第6話 ウエイトレスと前置き


 部屋に戻り窓から入ってくる夜風に身を晒していると部屋の扉がノックされる。時間的にもさっきのウエイトレスだろうと思い返事をする。


「どうぞ~」


 扉が音を鳴らし開かれる。


「失礼します」


 扉を開け入って来た人物を確認すると予想通りウエイトレスだった。

 ウエイトレスは蓮心に一礼し、部屋の隅にある椅子を手に取りベッドに腰をかけた蓮心の正面に座って来た。


「今お時間宜しいですか?」


 まさかの正面。ここは普通、斜め前とかではないのだろうか。それ以前によく見ると服が邪魔だが胸が大きい気がする。一回意識してしまうとダメと分かっていながら、男として視線がそっちに誘導されてしまう。これが悲しい男の性。

 咳払いをして視線をユリアの胸から顔に戻す。


「はい」


 この状況でよろしくないと言う事は可能なのか?

 と、ふとっ疑問に思ったが社交辞令だと正しく認識し頷く。


「まずは自己紹介をしておきます。私の名前はユリア。昔はマリアとパーティーを組んでいましたが怪我により戦線を離れ今はウエイトレスとして隠居生活をしております。これでも一昔前は名の知れた剣士でした。今も一日十分程度なら戦えますがそれ以上は怪我の影響で無理です」


 そう言ってマリアが自分のステータスを蓮心に見せる。

 視界に出現したウインドウを見て驚いた。


「職業:剣士」「ランク:Aランク」「特殊攻撃、通常攻撃、魔力、スピード、特殊防御、通常防御:Aランク」「所属:ソロ」


 全てAランクであるユリアはまるで理想的なパラメータだなとつい感心してしまった。


「凄い……」


 すると、新しくウインドウが出現する。


『剣士:ユリアからフレンドに誘われています』


 と書いておりその下に『承認/非承認』と選択肢が表示されていた。


 この状況でのフレンド申請となると、もはや『承認』しか選択肢が合ってない気がするので『承認』する。フレンドの欄にユリアの名前が追加された。


「ありがとうございます。この世界については?」


「全く……」


「では、まずはこの世界について説明してから本題に入りましょう」


 ユリアがこの世界について語り出した。

 そして、ユリアの話しを聞いていく中で色々と分かった。


 この世界ではステータスの優越を現した階級は六段階、Sランクを一番上としてEランクが一番下。

 一般的にはBランクあれば周りから見れば凄いと評価される仕組みらしい。また最高ランクであるSランクは転生者や転移者は偶然的に獲得でき、この世界の住人ではステータスにSランクを持つ者はかなり少ない事が分かった。何でもゲームでよくあるガチャみたいに転生される時に数万~数十万分の一を見事手にした者だけが持てるらしい。その場合ステータスがSランク一つと後はランダムで決まるとこの世界では噂されているみたいだ。ちなみに転生・転移の時は最高Aランクまでなら転生・転移魔法を使った者の実力に応じてある程度なら転生者もしくは転移者のステータスを決められる。すなわち俺はその奇跡的な確率を見事に引いたという事だ。ちなみにEランクはSランク同様に転生される時に数万~数十万分の一で抽選されている。


 つまり…………、

 …………認めたくはないが、

 どうやら認めるしかないようだ。


 蓮心はSランクとEランクを全て引いた強運と悪運の両方を持ったイレギュラー転移者と言う事実である。これはマリアが悪いのではなく、下手したら数億分の一以上の確立を引いた自分が悪いと気付いてしまった。


 ガビーン!!!


 そんな凄い確率を手にしても何故か嬉しい気持ちにはなれなかったが別に不幸かと言えばそうとも言えない複雑な気持ちについため息がでた。


 良かった……マリアに散々文句を言う前に知れて。

 よくよく思い出したら、少し言ってしまったがまだ少しで本当に良かった。


 そしてこの事実をユリアに伝えるとマリアはこの事実を知っており、多分説明が面倒だったので適当に誤魔化したのだろうとユリアには言われた。


(あの野郎……知らない振りをしたのか……)


 ランクは基本的にはステータスの平均値を取るらしいがEランクが一つでもあると問答無用でEランクになるらしい。Eランクはどうしようもないくらい最弱だと言われた時はユリアの柔らかそうな胸にダイブし泣きたくなったが我慢した。ここで不祥事を起こす……正直にいうとそんな勇気がなかった。


 他にわかった事はEX(エクストラ)スキルは特別な条件で入手でき、固有スキルは基本的にその人だけのスキル。EX(エクストラ)固有スキルはその二つのスキル入手条件をクリアすると手に入ることだ。他にもこの世界の在り方などについても知れた。とりあえず最低限の事はこれで何とかわかった。


「ここまでで質問は?」


 少しユリアの口調が何処かよそよそしい感じからフレンドリーになった気がした。


「ありません」


「なら本題に入ってもいいかしら?」


 えっ……まだ本題じゃなかったの?

 と、は言えないのでコクりと頷く。

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