第41話「ルグル防衛戦-先陣-」
城へ入る扉に近付くと複数のダルカン兵士が取り囲んでいた。
《対象情報》
名称:ダルカン兵士
レベル:70
スキル:無し
「ん? これは……?」
蓮の目の前に突然相手の情報が映し出された。先日取得したスキルのおかげである。
(便利だな。意識するだけで表示されるのか。森でウルフと戦った時に発動しなかったのはウルフ1体に向けて意識を集中させなかったからか?)
「蓮、どうしたの?」
「いや、以前取得したスキルで相手の情報が表示されたから少しびっくりしてね。意識したらスペクタレンズと同じ内容が表示されたんだ」
「なにそれ! 私も使いたい!」
「……葵は戦闘に集中してくれていいよ。俺に任せてくれ。それとこいつらはやっぱりダルカンの兵士みたいだ。特にスキルは持っていないようだけど……」
――シュンッ、ジュッ
「!? なんだ?」
蓮の目の前にいる兵士の手には銃のような物を待っており、そこから光の弾が発射された。
――魔法を打ち出す武器か? スキルを持っていないとはいえ厄介だな……
「アデルは後ろの物陰に隠れていて下さい。ひとまずこいつらを片付けます!」
3人の兵士は完全にこちらを敵として見ている。恐らくルグルの人を1人残らず殺せとでも命令されたのだろう。
『おい! お前達! ここは俺達が占拠する! 大人しくやられろっ!』
そう言うと銃口をこちらに向けて何発も弾丸を放ってきた。
「葵、効果が分からない以上あの弾に当たるのは避けた方がいい! 近づいて一気に倒そう! 出来れば無力化したいが、難しそうなら……仕方ない」
「分かった! それならあの銃をどうにかしないとね!」
蓮と葵は剣を抜くと1人の兵士目掛けて攻撃を仕掛けた。葵が
ダルカンの兵士はその場でうずくまり、立ち上がろうとはするが、すぐには動く事が出来ない。
『貴様ら! よくも! まずは女からだ! これでも喰らえ!』
残り2人からの銃撃が葵目掛けて放たれた。蓮の位置からではフォローが出来ない。
「よっ、ほっと! こっち狙ってるの見え見えだよ! そんなんじゃ当たんないよ」
葵は2人の銃撃を体を捻るようにしてかわした。これまでモンスターと戦ってきた経験からか攻撃の出処から相手の攻撃を予測してかわしたのだ。
「やるなっ! それじゃ2人は俺に任せろ!」
「――影移動!」
攻撃をした後の隙だらけの敵に対して蓮は影移動で即座に2人の背後に回り込み首元に攻撃をして気絶させた。
「お疲れ様! これで当分は動けないだろ。一応ロープでその辺に縛っておくか……」
入り口の兵士を3人片付けると城の中へ入っていった。中に入るとすぐに色々なところで交戦している光景が目に入った。
「くそっ、城の中までこんなに入られていたのか」
「ひとまず百合さん達と合流してから上を目指しましょう。そして王室の間まで行けばこれ以上の侵入を防ぐ手立てがあります」
「分かりました。しかし手立てというのは?」
「着いてから説明します! それを成功させるためにもなるべく早く王室の間まで行きたいのです!」
「それなら王室の間に急ごう! きっと道中の何処かで百合達も応戦してくれてるはずだ!」
蓮を先頭にアデルを葵と挟み込む形で3人は上へ進む道を急いだ。
◇
一方街ではアサギリが仲間と合流したは良いものの、1人のダルカン兵士に手を焼いていた。
「くっそ、こいつ攻撃を先読みでも出来るのかっ!?」
「落ち着いてシンク!」
アサギリは王女直属の護衛の残り2人であるシンク、そしてアスカと合流して敵と交戦している。
目の前にいる敵は、他の兵士とは違い、装備もどこか装飾が派手である。その鎧に身を包んだ男はこちらの攻撃を全て
『はんっ! お前らの攻撃なんて当たんねーよ!』
「一体お前は何なんだ! 他の兵士とは装いも異なって見えるが……」
『他の兵士といっしょにすんじゃねぇ! 俺はダルカン王子の直属部隊の1人タイランドだ』
「タイランド? 聞いたことあるな……ダルカンで1人、王子に歯向かっていった奴がいると。お前がそうか」
『ああ、確かに昔そんなこともあったな。けど今は忠実な部下だけどな。ってそんな事はどうだって良いんだよ! 俺はここを占拠する命令を受けている。お前達には消えてもらうぞ!』
タイランドは3人の中へ飛び込んでアサギリの足目掛けて剣を振った。
他の2人は懐に入ってきたタイランドを目で追って的確に急所を刺す攻撃を繰り出した。
『だーかーらー! お前達の攻撃は全部お見通しなんだって!』
そこに攻撃が来ることが分かっていたかのようにタイランドは素早い身のこなしでシンクとアスカの攻撃を避けてアサギリに攻撃を入れた。
「がぁぁぁっ、足が……」
「アサギリ! 待って! すぐに回復を!」
『させねぇよ!』
アスカは対象を回復する天啓を持っているが、通常時は発動まで1分ほど掛かるため戦闘中に行うのはリスクが高い。
間髪入れずに回復を使うことも出来るが代償があるのだ。
しかし、この状況では動けないアサギリが集中的に狙われると判断した為、即時回復に移ったのだが、タイランドもそれを簡単には許さなかった。
タイランドがアスカ目掛けて回復を中断させようと攻撃を出した時、シンクが間に入り攻撃を止めた。
「俺もいるんだぜ? 無視すんなよ」
「俺がこいつの相手をしている間にアサギリを頼む!」
「分かった!」
シンクの持つ天啓は《雷撃》。対象に雷属性の攻撃を与えるものだ。
(直線的な攻撃だとすぐに読まれちまう……読まれても関係ない攻撃なら)
「タイランドとか言ったな! この攻撃避けてみろよ!――
剣を地面に突き刺すとタイランドの周りから紫色の稲妻が地面から天に向かって複数現れた。
『この程度の数なら問題無い! 無駄な足掻きだったな』
「まだ終わりじゃ無いぞ……
滅雷による地面からの攻撃とは異なり天雷は相手の周囲5メートル範囲に上空から稲妻を落とす技だ。
天と地、両側から挟み込むような雷撃がタイランドの周りに降り注ぎ、全てを避けきれずに攻撃を受けた。
『2発ほど当たったが掠った程度だ……ん!? なんだ? 身体が……』
「言い忘れてたが俺の攻撃は全てに雷属性が乗っていて少し触れただけでも対照を麻痺させるんだよ。暫く動けないぜそれ」
勝ちを確信したシンクがトドメをさそうとタイランドに近づいた瞬間、シンクの体が無数の斬撃で斬りつけられた。
「かはっ、なんだ……よ、これ……」
『いつ俺の力が予知だけだって言った?――残留剣撃。俺の斬撃はその場に留まる』
タイランドの技によりシンクは深傷を負った。
「大丈夫か!? シンク!」
アスカの回復によって動けるようになったアサギリはシンクの元へ駆けつけるがまともに動けない程のダメージを受けていた。
「シンク! お前はここで休んでろ。アスカの回復は連続で使うのはリスクが高いから暫くしたら回復してもらうんだ」
「……ああ、少しだけ休ませて貰う。けど、あいつの攻撃には気を付けろ。さっき無駄に剣を振っていたのは恐らく斬撃をその場に残す為だ。それに触れるとこうなっちまうからな……」
「分かった」
(しかし、どうすれば……蓮さんがいれば広範囲のスキルで致命傷も与えれるんだが、今は頼れないな)
『どうした? 近寄ってこないのか? まあ俺は時間さえ稼げれば良いんだがな。あとはあいつが城を乗っ取ってくれる……』
「城を乗っ取る? まさか……戦力を分散させるためにわざと街でこんな騒動を起こさせたのか……」
(早くケリ付けて蓮さんの所に行かないと……)
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