第39話「練金都市ダルカン」
第39話「練金都市ダルカン」
エルフの里は始め来た時と同じく隠されており、アイネの呪文で前回と同じ様に入っていく。
アイネは里の一番奥にある建物へ直行するとルーナに笑顔で報告した。
「姉さん! 蓮さん達がうまく説得してくれましたー!!」
「それは本当か!? よくあのウルフのリーダーを丸めこめたものだな!」
「はい! と言っても実際のリーダーはヴォルグさんで、今回の件には関わっておらず息子の勝手な判断で人間やエルフを襲わせていたみたいです」
息子のルドガーを葵がボコボコにした事を伝えるとルーナは大口を開けて笑っていた。
以前の様な全てのモンスターと人間が共存するにはまだ掛かるかもしれないが、その架け橋に少しでも貢献出来たかと思うと葵や蓮そしてアデル達にも笑顔が溢れた。
「それで……具体的には今後どうしていこうか……」
確かに共存の道が拓けたとしてもどう動いていくかははっきり決まっていなかった。
「……あ、それなんですが。俺に考えがあります。けど今は別の用事があって先にそっちを済ませたいので、用事が終わり次第またお伺いしても良いですか?」
「分かった! それなら里に入る時は入り口でこの紋章を掲げてくれれば道を
「ありがとうございます!」
蓮達は少し休憩をしてから目的のダルカンに向けて出発する事にした。
「それじゃ、1時間後に出発するからそれまでここで休ませて貰おうか」
他の者がエルフの里の見物や武器の手入れをしている中、蓮はこれまで溜めた
(おお、結構溜まってたな。ウルフとか倒したおかげか?)
「んー、ポイントは175か。とりあえず何があるか見てみるか。――魔改造」
――ブゥーンッ
スキルボードが目の前に表示されると解放可能な能力を見てみる。
・スキル反動軽減[微](パッシブ):10
・
・
・
「4つか……って何か1つ無茶苦茶なポイント使うスキルあるけど何だあれ? まあ当分取得できなさそうだからとりあえず無視か」
このボード上でスキルの詳細までは確認できないので直感で選ぶしか無かった。
「まあ、ポイント丁度使って上の3つのスキルでいいかな。2000ポイント溜めても良いが、それだけ溜めて使えない技だったら悲しいもんな……」
蓮は想像(黒)以外のスキルを取得すると内容を確認した。
・スキル反動軽減[微](パッシブ):10
―全てのスキルのデメリットを僅かに軽減
・
―初めて出会った敵の能力を表示させる
※一部表示不可な情報も有
・
―技発動時に想像した対象を具現化する。
―具現化対象は発動者の忠実なしもべとなる。
―具現化内容の変更は不可。出し入れ自由。
―具現化出来る数:1
「パッシブは有難いな。これでスペクタレンズを使う必要がなさそうだ。しかし……この想像って何だ? 仲間になってくれるモンスターでも出せるのか?」
(試してみるか……)
(とりあえず強そうな巨人がいいな。ゴーレムみたいな……イメージは出来た……やるか!)
「――想……」
「蓮ー! さっき向こうで白くて可愛いウルフの子供がいたんだよー!」
(白くて可愛いウルフ……?)
「……像(白)! あ、待て! 今のは無しだ!」
――バフンッ!
技の発動と共に白い煙が目の前に立ち込め、その中からフワフワな白い毛並みのウルフの子供が出てきた……
「あ、やっぱりぃぃぃぃ! 葵! どうしてくれんだぁぁ! こんな可愛らしいウルフ出しちまったじゃねぇーか!」
直前の葵の声のせいで蓮の頭は「白い」「ウルフ」「可愛い」「子供」このワードで上書きされてしまった。
そしてそのまんまの物体が創造された……というわけだ。
「くぅぅぅーん。がうがう」
(いや、しかしこれは……可愛いな……)
「何それー! さっき見たウルフより可愛い! 蓮どこで見つけたの!?」
事の成り行きを全て説明すると葵は特に悪びれる様子もなく結果オーライじゃん! と言ってウルフをモフモフしている。それはもうとんでもないスピードでだ。
「おい、葵?……あおいー? 葵さんっ!?」
「――はっ!? ごめん! この子ヤバいよ……」
「何がだ? まさか凄いスキルを秘めてるとかか? それとも威圧感だけでも強さが伝わってくるのか!?」
「あ、ううん、そうじゃなくて! ヤバいぐらい気持ちいいのっ!!」
(……あ、ふーん。そうか……そりゃー良かった)
蓮は空を見ながらやっちまったとその時、強く思った。
◇
その後、葵のモフモフから15分経った所でやっとウルフは解放された。
「てか、そろそろ時間だろ? 行かなきゃいけないぞ!」
「あ、うん! 最後にこの子の名前だけ決めようよ!」
「ああ、名前無いと呼べないしな。そーだなー。ルクスってのはどうだ? ラテン語で光を意味していて俺らをいつも照らしてくれるって良くないか?」
「うん! いいね! じゃー、君はこれからルクス! 気に入ったかな?」
「くぅん! がうっ!」
尻尾を盛大に振っているところを見ると気に入った様だ。
「それじゃ、ダルカン目指して出発だな! ところでルクスってずっとこのまま出たままなのか?」
試しに蓮が頭で戻れとイメージすると……その場から蓮の体へ吸収される様に消えていった。
(なるほど。便利だな。次モンスターに会ったらルクスにも戦闘させてみよう)
◇
皆の準備が整うと蓮達はアイネやルーナ、それに里の皆に別れを告げ里を後にした。
道中のモンスターは既にヴォルグとルドガーの声が届いているのか一切襲って来なくなった。
この速さで行けばダルカンまではすぐにでも着きそうだ。
「ところでダルカンに行ったらまずは何をするんです?」
「ダルカンに着いたら王子に会って話を聞いて貰おうと思っています。今回はそれがメインだから他には特に無いですね」
「もし時間あれば街の中とか上の階層に続く扉を見てみたいんですけど……」
「構わないよ。戻るのは翌日になってからにしよう! 街で自由行動が取れる様に王子にもお願いしておこう」
「ありがとうございます!」
そうこう話しながら進んでいる内にダルカンという街が広がる階層の手前まで着いた。
扉の前にはダルカンの兵士と思われる兵士が2人立っていた。
「ルグルの王女アデルです。ダルカンの王子と約束があって来ました」
「……話は聞いております。お通り下さい」
階段を上がるとこれまでのゼルムともルグルとも異なる風景が広がっていた。
街の上空にはパイプの様なものが張り巡らされており、錬金都市というよりは俺達の言葉で表すなら工業都市だ。
街の中心にはゴツゴツした見た目の要塞が立っており、あそこが恐らく王子のいる場所だろう。
「よしっ、早速だが、王子に会いに向かおう。約束はしてあるのですんなり会えるはずです。けど前回は会うのすら渋っていたのに今回はこうもすんなり会えるのは気になりますね……」
アデルの言葉で一向は街の中心部に向かう。
(……なんか妙な胸騒ぎがするな。さっさと用を済ませて戻った方が良さそうだ。タワーの確認だけはしたいとこだけど)
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