第26話「VSフィアーズギルド-開戦-」
「よしっ! スキルボードもこれで良いだろ。とりあえず今持ってるポイントは全部使ったし」
蓮はこの二日間で得たSBP45を全てボードの開放に使用した。とは言えポイントの使用量が多くて一つしか解放していないのだが……
解放した能力は【コンバート】。味方一人のステータスを10秒間全て自身に移すことができるスキルだ。その代わり対象とした味方のステータスはオール1になる。
「お兄ちゃんのステータス倍化と組み合わさるとそのスキル相当ヤバいね……」
「確かに……蓮のステータスって最大でどれだけ上がるのか怖くなってきたよ」
蓮はまだ試したことがないがレベルでいうととんでもなく高レベルの能力値になる。
だが、実際に使うことは11層では今のところなかった。そもそもモンスターに対してフルスキル使ったらオーバーキルどころの騒ぎじゃないからだ。
「まあ、コンバートに関してはリスクも高いから使わずに済むならありがたいけどな!」
蓮達は準備を終えると他のギルドと合流してタワー連合のギルドマスターから今回の作戦について説明を受けた。
「あ……あの」
「マスター。緊張なさらずに堂々と。」
……ん? 周りにいた大勢のホルダーが皆一斉に頭を傾げた。
(こいつがマスター? 華奢な体でモンスター倒す様には見えないぞ?)
「う、うん。えと、みなさんお集まり頂きありがとうございます。タワー連合のマスターを務めている
「本日は12階層を占拠しているフィアーズギルドの人達へ向けて攻撃を仕掛けたいと思い有志を募りました」
「最近のフィアーズギルドは階層独占のみならず、希少なスキル持ちのホルダーが他ギルドに所属していたら無差別に人を殺めていたりもしていました。恐らくは仲間にならないと判断され脅威となる前に始末していたんだと思います。」
この話は公に出ていなかったので初めて聞いた内容に驚きを隠せなかった人も多くいた。
蓮は薄々気付いていた。以前天井のカウントが急激に減っていたのを確認した時だ。
あの減り方は明らかにホルダー同士で争って亡くなった人がいると確信していた。ダンジョンであれだけの数が亡くなればもっと噂になっていたはずだからだ。
「それって俺らも戦ったら相手は殺しに来るということですよね……?」
ホルダーの一人が優里に向けて不安そうな声で質問した。
「もちろんその可能性もあると思います。ですので私達タワー連合のホルダーが最前線に立つつもりです」
他にも様々な質問が飛び交ったがそのどれもが自身の身の危険に関する質問ばかりだった。自分の事だけ考えてと思うかもしれないがこの状況ではそれが正常な思考なのだと思う。
◇
「――それでは内容についてですが、フィアーズは12階層の5つのレストエリアを拠点にしております。1つずつ対処していくと別地点からの援護が来ると思いますので5地点を同時に襲撃し無力化する作戦でいきます」
無力化という言葉を優里は強調していたのでこちらとしては敵だろうが死人を出したくないという強い思いが受け取れた。
その後、優里から5地点の配置が言い渡されて俺達は入り口から一番近いエリアの担当になった。
「最後になりますが、フィアーズにはそれぞれのエリアを受け持つリーダー格が配置されていると情報が入っています。こちらも私のギルドから精鋭を各エリアに配備しますが、十分気をつけて下さい」
(五人のリーダーというのが気になったが今とやかく考えても仕方ないな)
「それでは12階層に到着してからジャスト20分後に各々受け渡されたエリアの襲撃を開始して下さい」
蓮達は12階層に上がってきたが、当初危惧していた扉を開けたら待ち伏せされているなんて事にはならなくてホッとしていた。
「葵、百合、ティリア。なんか静か過ぎないか? というよりモンスターがいないなんてことあるか?」
「前言ってたみたいにテイムスキルで全てのモンスターを配下に置いてるとか……?」
「いや、確かテイムは対象に出来るのは一体までだったはずなんだ」
蓮はどこか胸騒ぎがしたが、時間の20分まで時間が無いので担当エリアに急いだ。
◇
――襲撃開始まで3分前
「俺はタワー連合から配属された
「3、2、1、今だっ!」
雪崩れ込むように様に様々なギルドのホルダー数十名がなだれ込む。
しかし、そこには人の気配は無かった……
「おい! 誰もいないぞ!? どうなってんだ?」
部屋に入った先頭は周りを見渡すが誰一人いない。
その時、足元に大きな影が目に入った。
「上だっ! 避けろ!!」
蓮の叫び声も届かず三分のニのホルダーが突如現れた巨体に押し潰されてしまった。
残ったのは後方に配置していた蓮達含めて3つのギルドのみになった。
『ひゃぁぁぁっ! 兄貴! 本当に来やがったぞ! こいつら! きゃはははははっ!』
モンスターと共に現れたのは二人の人物だった。
『あいつの言う通りだったな。あとお前はもう少し静かにしてろ。うるさい』
(なんだこいつら……外国人?)
『どうも皆さん。私はシュトルと言います。こちらは弟のテルンです』
「貴様達、俺達が来るのを知っていたのか!?」
暁人がそう尋ねると淡々とシュトルは答えた。
『はい。何故かは教えれませんが知っていましたよ。他のレストエリアの方達も同様です』
「くっ、予知スキルのホルダーでもいたのか? 早くこいつらを片付けて皆の所へ合流しないと」
『残念ながら貴方達はこの部屋から生きて帰れません。私達のマスターの命令なんでね』
シュトルがそう言い終えるとテルンの声が響いた。
『あいつら全員殺しちまぇぇぇぇっ!』
テルンの狂った様な叫び声で上方から降ってきた10メートルはあるだろう人型の巨人がこちらに向かって攻撃をしてきた。
蓮はストレージからスペクタレンズを取り出して使用した。モンスター名はアークゴーレム。
表示された情報によると13階層のユニークモンスターだった。
(なんで13階層のモンスターがここにいるんだ? しかもユニークモンスターって)
蓮達はアークゴーレムからの攻撃を避けて、すかさず戦闘態勢を取った。
先程の兄弟はゴーレムの後ろで立ったまま特に何もしてこない。
「お兄ちゃんならあんなモンスター一撃じゃない?」
百合の言う通り、ステータス倍化で能力強化すれば恐らく一撃で倒せる相手ではあるが後ろで何もしてこない二人が妙に気になった。
(けど、まあやるしかないか)
蓮は白剣と青白く光る剣を鞘から抜くと両方にATK +とAGI+を掛けた。
白剣の反対の手に持つ剣は以前のレベル上げの際に11階層で運良く見つけた小部屋の宝箱から入手したものだ。
蓮は改変効果を掛けるとゴーレムの胴体目掛けて思い切り横方向に二つの剣をスライドさせて真っ二つにした。
「蓮、さすがっ! 余裕だったね!」
「……あ、ああ」
(こうもあっさり倒せるものなのか?)
『くっ、くくくっ! やるじゃんやるじゃん、お前相当強いな! けどな、それじゃ倒せねーよ』
テルンが意味深な言葉を吐くと今両断したはずのゴーレムの体が元通りになっていく。
『はい、やり直しぃぃぃ!』
「なっ!? 確かに倒したはず……」
「もう一度、今度は残っている全員で攻撃だ!」
暁人の一声で残っていた全員がゴーレムに対して攻撃を仕掛ける。いくつもの爆音や斬撃の音が聞こえ、ゴーレムの周りは煙で覆われた。
「これで木っ端微塵だろ!」
『大変申し訳ありません。その攻撃全て効いておりません』
シュトルは丁寧な話し方でこちらを諭す様に語りかけてくる。
煙が収まるとそこには先程と変わらない状態のゴーレムがこちらを見ている。
「なんで……。一体どうなってるんだ?」
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