第35話「複合スキル」
「スキル
前あった様な複合スキルの発現は特にせず、影移動でアサギリの背後に移動すると重力制御のスキルの効果で相手は壁に向けて飛ばされた。
(なるほど。複合スキルは決められた組み合わせじゃないと単一のスキルが個別で発生するだけなのか……いや、これでも十分強いんだけどね)
「それじゃ、こっちはどうだ? スキルMIX――
『スキル複合を確認――
この組み合わせは反応するのか……
これは色々試さないと分かんないな……
「まあ折角発生したスキルを試さないわけにもいかないよな! 重力刃!」
白剣を勢いよく振りかざすと斬撃が放たれた。炎舞と違って炎を纏ってはないただの斬撃の様だ。
「ん? 劣化してないかこれ? なんか速度も遅い気がするし」
斬撃は遅いとは言え完璧に回避するのは難しい速さでアサギリに向かった。
「真空の刃か……その手の技は他にも見てきた。避けるのは難しいが受け止めてやる」
アサギリは刀を正面に出して防御姿勢を取り構えた。
斬撃が刀に触れると刀が吹き飛び正面から真空の刃をもろに喰らってしまった。
「なっ!? どこにこんな威力が……」
(おお、斬撃に重力制御の効果が乗っていたのか……てか危ねぇ。威力加減しておいて良かった。全力で相手はするが殺すつもりは毛頭無いからな)
攻撃を受けたアサギリは膝を突き反撃をする気配も無い。
「どうする? これくらいで認めてくれると俺も有難いんだけどな。次は加減しない」
「これで全力じゃないのか……ふっ、分かった。認めるよ。お前は十分強い」
「良かった。アサギリが俺を怪しんでるのは最もだしな。警戒はし続けてくれて構わないが今後宜しく頼むよ!」
「ああ、こちらこそすまなかったな。ダルカンの国とのいざこざで少しピリピリしていたんだ。それと蓮、まだ全力で試したい事がありそうだったがここでやると建物がボロボロになってしまうから後で外の訓練場を案内してやるよ」
「そんな所があるのか! 頼むよ! それと気になってたんだけどダルカンって国とは何があったんだ? さっき王女も言ってたけど……」
蓮がずっと疑問に思っていた事を口にすると王女アデルはゆっくり答えた。
「それは私からお話します……」
話を聞くとどうやらここから2層上にあるダルカンは練金に優れた街だが、食料物資が枯渇しているらしい。
その反面このルグルの国は果実や野菜などの食料が豊かな為、それを狙って日々戦いが続いているとの事だった。
「んー、大体は分かりました。けどお互いが物資や練金の知識を共有して共存もできたんじゃないですか?」
「初めはそうでした。けど、次第に向こう側の要求が強くなり、それを受け入れらないと伝えると無理矢理自国の物資を奪うようになっていったのです」
「今回護衛して頂くのは現王子であるエスターへの再度交渉をしにダルカンへ行く為です」
「護衛を付けるって事は道中で危険があるという事ですか?」
「ダルカンは2層上と言いましたが、1層上には大森林が広がっており、そこにはモンスターや金品目当てに襲ってくる人達がいるのです」
「分かりました。俺達も上の階層を目指す目的がありますので様子は見ておきたかったですしね」
「ありがとうございます!」
その後、出発の日は2日後と聞いてそれまでの間はこの街でゆっくりしていて良いそうだ。
腕章もちゃんと貰ったので街で捕まる事もないだろう。
葵達は街を探索したいとのことで従者であるリリさんに案内をして貰い街に出掛けることになった。
俺はというとアサギリと一緒に壁外にある訓練場にやってきた。訓練場には大きな岩がいくつもあり、訓練で出来た傷が無数に付いていた。
「アサギリも此処で練習を?」
「そうですね。けど私だけじゃなく、街の兵士も訓練で来ますよ。あとは王女直属の護衛があと2人いるのでそいつらも来たりします。今は別件で7日ほど出払っていますがダルカンから帰ってきたら会えると思います!」
(なるほど。アサギリと同等のレベルの奴があと2人もいるのか)
「それじゃ、俺はここで少し試したい事があるから暫く訓練して戻るよ。ありがとう!」
「分かりました! それでは私は戻っていますね」
アサギリが城に帰ると早速、スキルの複合について整理をし始めた。
まず俺が使えるのはこれだけか……この中から組み合わせを1つずつ試していくしかないよな。
1つのスキルで複数、技が使えるから全て試し終えるのは途方もないな……
――――――――――――――――――――
・瞬身 ・魔改造
・トレース ・影移動
・コンバート ・炎神
・重力制御 ・修復
・硬質化 ・ポイズンストーム
・隠蔽
――――――――――――――――――――
「改めて整理すると多いな……ここまで色んなスキル使えると俺自身がカスタマイズされてるんじゃないかって気になってきた……まあやっていきますか!」
◇
5時間後
「ぜぇ、ぜぇ、はぁっ、しんどいっ!!!」
「今までこんなに連続で使用したことなかったから分からなかったけどこんなに体力消耗するのか!」
けど収穫はあった。現状のスキルの組み合わせでは3つMIXが成功して新しい複合スキルを習得した。
それと分かった事は、複合スキルを更に複合させる事は出来ない。
そしてトレース、コンバートを絡めるMIXは人を対象にしているからなのかどれも出来なかった。
あと魔改造も出来なかったな。
「最後に3つのスキルだけ試しておくか……」
(まず1つ目)
「《炎毒陣》」
これはポイズンストームと炎陣をMIXしたもので前の蜘蛛を倒した時と似たような炎の渦を作り出す。
威力は比にならないが、効果範囲が広い為、味方を巻き込まない様にしなきゃいけないのが欠点だ。
(2つ目)
「《リバースヒール》」
修復と硬質化を自身に掛けた際に発動する。継続的に外傷、精神的疲労を回復させる技。
さっき自分に切り傷を付けていた箇所は10秒ほどで無かったかのように綺麗に治っていった。
他の人を対象に出来るかも試したい所だ。
(最後3つ目はとっておきだ)
「《ポータル》」
瞬身、影移動、隠蔽、重力制御の4つを掛け合わせて使用することで発動する。
ポータルを唱えるとその場所に陣が引かれポータル同士の間を一瞬で移動できる。
ポータルは現状5つまで設置でき、移動する際は設置した場所を頭にイメージすると転送される仕組みの様だ。
「ふぅ、まあこんな所だな。けど自分で言うのも何だが最早最初の俺とは別物だな……それにまだこの先がある気がしてならない」
「とりあえず今日はもう暗くなってきたしそろそろ城に戻ろう」
蓮は複合スキルを試している間に自分のカスタマイズスキルの可能性に薄々気づき始めていた。
そして蓮は心の中でヘルンの言っていた言葉を考えていた。
『そのスキルの本質に……』と言っていたあの言葉を。
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