第7話 ウエイトレスと本題
「はい」
勿論、俺は変わらずだ。何故かって?
それは何かを教えて貰う者だと言う自覚があるからだ。
それともう一つ理由がある。
ユリアに対する俺の印象をよくして仲良くなりたいからだ。
男ならばこの気持ち分かってくれると思う。
お姉さん的存在で清楚で綺麗、更には女性らしく出るところが出て引っ込むところは引っ込んでの人とお近づきになれるかもしれないんだ!
仲良くなりたいとは思うのはごく自然な事だろう。
何より今は部屋に二人きり。
しかも男と女!
上手くいけばこの後ムフフな展開が待っているかもしれないじゃないか!!!
そう信じて何が悪い?
つまりはそうゆうことである!
話しは続いた。
マリアは元々四人パーティーで活動していたがある日パーティーを強化する為にカルロスを転生し召喚した所、最初は何も問題がなく皆とも仲良くしていた。しかし、ある日マリアとユリアが恋バナをしているのを偶然にも聞いてしまったカルロスがそれをきっかけに暴走し急にマリアに求婚を申し込んできたらしい。ユリアと他のパーティーメンバーは何とかカルロスを止めようとしたが失敗に終わった。そこでマリアはカルロスに対抗する手段としてもう一人転生者もしくは転移者を探したらしい。その時、この世界に転移出来る素質があり尚且つカルロスに対抗できそうな人物を探していたところ偶然にも俺が選ばれたのだと知った。どうやら俺はカルロスに対抗出来るだけの素質があるらしい。っと言っても「攻撃最強、防御最弱」の魔法剣士だが。
元居た世界に戻る方法は残念ながらわからなかった。なので元居た世界に戻れるようになるまではなるようにしていく。
「それで、マリアが俺に対して何も教えてくれなかったのには理由があったんですか?」
「うん。今マリアはカルロスに基本的にずっと監視されているの。何とかカルロスの目を盗み蓮心をこの世界に転移させて必要な事だけを伝えるのが精一杯だったんだと思う」
我が儘女神ではなかったのか。
ならしょうがないか……一部は。
「どうしてそう思うんですか?」
「毎日一人夜になると泣いてるからよ。自分のせいでパーティー解散になってカルロスとの結婚。何一つ望んでいない未来を受け入れるしか今のあの子には出来ない。それに何か勘違いしているみたいだけど蓮心から距離を取ったのは会ったばかりの貴方を信じたからだと思う」
「えっ?」
「元居た世界ではお人好しな蓮心は困っている人には何だかんだ手を差し伸べていたわよね?」
何で元居た世界での俺の事を知っているのだろう。
「はい」
「マリアは蓮心のそんな一面を見て、「きっと蓮心なら私を助けてくれる」と言っていた。マリアはEX(エクストラ)固有スキルの一つを使って他の世界の人間の情報をステータスとして見る事が出来る。後は簡易的な性格とかも可能よ」
成程。これで何故元居た世界での事をマリアとユリアが知っていたのかが分かった。ユリアはきっとマリアから聞いたのだろう。話しを聞いている限りではこの二人仲が良いように思えた。
それにしてもEX(エクストラ)固有スキルは俺も持っているがマリアも持っていたのか。
「でも転移させても俺が本当にマリアを助けるかは分かりませんよね?」
「そうね。本当は寂しがり屋で毎日夜な夜な泣き助けを求めて来た女の子と知っても同じ事が言える? 蓮心に冷たくしたのはそうするしかなかったから。本当は今すぐにでも助けてって言いたかったけど言えなかった。何とか自身の心の声を隠しカルロスとの結婚ギリギリまでの時間を作りこの世界に慣れて貰おうとした。その意味を知っても同じ事が言える?」
あのバカ。そうゆうことなら最初から助けてじゃなくて事情を説明しろよ。会った事がない俺に縋るまで追い詰められているなら初めからそう言えよ。俺はどうしようもないバカ野郎だ。マリアの事情を何一つ考えずに自身の事だけしか考えていなかった。助けを求めている者が助けて貰おうとしている奴に気を回すって……。何なら強引にでもカルロスの所に俺を連れていけば良かったじゃねぇか。何でしなかったんだよ。蓮心は自身に対してどうしようもない怒りを覚えた。境遇は違えど蓮心は知っている。今のマリアと境遇は違えど会った事も顔も知らない人に縋るまで追い詰められた者の気持ちを知っていた。昔、妹が交通事故で死んだ。その時、蓮心は初めて会ったばかりの医者に妹を助けてくれてと頭を下げて頼みこんだ。結果として妹は他界した。原因は飲酒運転したドライバーの大型トラックが信号待ちをしていた妹に向かって突っ込んできた為だった。
「何で俺だったんですか? 他の誰か、この世界にいる誰かに頼んだ方が早かったんじゃないですか。あいつは女神でこの世界では皆の憧れの存在ですよね。そんなあいつなら皆が助けてくれそうな気がしますが」
悔しかった。
ここまで追い込まれる前に助けてやれなかった事が。物理的にとかそう言った問題はなしにして。それに苦しんでいるマリアに対して冷たくし過ぎたと後悔していた。冗談抜きでやはり何処か妹とマリアは似ていた。そう思うとマリアを助けてやりたいと思えた。蓮心が動くにはそれだけの理由で充分だった。
「したわ。でも皆カルロスに負けた。最初はローズ街にいる腕自慢がマリアを救おうとした。でもカルロスはそんな猛者達より強かった。結果として今では皆がカルロスに近づこうとすらしない。偉そうな事を言っている私もカルロスに負けたわ」
真っ直ぐとユリアの目を見て問う。
「教えてください。カルロスについて知っている事全部」
「いいの? これを伝えればもう後には引けなくなるわ」
「構いません。教えてください」
ユリアが何かを納得したような表情をする。
「なら、ローズ街にある大聖堂に行きなさい。そこにカルロスに関わる全てがある。ただ蓮心のランクじゃ閲覧資料に制限がある。私の権限を使いなさい」
視界に新しくウインドウが出現する。
『時間制限権限(三十時間):ユリアの権限を行使しますか? YES/NO』
YESを選択する。
『只今より三十時間、ローズ大聖堂の中でユリアの権限を使えるようになりました』
新しいウインドウに表示された文字とは別に緊急任務開始までの時間の下に更にユリアの権限を使える残り時間が追加された。
「ありがとうございます」
「お礼を言う方のはこっち。ありがとう。私の親友マリアを助けて」
「はい」
「最後に伝えておくわ。「怖かったら逃げていい」マリアからの伝言よ」
人の心配をする前に自分の心配でもしてろマリア。
俺には必殺隕石落としがある。
最悪全てなかったことにすれば全て……解決するからよ!
その後のことはマリア自身でなんとかしてもらうことになりそうだけど。
「そうですか」
「なら、私は仕事がまだ残ってるからこれで失礼するわ。もし何か聞きたいことがあれば言って。時間を作るわ。それと今度から私の事はユリアって呼んで。さん付けはしないでいいから」
「ありがとうございます」
ユリアが椅子から立ち上がり部屋を出ていく。その背中をただ黙って見送った。
今日は動くにしては時間的にも厳しく、肉体的にも精神的にも疲れたのでベッドで眠る事にした。
そう言えば話し戻してユリアってなにカップなんだろう……。
少なくとも鷲掴みはできそうだったな……あれ。
そんなことを思いながら深い眠りへとついた。
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