シェリル
そうですか、あの子はそんなことを言っていたのですか。可哀想なアデレード……。
尼僧長様はもちろん分かっていらっしゃると思いますけれど、アデレードには俗世に男友達などおりはしませんわ。みんな、嘘だと承知の上で話を合わせるくらいのことはしますけれど。
昨夜写真を公開したのはアデレードではありませんわ。……何故そんなことを言い切れるかって? それはもちろん、それをやったのはこのわたくしだからです。
アデレードが、この孤島の暮らしの寂しさを癒やすために、自分のふしだらな写真を撮って気の慰めにしていたというのは本当です。ただ、彼女はそれを公開するような度胸を持ってはいませんでした。それは、わたくしはよく知っております。だってアデレードの写真を撮っていたのはこのわたくしなのですから。
ええ、最初の一回目から昨夜に至るまで、全てそうです。不良娘を気取っているだけの箱入りアデレードにはそもそも、夜中に一人で礼拝堂に忍び込むだけの度胸もありはしませんよ。
そのへん、あたしは違います。この島で尼僧長様だけが御存知の通り、あたしは本当のところかつて都の裏道で娼婦をやっていた悪い女ですからね。
いえ、改悛して修道女をやっているのは本心からでございます。ですがあたしのような者とはまったく違う事情からここに来て、孤独な心を持て余している御令嬢のお気持ちというのも、あたしにはわからないでもないのでして。
……ああ、そうでした。なぜ昨夜、あの写真を公開したのか、という話でしたね。実はあの写真はアデレードではありません。あの一枚だけは、わたくしです。わたくしが脱いで、アデレードがそれを撮ったものです。証拠? 左の脇腹に小さなほくろがあるのが、よーく画像を確認すれば分かるはずです。
なんでそんなことをしたかって?
このあいだ、修道会に異端審問官の方がいらっしゃったでしょう。
えーと……アデレードのやつがですね。どうしても、あの方にもう一度お目にかかりたいと。
なんでもいいから信仰問題にかかわる事件を一つ起こせば、もう一度あの方が見えられるだろうから、なんとかしてくれって泣きつかれたんですよ。
だから、あたしがひと肌脱いだっていうわけです。ええ、文字通りにね。
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