第19話 魔法とは

「おなかすいたぁ~、おねえちゃんあれかって~」

「わかったから、走らないの」


 小さな男の子がはしゃぎそれを少女が窘めている。どこにでもあるような光景に人々は温かい視線を送る。


 俺は今、普通の男の子を演じていた。そして楽しそうに追いかけてくる姉役のハッツェン。

 お忍びはコソコソしないほうがいいと思う、コソコソしている方が怪しい。現に俺たちは今完全に周囲の雰囲気に溶け込んでいる。


「おうっ坊主、随分とかわいいお姉ちゃん連れてんな。守ってやれよ。―――ほれ、サービスだ。」


「おいちゃんありがとう」


 牛串?のようなものを3本貰う。


「気をつけな!」


 随分気前のいいおっちゃんだ。

 はむっ、もぐもぐもぐ


「普通にうまいな」


 予想以上に美味しかったもんで、つい口に出る。


 「~~~♪」


 ハッツェン随分と機嫌がいいな・・・。


(また今度来よう)


 心の中でそう決め、牛串片手に散歩する。ちなみに残り2本はすでに彼女のおなかの中。いつの間に食べたのだろう・・・。


探索サーチ


 魔力を地面に落とし、波紋が広がっていくのを想像する。落としたそれは徐々に広がっていき人の気配を教えてくれる。

 これはばあちゃんの弟子で今はうちに雇われてる魔法士ブレンに教えてもらった魔法である。


 まず魔法とは何か―――


 ファンタジーのド定番のあれだ。

 この世界では「魔力を基とした奇跡の御業」と定義されている。うん、そのまんま。

 そして、魔法には属性があり火属性・水属性・風属性・土属性・光属性・闇属性・無属性の7種類が基本属性と呼ばれている。


 他にも生活魔法・複合属性魔法・独自魔法オリジナルなどがある。

例えばブレンが得意とする魔法は火属性+風属性から成る火炎魔法。

イゾルダ天才ドジっ子が得意とする魔法は水属性+火属性から成る氷魔法。

 これらはいずれも複属性魔法の中の2種属性魔法と呼ばれるものに区分されている。

 3種属性魔法、それ以上もあると言われているが滅多にいない。

また、固有魔法オリジナルを使う者は一握りで、適正の儀の時に判明するらしい。時空魔法や傀儡魔法、召喚魔法、使役魔法などが該当する。


 次に位階についてだ。


 適正の儀で現れる数値と同じで、簡単な方から第1位階といきMAX第10位階までそれぞれの属性に存在する。

 今俺が使った探索サーチは無属性の第1位階魔法―――つまり、無属性魔法の中でも初歩中の初歩の一つであるということだ。


 そして最後に、魔士と魔士の違いだ。


 これは偏に国への貢献度で名乗り方が変わる。魔法士は国中にある高等魔法学院を卒業した者ならば誰でも名乗ることができるのに対して魔導士はその働きが国から認められ、国王陛下直々に任命された魔法士しか名乗ることを許されない。

 今この国にいる魔導士の数は全部で16人。

 うち十人は宮廷魔導士と呼ばれる者たちで残りは元宮廷魔導士や引退した高名な冒険者たちだ。ここに我らがばあちゃんフリーダが元宮廷魔導士第1席として名を連ねている。

 やっぱりばあちゃん、ものすごい人だった。


 ここまで、きちんとした地位を国が用意しているのだから魔法が便利じゃないわけがない。現に俺が使っている魔法、探索サーチは第1位階だというのに超役に立っている。

 さっきもこれのおかげでハッツェンを見て発情した冒険者崩れの奴らを撒いた。


 ちなみに、俺は基本属性7種の第1位階魔法を使える。基本7種使える者は珍しい方ではあるらしいが、まだ第1位階しか使えないので何とも言えない。

「今は基礎が大事です」ということで来年家庭教師が来るまでは第1位階を磨いた方がいいとブレン真面目君に言われ、反復練習をしているところだ。イゾルダ天才は「次に行きましょうよ~」と言っていたが俺はブレンを信じる。

 天才の言うことを聞いて身を滅ぼしたくないからな。


 こんなことを考えながらも探索サーチを使って周囲を警戒しつつ、友達探しを続ける。しかし、一向にお友達候補を見つけることができない。


(まあそうだよな、面白いやつがホイホイいたら今頃俺にも友達の一人や二人できているよ)


 ハッツェンと手をつなぎながら自由区を歩き回る。


 にぎにぎ、にぎにぎ手やわらかいなぁ・・・。

 美少女と合法的に手をつなげる時間を楽しむ。

 にぎにぎ、にぎにぎ・・・フヘッ


 半日経っても、探し人お友達は見つからない。今日はもう帰ろう、そう言いかけた時だった。







「だから俺たちじゃねえって―――!!」


 路地裏から子供の声が聞こえる。


 すぐ抱きかかえてもらい、現場に急行する。


 (匂うぞ、ハプニング友達のにおいがする!)

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