第13話「決着…」
蓮はロングソードとナイフを構え、ATK+と属性付与(火)、もう片方にはATK+とAGI+の改変効果を付与した。
両手に握る武器にエフェクトが掛かったのを一度確認すると蓮はボスに向かって走り始めた。
それと同時にスキルを呟いた。
「瞬身…」
スキルを使用した蓮はオークキングの目の前から姿を消し、背後へ回り込んだ。
「はぁっ!」
ATK +を2つ付与している蓮の攻撃力は201。レベルで言うと100付近と同等である。
この値を持ってしても攻撃を数発叩き込んだところでは相手は倒れないだろう。
(このスキル思った以上に体力を消耗するな…)
周りにいた他のホルダー達は唖然としていた。
先程まで黒崎が見せていた光景と全く同じ事が起きているから無理もない。
蓮は相手の攻撃がこちらに当たる寸前のところで瞬身を使い回避しながら次々と攻撃を浴びせていく。
「瞬身!」
「……瞬身!」
「はぁっ、はぁ、瞬身!」
蓮はスキルのデメリットである30秒硬直の事をもちろん知ってはいないが動きを止めたら間違いなくやられるというのを本能的に感じていた。
(省け!無駄な動きは全て省くんだっ!)
蓮の動きは誰から見ても完璧で無駄が無かった。
今さっきスキルを1度見ただけとは思えないくらい洗練された無駄のない動きだったのだ。
蓮が攻撃した箇所からは炎が上がり斬撃のダメージに加えて燃焼によるダメージも蓄積されていく。
オークキングも瞬身による攻撃に慣れてきたのか次第に反応するようになってきた時、蓮の攻撃のタイミングに合わせてオークキングも攻撃を仕掛けてきた。
(剣は引けない…避けれない…当たる……)
その時、後方からシュンッと風を切る音と共に相手の胴体目掛けて矢が飛んできた。
「お兄ちゃんはそのまま攻撃を続けてっ!」
葵も同様にオークキングが振り下ろした腕目掛けて強烈な攻撃を二発喰らわせて敵の攻撃を蓮から逸らせた。
「蓮の攻撃は止めさせない!」
(――百合、葵!ありがとう!)
「倒れろーーーーっ!!!!」
蓮の丁度12回目の攻撃が相手の首元を切り裂いた。
オークキングの動きは止まりそのまま前方に大きな音を立てて倒れ込んだ。
『…レハ…ハジマ……リニ……スギヌ』
何かボソッと聞こえたがはっきりとは聞こえなかった。
そして大きな黒い煙を巻き上げてオークキングは消滅した。
蓮は瞬身で空中に移動していたので攻撃を終えると四メートルくらいの高さから地面に落ちた。
落ちている最中、目の前には《エリアボス討伐報酬》と表示されたウィンドウが表示されていたが確認する余裕は無かった。
「っいって…!」
そのまま身体を起こそうとしても起き上がれない事が分かった時にスキルの反動についてようやく気付いた。
部屋全体は静寂に包まれたかと思うと皆一斉に喜びを口に出した。
「やったぞ! 倒した!」
「これで上の階層に行ける!」
「お兄ちゃん!」
「蓮!!」
「ぐはっ! こっちはスキル連発して体力がもうすっからかんなんだ」
蓮は硬直状態が解除されると飛び込んできた葵と百合の強烈なハグに吹き飛ばされた。
「あ、ごめん!」
「けどそんな楽観的にも考えれないな。黒崎さん含め何人かの人は亡くなってしまったんだから」
「……そうだよね。ごめん」
「いや、葵が悪いわけじゃないから謝るなよ。今は亡くなった人達のためにも前に進まなきゃ」
(そういえばさっき報酬とか書いてあったけど……)
蓮はステータス画面を開くと右上にドロップアイテム確認というアイコンが表示されていた。
アイコンをタップすると目の前には純白に輝く剣が現れた。
《白剣[零]》
・純白に輝く業物
・低確率で対象を一瞬眠らせる
・ATK+36
攻撃補正がロングソードに比べたら天と地ほどの差であり、武器に効果付与がついてる事自体珍しい。
(これは能力も申し分ないし…何よりカッコいい!)
声を押し殺して心の中で叫んだ。モンスターからのドロップ自体珍しいと聞いていたのでかなりついている。
そして余韻に浸りながらも人々は徐々に動き出した。
蓮を含めて生存した60人余りはその中に負傷者もいたこともあり一部の人は一度タワーの外へ出ようと部屋を引き返そうとしている。
「あれ? 開かない」
「エスプカードも相変わらず使えないぞ」
初めこそ時間が経てば開くだろうと思っていたが、そこから10分程経っても何も変わらない。
タワーから出られないという事実に気付いてしまった人々は混乱していた。
するとオークキングが出る前に聞いた声と同じ声がまた聞こえてきた。
『タワーは封鎖した。これより帰還も出来なければ下の階層へと戻ることも出来ぬ。』
『真実を知りたければ、そしてタワーの外へ出たければ上へと進め』
――人々はその声を聞くとパニックになった。
「怪我人もいるんだぞ! どうすればいいんだ!」
「もうやだ! 帰りたい!」
皆がパニックになるのも当然だ。つい数分前まで人が次々と死ぬ姿を見てようやく終わった。帰れる。と思っていたのだから。
恐らく他のタワーでも同様の事が起きているだろう。
そう考えると今回の10階層へ挑むための条件は全て声の主の狙いで、どんな理由かは分からないが多くの人をタワー内部に閉じ込めたかったと考えられる。
一人の男が口を開いた。
「ひとまず、怪我が酷くない人だけでも上の階層に登るのはどうだろう?」
それに賛同した数十名は部屋の奥にある扉を開け階段を上がって行った。
蓮達も幸い大きな怪我は無かったのでその集団に着いて上へと続く階段へ足を進めた。
そして階段を上へと登り扉を開けた人達から一様に驚きの声が聞こえてきた。
「なんだ…? ここは?」
蓮達もようやく扉をくぐると太陽の様な光に照らされて一瞬目を閉じた。
そしてゆっくり目を開けていくと目の前には信じられない光景が広がっていた。
「これって……街?」
そこにはゲームなどでよく見る西洋風の街が広がっていた……
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