が見えた。


「ちっ、敵の増援か……!? 違う! あれは……」


「シンクっ!! 大丈夫か!?」


「蓮か! 丁度良かった! 雑魚どもが多くて敵の親玉まで攻撃が届かないんだ! 何とかならないか? てか後ろにいる2人は誰だ?」


「人数がやたら多いな……今目の前にいるので全てなのか? 後ろの2人は俺の仲間だから心配するな! 事情は後で話す!」


「目の前に大体400人くらいいて残りは俺らの隙をついて街へ入っていっちまった。結界が急に解けたんだ」


 (シンクも結界については知らないとなるとエスターが何かしたのか?)


「分かった! 街には他の仲間も援護に行ってるはずだから足止めはしてくれているだろう。ここが収まったらシンクはアスカと一緒に街の兵士を相手してくれ」


 蓮は目の前の敵を片付ける方法を考えていたが優里から提案を受けた。


「蓮さん、ここは俺に任せてくれませんか?」


 何か策がありそうな顔で少し微笑んだ優里を見て兵士の相手は優里に任せる事にした。


「分かった。 それならシンクとアスカは俺と一緒に1番奥でのうのうと居座ってる奴を相手にするぞ」


「大丈夫ですか? かなりの数がいますが……」


 アスカは不安そうな表情で優里を見たが、優里は自身ありげに答えた。


「任せて下さい! 風華あれやるぞ!」


「って、いきなり本番であれやるんですか!? まだ数回しか試してないですよ?」


「大丈夫さ! タイミングは俺が合わせるから!」


「……そこまで言うなら分かりました。一瞬ですからね? 頼みましたよ!」


 優里と風華はどうやらタイミングが重要な技を2人で出すみたいだが蓮は想像が付かなかった。


 (優里さんのスキルってシールドだよな? 攻撃の技は無いって前言ってた気がするが……)


「いきます!――狂乱の加護!」


 風華が先程俺達に掛けてくれたのと同じ様に加護のスキルを優里に向けて唱えた。

 その瞬間優里は既に攻撃の構えをしており、風華のスキルからコンマ1秒程ずらしてスキルを使用した。


「――無欠の盾アブソリュート!」


 すると優里の目の前に手のひらサイズの小さなシールドが無数に現れそこから青く光る光線が兵士達目掛けて放たれていく。

 攻撃は兵士達の頭や腹、足元などを不規則に撃ち抜いていった。


『なんだこれは!? おいお前達! ぐぁっ!』

『何かわからないが避けるんだっ! グハッ!』


「無理ですよ。それは自動感知、自動追尾が付いてますから」


 3秒程の出来事だったが気付けば兵士300人は全員その場で倒れていた。


「ふぅ、上手くいったな!」

「ですね! タイミングもバッチリでした!」


「優里さん……今のは!? 攻撃技は無かったはずじゃ?」


「蓮さんと別れた後にスキルレベルが上がって覚えたんです! 攻撃技と言っても風華の加護による攻撃バフが無いと使い物にならないんですけどね。ハハッ」


 優里が使った|無欠の盾《アブソリュート》はこれまでのシールドで受けた攻撃を蓄積して一気に解放する技らしい。

 しかし、1発の威力が低すぎて普通に使っても相手を倒すまではいかないので風華のスキルで威力を底上げして連携技として試していたみたいだ。


「なるほど。凄いですね! けどタイミングがどうとか言っていたのは?」


「あれは私の狂乱の加護の持続時間が3秒しか無いので、ほぼ同時にスキルを使わないと十分な威力が発揮されないんです」


 (それであんなにシビアなタイミングって訳か)


「さあ! 蓮さん! あとは任せました! 今ので攻撃は暫く出来ませんがシールドで援護はします!」


 蓮はシンクとアスカに合図を送り奥の敵へと向かった。


「おい! お仲間がやられたってのに随分余裕じゃないか! もう守ってくれる奴はいないぞ?」


――パチパチパチ


 この隊を恐らく率いていたリーダーが突如、両手を合わせて拍手してきた。


 (なんだ……?)


『ありがとう! 僕は人が多いのが嫌いでね。丁度減らして欲しかったんだよ。とは言え動くのも面倒だから勝手にやらせていたのさ。ああ、一応名乗っとくと僕はウィル。見ての通り面倒臭がりなのさ』


「そうかい。でも残ったのはお前1人だ。その面倒事をやらなきゃいけなくなったんじゃないのか?」


『うーん、そうだね。けど、やっぱり面倒臭いからこの子達に任せるとするよ――操り人形の宴パペットパーティー


 ウィルが人形を操る様な手振りをすると突如としてカカシの様な人形と熊の人形が現れた。


『……やれ』

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