第19話「ギルド設立」
――翌朝
ドンドンッ、ドンドンッ。
「おはよー! お兄ちゃん! 起きてるー?」
「んーん?」
蓮は扉の方からした大きな音で起きた。
「ああ、おはよ……」
まだ朝も早かったのか寝ぼけている。
「あ、今起きたでしょう! 早く準備しなさい!」
「はい! すいません!」
蓮は妹に急かされて大急ぎで準備をして下の階まで急いだ。
「遅ーい! お兄ちゃんが昨日、部屋戻る時に皆に伝えたいことがあるから朝早くに集まってくれって言ったんじゃない!」
「あ、そうだったな! ごめんごめん!」
「蓮、それで話って何なの?」
葵と百合は何を言い出すのかと不思議そうな表情でこちらを見ている。
「ああ、その事なんだけど、ギルドについてなんだ」
「どこかのギルドに入るって事?」
「ギルドには入らない。いや、正確には入るんだけど、俺たちでギルドを作ろうかなと思ってるんだ」
「なるほどー、やっぱりね」
「お兄ちゃんならそう言うと思ったよ」
葵と百合は顔を合わせて想定通りかのように笑ってこっちを見ている。
「私達は賛成だよ。……けど大事な事忘れてない?」
「人数だろ? 確か四人以上じゃないと設立出来ないってのは知ってるよ。だからさ、一人適任がいると思わないか?」
蓮はニヤリと笑い、葵と百合に視線を向けた。蓮が考えている事は当然、葵と百合も同じように考えていた。
三人は急いで朝食を食べ終えると街へ出た。ティリアが泊まっている宿屋の場所は昨日聞いておいたのですぐに向かった。
朝早くに出たかったのはティリアが街へ出てしまう前に一声掛けたかった為である。
◇
聞いていた宿屋に着くとティリアが丁度、宿屋の扉を開けて外へ出てきたところだった。
「ティリア! すれ違わなくて良かった! 今少し大丈夫か?」
「あ、蓮さん! それに葵さんと百合さんも! おはようございます! 大丈夫ですよ。これから街へ行こうかなと思っていたところでした」
「ティリアに相談というかお願いがあって……もし良かったら俺たちとギルドを作らないか?」
「え、でも私なんかが入っても戦力にならないですよ?」
「いや、ティリアのスキルは十分優秀だよ。戦闘スキルだけが全てじゃ無いからね。むしろこの状況では戦闘スキル以上に大切だと俺は思ってる。どうかな?」
「……私を必要としてくれているなら是非入らせて下さい! 他のギルドの人達よりよっぽど信用できますしね!」
「やったー! ティリアさんこれからよろしくね!」
「ありがとう! 早速このままギルド登録所へ行こうと思うんだけどいいかな?」
トントン拍子で話は進み、三人の合意と共に四人はギルド登録所へ向かった。
登録所の受付カウンターにいる女性へ声を掛けるとギルド設立についての説明を淡々と聞かされた。設立の条件や規則、ギルド所属によるメリットやデメリット。
長い話の途中何度か意識が飛びそうになったが女性三人から定期的に小突かれ何とか最後まで話を聞いた。
『――それでは内容問題無いようでしたらここにギルド名とギルドマスターの名前をお書き下さい。最後に所属するメンバー情報を記載頂ければ完了です。』
「んー、ギルド名か。考えてなかったなー。誰か良い案ないか?」
聞かれた三人も急に振られた為、頭を抱えている状況だった。
「それなら
「何か特別な意味でもあるの? 7が関係してたりとか?」
「単純に7人までのギルドにしたいって意味だよ。前もって言おうとは思ったんだけどこのギルドはメンバー上限を7人にしようと思うんだ」
「人数が多い事の利点もあるけどデメリットの方が俺は怖いと思ったんだ。メンバーの管理が行き届かないことによってギルドを保てなくなる時がきっと来る……」
「私は蓮さんの意見に賛成です。これまで何度か中規模以上のギルドから勧誘を受けましたけど、どこも統率が取れているようには見えなかったです」
蓮とティリアの話を聞いて葵と百合も賛成した。そしてギルド名は【7th】、ギルドマスターは蓮が受け持つ事に決まった。
『ありがとうございます。それではギルド登録します。メンバーはこちらの3名を加入で手続き致します』
暫くしてギルドの受付がやってくると蓮達の手の甲に向かい先程書いた登録用紙を押し付けた。すると四人の手の甲には≪7≫という文字が浮かび上がってきた。
『これで全ての手続きは完了です。手の甲にはギルドを表す文字が刻まれたはずです。こちらはギルド脱退と共に消えますのでご安心を。それでは』
「おお! カッコいい。よし、それじゃ改めて皆よろしくな!」
「でもギルド作っても実感がイマイチ湧かないよね」
「葵さんの言う通りだね……あ! さっきギルドの人が説明してたけどギルドホームを探すってのはどうかな?」
「ギルドホームか。確かに宿屋にずっと泊まるよりか良いかもな。ひとまずホームが立ち並んでる場所があったはずだからそこに行ってみよう」
◇◇
――ホームを決め始めてから二時間経過
「おいー、もうここで良いんじゃないかー?」
「だめっ! そーやって妥協してるからお兄ちゃんの部屋って素っ気ないんだよ!」
別に部屋の素っ気なさは関係ないだろと思いながらも言い返せずに遠い目で三人を見つめていた。
――更に一時間後
女性三人の厳選の甲斐あって価格の割には広くて使いやすそうなギルドホームを購入することが出来た。
「やっと決まった……」
蓮は何戦も敵と戦った後と同じ様な疲労を感じながら家の中にあった椅子に座り天井を眺めた。
やっと決定した俺たちのホームは上層へ続く扉から5分ほどの距離にある場所で10人ほどが余裕を持って過ごせる広さはある。
価格は銅貨500枚と良い値段がしたが前の素材集めの時に稼いだお金で何とかなった。
家が決まり、蓮以外の三人が家中を探索している中、蓮は外に出て異変に気づき始めていた。
「あれ? 人数ってあんなに少なかったっけ?」
天井部分に表示されている人数が1420となっていた。恐らく生存しているホルダーの数が表示されているその数は数日前から100人以上減っていたのだ。
「上層に入ったやつで大量にモンスターにやられたのか? にしてもあの人数は……」
この時は僅かな
◇
翌日、蓮達はホームの1階でギルドの方針含めて相談をしていた。朝から数時間に渡って話をした結果、目的とそれを達する為に何をすればいいのか大体決まりはした。
「それじゃ、最終的な目的はタワー最上階を目指すことって事で! あとはレベル上げながら装備を整えたいと思う」
「それならギルド登録所で
葵の提案で四人はギルド登録所へと向かいクエストを確認する事にした。
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