第27話「VSフィアーズギルド-奇襲-」
『もういいかぁ? こっちにも攻撃させろやぁー!』
テルンの号令で再びアークゴーレムが攻撃をしてきた。モンスターが攻撃をする起点となるのはテルンの呼びかけなのでテイムのスキルをテルンが使っているのは間違いない。
「ゴーレムは一度倒すと復帰までに少し時間がかかる。まずはゴーレムを倒してから後ろの奴らを倒すぞ!」
蓮も
「みんな! こっちへ誘導してくれ! 俺が攻撃する!」
蓮の呼びかけに応える様にゴーレムを誘導しながら蓮の射程まで敵を誘い込んだ。
「よし! これなら当たる! たぁぁぁっ!」
再びゴーレムが破壊されたのと同時にテルン目掛けて一斉に攻撃を仕掛けた。
「今だ! 後ろのテルンから狙え!」
数人の攻撃がテルンに当たりそうになった瞬間……テルンは悪魔の様な笑みでこちらを見ていた。
『出てこいっ! シャドウウォーカー!』
テルンが叫ぶと攻撃をしていた数人のホルダーの下に濃い影が現れ、黒い腕から放たれた斬撃と共に三人がやられた。
「くっ」
テルンの目の前には黒い影の様なモンスターがいた。目だけが怪しく赤く光っている。
『こいつはシャドウウォーカーって言ってな14階層から連れてきたんだ! 苦労したんだぜぇ!』
「二体目!? テイムは一体までじゃなかったのか!?」
『よく知ってるな! 本来なら1体までさ。本来ならな! 何故か知りたいよなぁ? んー? 教えねーけどよ!』
恐らくスキルレベルアップでテイムが強化されたのだろうが想定外だ。
状況は最悪だった。今の攻撃でこちらのメンバーは蓮達と暁人含めた連合のホルダー足して七人。
蓮は現状分かる範囲で頭の中を整理した。
(テルンがテイムするモンスターが2体、そして復活させる何かしらのスキルを持っているのは恐らくシュトル……モンスターは無視して二人をどうにかしないとだな)
「まずはシュトルからやる。暁人さんはテルンの意識を逸らして下さい。葵、百合は援護を頼む。ティリアは悪いがコンバートでステータスを俺に移させてもらっていいか?」
「はい! 大丈夫です! 後方に下がってますね」
「分かった! テルンは任せろ」
蓮は二本の剣を持ちそれぞれに改変効果を付与する。瞬身は反動を考慮して使えない為、ATKとAGIの組み合わせにして準備を終えた。
「――よし、それじゃ行くぞ。コンバート!」
蓮とティリアの間に白く光る糸が現れ二人を結ぶ。コンバートが完了すると一気に力が流れてくる感覚に襲われた。
(体に掛かる負荷がすごいな……これ……)
能力値に体が追いついていない状態だったが力を振り絞り最大限の速さでシュトルへ攻撃を仕掛けた。
「だぁぁぁっ!」
シュトルは顔色一つ変えずにこちらを見ていた。
蓮の攻撃がシュトルへ当たる寸前、アークゴーレムが割って入った。
(くっ、いや、コンバートでステータスも上がってる今ならゴーレムごとシュトルにも攻撃を通せるはずだ)
『ゴーレム!硬質化』
テルンが暁人達の攻撃を回避しながら叫んだのはスキルだった。以前の岩竜フェイルと同様にゴーレムの表面が岩で覆われた。
「くっ……なら……こっちも硬質化!」
――ガギィッ
咄嗟に蓮も硬質化を唱えたがゴーレムに攻撃が入るのが先となり刃はゴーレムの胴体の3分の1程入ったところで止まってしまった。
(まずい……!)
ゴーレムの腕が振り下ろされた瞬間、後方から空気の玉がいくつもゴーレムに飛んできた。
「おい! 早く目の前の奴を攻撃しろっ!」
ゴーレムはその衝撃に仰け反り、その隙に蓮は剣を引き抜くとシュトル目掛けて二発攻撃を入れた。
「がはっ、聞いてないですね。まだ援護がいるとは……」
シュルトは蓮の攻撃を受ける際に咄嗟に後ろに飛んで致命傷は避けたが、そのまま意識を失っていった。
「誰か知らないがありが……って五十嵐じゃないか! なんでお前がここに?」
「うるせーな! 今は目の前の奴に集中しろ!」
「分かった。一時休戦って事で今はこいつらから倒そう」
何故か五十嵐が助けに入ってくれたおかげでシュトルは無力化出来た。
しかし、シュトルを倒した事でテルンの雰囲気が変わった。
『何やってんだ……おめえらぁぁぁぁぁ!』
『もうどうなっても知らねぇからな!』
『スキル! キメラ!」
テルンが叫ぶと瀕死状態のアークゴーレムとシャドウウォーカーが1つに重なり1体のモンスターへと変身した。
蓮はすぐにスペクタレンズを使いモンスター情報を鑑定した。
【鑑定】
モンスター名:シャドウゴーレム
レベル:270
スキル:硬質化、影移動、分身
パッシブ:回避率上昇、修復(大)
備考:
アークゴーレムとシャドウウォーカーの融合体
「気をつけろ! 相手のレベルは270で影移動と分身を使ってくる。修復のパッシブも持っているみたいだから倒してもすぐまた蘇生される!」
影移動は最初現れた様に影のある場所を自由に移動することができるスキルである。
「テルンさえ倒せばテイムが解けるはずだ! まずはあいつから倒そう!」
蓮達は自分たちの影に気を配りながらテルンへ向けて攻撃を仕掛けた。
「てぁぁぁぁぁっ! だぁっ!」
「はぁっ!」
残っている全員の総攻撃がテルンを襲うがその瞬間シャドウゴーレムの姿が消えテルンの目の前に現れた。
「なっ、早い!」
全員の攻撃は突如現れたシャドウゴーレムが盾となり全て防がれてしまった。そして敵の反撃を喰らった数名は壁際まで吹き飛ばされた。
「葵、百合! 大丈夫か!?」
「うん、なんとか……だけど暫く動けそうにないかも」
葵と百合も攻撃をまともに受けてしまって二人の防御力では受け切れなかった。
「分かった! ポーション飲んで休んでてくれ」
まともに動けるのは蓮、五十嵐、暁人の三人だけとなってしまった。
「二人とも何とかテルンまで攻撃を通してくれ。俺のスキルは攻撃系ではないからとどめを刺す事が難しいんだ。その代わりあのデカブツは気にせず一直線にテルンに突っ込んでいってくれて構わない」
「分かりました……けど瞬身を使っても初撃で攻撃を弾かれたら硬直してしまうし……」
「おい、一ノ瀬! あいつの移動や攻撃より早くテルンって奴に到達すればいいんだろ?」
「ああ、けど、俺のスキルじゃ反動のせいでリスクが高すぎるんだ」
「俺があいつの目の前まで運んでやるから全力で俺の前を走れ」
「いや、でも……分かった。今回だけお前を信じるよ。それとお前のステータス少し借りるぞ」
「……? よく分からんが倒せるなら何でもいい!」
五十嵐は何を言っているか分からなかったみたいだが承諾した。
「それじゃ二人とも行くぞ!」
「おう、モンスターは任せろ」
「ちゃんと仕留めてこいよ!」
蓮はコンバートを五十嵐に使うと五十嵐の前を1歩目からトップスピードになる勢いで地面を蹴った。
「スキル ファストブロウ!」
目では追えない速さの空気の塊が蓮の背中に当たり何倍もの速さでテルン目掛けて蓮を加速させた。
(っ!なんだこれ!?五十嵐のスキルって確か身体強化じゃ?)
ファストブロウは身体強化Lv.3で覚える技であり武器未装備時のみ発動が可能である。拳を正拳突きの様に突き出すことによって圧縮した空気の弾を前方に凄まじい速さで打ち出す事が出来る。
先程アークゴーレムへ向けて放った空気の弾がこれだ。
蓮は五十嵐が調整した空気弾に押されて一気に加速した。
「これなら攻撃が来るより前に当てれる!」
暁人の言葉を信じてシャドウゴーレムはいないものとしてテルンの方向目掛けて二本の剣を突き出した。
『守れ! シャドウゴーレム!』
「無駄だ! スキル! 液状化!」
暁人がスキルを唱えるとゴーレムの上半身が透明な液体へと変化した。液状化は対象一体までを8秒間液化状態にする技だ。
「ゴーレムに構わず突っ込め!」
「うぉぉぉぉ!」
液状化した上体をすり抜けると蓮はテルンの目の前に出た。ゴーレムは影移動ですぐさまテルンを守ろうとするが液状化の効果は解けておらずそのまま蓮の攻撃はテルンに直撃した。
『がぁっ、くっそ! 兄貴……すまない』
テルンは最後にそう言い残すとピクリとも動かなくなった……
シャドウゴーレムもテイムが解けた反動からかその場で沈黙して動かない。
「やったぞ!」
蓮が喜びを口にする前に暁人が叫んだ。
しかし、蓮は喜びの中で人を殺めてしまった事に変わりはないという罪悪感に襲われていた。
(仕方が無かったとはいえ……人を……)
「蓮、ありがと! 大丈夫だよ! 蓮は間違ってない」
葵は心中を察する様にまだまともに動けない体を動かして蓮の前に立ち言葉をかけた。
その大丈夫がその時はどんな言葉よりも心に響いた。
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