第17話 リベンジ戦とマリアの運命を掛けた戦い
目を開けると、とても気まずい状況になっていた。
神父の声が聞こえたが今はそれどころじゃない。
これじゃ俺が悪人……だよな。
いや前回も諸事情で悪を演じたけどさ……。
……えっ……周囲の目がマジで痛いんだけど。
そんな事を思いながらも目の前にいるマリアとカルロスを見る。マリアの花嫁衣裳に本当に結婚するのだなと思ってしまった。俺がイメージしていた状況と随分と状況が違いすぎてどうしていいか分からない。てっきり決闘場的な所で戦うのかと思っていたがまさか結婚式場に飛ばされたあげく誓いのキスをする直前に此処に飛ばされるとは思いにもよらなかった。何故かさっきまで隣に居たユリアはこちらに向かって走って来たマリアと抱き合っているし周囲の重たい視線とカルロスの殺意はこちらに集まってるしでと何とも気まずい。
本来なら新郎新婦が歩く通路に立つ蓮心をカルロスが睨み付ける。
まぁ無理もないだろう。後、数秒で誓いのキスまで出来たのだから。
それを阻止されたのだ、敵ながらカルロスが可哀想だと同情する。
「ユリア来てくれたんだ」
「うん。マリア大丈夫だった?」
「うん。ユリアありがとう」
目から涙を零し安堵する二人の会話が耳から入ってくる。
とりあえず、この状況は精神的に良くないのでため息を吐いて少しでも気持ちを楽にする。
「ってか蓮心助けに来るの遅い! 何でもっと早く来てくれないの?」
突然マリアがこちらに顔を向け怒ってくる。俺とユリアに対する扱いが違う上にそれは理不尽だと思った。そもそもマリアが迎えに来られなかった理由は分かったがそれならもっと別の方法を考えて欲しかった。もしくは事前に伝えて置いて欲しかった。こちらにも心の準備と言う物がある。
「…………」
冷たい視線をマリアに向ける。
すると文句があるの? と言いたげな視線を逆に向けられた。
「いい? 女の子を助けたいならもっと時間に余裕を持って助けに来なさい! 私、見捨てられたかと思って辛かったんだから!」
怒られた。
その時、マリアの顔から沢山の涙が溢れだす。
本当に怖くて不安だったのだろう。
それだけ精神的に追い詰められていたんだと思う。
たまには美人な女の子の我が儘を聞くのも悪くない。
だから――。
「ごめん」
素直に謝った。
「ばかぁ。本当に怖かったんだから……」
ユリアの顔を見る。
「マリアを頼む」
「わかった。気を付けて」
安堵し泣くマリアをユリアが抱きしめる。
そして、二人の願いを叶える為、カルロスの方に向かって歩き出す。
「何故、お前が此処にいる?」
カルロスが怒りを露わにして問いかけて来た。
大きく息を吸い、心を落ちつかせる。
「何故ってそりゃ呼ばれたからだよ」
「誰に?」
「マリアだよ」
その言葉に、カルロスだけでなく周囲にいた人々が反応する。
こちらのペースに持っていくには今しかないと判断する。
「まだ結婚は成立していない。俺と勝負しろ。ローズ街最強の剣士カルロス」
「本気か? ここではお前の隕石は使えない。それで戦えばお前に訪れるのは必敗の二文字。それに今回は誰も助けてはくれないぞ。それでもするのか?」
「あぁ。当然だ!」
カルロスが剣を装備する。
「いいだろう。マリアを掛けて決闘か。受けてやる」
単細胞は上手くコントロールすれば簡単に相手の挑発に乗ってくれる。と言っても単純な頭脳戦はここまでになりそうだ。カルロスが決闘を拒めば少々問題だったが上手く挑発に乗ってくれたので助かった。
「それはさておきマリアこれはどうゆう事だ?」
カルロスの視線がマリアに向けられる。
「誰と結婚するかぐらい自分で決めてもいいじゃない!」
「まさかこんなランクEの下位剣士と結婚したいとでも言うのか?」
下位は認めるが正式には魔法剣士だと心の中でツッコミを入れる。
「そうよ!」
「なぁ…んだと?」
カルロスが驚く。
大丈夫、驚いているのはお前だけじゃない。
まさか異世界生活三日目にして結婚するとは聞いてない……。
さり気なくユリアを見ると額に手を当てていた。
もしかして、あの女神様は後先考えずに言っちゃうタイプなのかもしれない。
それなら良かった。いや良くはないか……。
「正気か? この男より俺の方が強い。名誉や実績だってある。なのに何故よりにもよってこいつなんだ?」
「簡単よ。蓮心は優しくて頼りになる。何より貴方にない物を持っている。初めて会った女の子に手を差し伸べてくれる強さがある」
単純に困っている人間に手を差し伸べると手を差し伸べなければ隕石によって命を落とす状況だったので手を差し伸べたは違う気がするが。とりあえず黙ってマリアとカルロスの会話を聞くことにする。
「いいだろう。そこまで言うなら今からその男が死ぬところをよく見ておけ」
「いいわよ。勝った方と結婚する。それなら文句ないわね?」
「あぁ。構わない」
「私の仲間を殺したお前だけは絶対に許されない!」
カルロスが納得したのかこちらに向かって歩いてくる。
周囲にいる者はいつの間にか全員が壁の方に避難していた。
一部の者はマリアとカルロスが話している内に逃げだすように式場を出ていったみたいだ。
「ルールは簡単。どちらかが降参するか、死ぬかまで続けるサドンデス方式でいく。何か問題はあるか?」
「ちょっと本当に命を掛けるつもり?」
マリアが心配そうに尋ねる。
「そうだ。好きな女の為に命すら掛けられない腰抜けにマリアは渡さん」
「いいだろう」
「ちょっと待って、それだと……蓮心が死んじゃうかも……しれない」
段々弱々しくなるマリアの言葉に心配してくれているのだなと感じた。
「大丈夫。俺は死なない」
ユリアがマリアを安心させるように優しい声で語りかける。
だって死んだらユリアのたわわを触れないじゃないか!
と、いう心の本音はソッと自分の中だけにとどめておく。
「大丈夫よ。今の蓮心はあの時より強くなっているから」
「えっ?」
「蓮心はマリアを助ける為に頑張った。だから蓮心を信じて」
「でもまだあれから一日しか経ってない……」
「その一日が蓮心を強くしたの。だから信じてあげて?」
「ユリアがそう言うなら信じる」
マリアとユリアがこちらを見る。
そんな二人の顔を見ていよいよ最後の役目を果たす時が来たのだと実感する。
こちらも魔法剣を装備する。
視界にウインドウが出現し、
『決闘:カルロスからの挑戦状 対戦しますか? YES/NO』
と、合った。
そのままYESを選択する。
カルロスのHPゲージとMPゲージが名前の下に出現する。制限時間は無制限。
蓮心のリベンジ戦そしてマリアの運命を掛けた最後の戦いが始まった。
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