第4話 到着
『所属:基本的にはパーティーの名前もしくはソロプレイヤーの場合ソロとなる。ただし、異世界転生、転移した者は何処かに所属するまで無となる。ソロを選択する場合は緊急任務を一つ以上クリアする必要がある』
成程。それで無となっているのか。
でも、何で無となっている人間をそんなに警戒するんだ? この言い回しだと最低でも通常任務と緊急任務の二種類はありそうだけど。
この世界に蓮心以外にも転生者、転移者がいても不思議ではなかった。
マリアの言葉を聞く限りでは異世界転生の成功率が十%確かに数字で見れば成功確率は低いかもしれないが他にいても可笑しくはない気がする……。
「さっき、元居た世界からこっちの世界に異世界転移させられたからです」
「誰にされた?」
我が儘女神と言ったら流石に怒られるか。少なくともマリアは女神でこの世界では限られた者しかなれない最高位の職業の一つを任されている。
「女神マリアです」
「嘘を付くな!」
どうなってるんだ?
もしかしてマリアによって異世界から来たことを信じて貰えていないのか。だとしたら所属が無の説明が出来ない。
さてどうする?
嘘は言っていないが……。
「いや……本当ですけど……」
「何度も言わせるな。嘘を付くなと言っている!」
正直に言った結果、嘘を付くなと二回も言われた。それなら逆に何て答えて欲しかったのかと聞きたくなった。勿論空気を全く読めないわけではないので流石に聞かないが。
「マリア様は三ヶ月前、異世界より将来の結婚相手であるカルロス様を転生された」
『ん? カルロスが昔からの許婚とかではなく俺と同じ異世界の者?』
「そしてマリア様はカルロス様を心から愛されている。そんなマリア様が新たに異世界から、しかもよりによって人間の男を呼ぶ訳がなかろう! マリア様を愚弄する愚か者はここで殺す! 今すぐ謝りここを離れるか死ぬか選べ!」
蓮心の心の中は理不尽で一杯だった。そして生前?と言うのは正しいのかわからないが元居た世界では自慢ではないが頭の回転だけは周りと比べてはるかに良かった。マリアが結婚当日まで蓮心と距離を置いた理由そしてこの世界に呼んだ理由が何となくだったが分かった気がした。
『あの我が儘女神さてはカルロスを転生しておきながら愛に溺れ暴走したカルロスを止める事が出来なくなったから俺を呼んだのか……確かに見た目は美人だしな。そして結婚相手となったカルロスをこの兵士達を見る限りだが周囲は認めている。だから外部の力を欲したのか』
蓮心の頭の中で一つの仮説が立った。
理不尽な怒りは逃げる場所を失い蓮心の中で暴れる。
『EX(エクストラ)スキル獲得:理不尽な怒り』
『スキル発動:理不尽な怒り使用しますか? YES/NO』
勿論YE……じゃない。危ない危ない。ここでスキルを使えば間違いなく今より状況が悪くなるだろう。何とか怒りを鎮めてここは大人の対応をする。何とかギリギリの所で耐えた。ヘルプを見てパーティーメンバーを呼ぶ方法はないかを急いで探す。これだけ便利な世界なんだ、きっと一つぐらいあるだろう。期待を込めて沢山あるヘルプを最速でスクロールする。
「うん。ないのか……使えない」
心の声がつい漏れてしまった。
「お前今何て言った?」
「いえ、気にしないで下さい」
すると、戦闘区域突入と言う画面が表示される。
結局こうなるのかと思い慌ててメニューの中にあるアイテムBOXから緑のドラゴンを倒した時に手に入れた剣を装備する。思っていたよりとても軽くその気になれば片手でも振れそうな重量だった。
しかし戦い方が分からないのでとりあえず剣を使い、身を護る事だけに集中する。きっと周りから見たら動きがぎこちないのだろうが今はそれが精一杯だった。それに敵は兵士の二人だけで偉そうな奴は高みの見物をしていた。
時には、地を這い、転がりと、とてもみっともなかったが死ぬよりはマシだった。
「くそ……どうする……このままじゃ……」
その時、兵士の剣が蓮心の左腕を掠める。
激痛と同時にHPゲージの四割がなくなる。
えっ? 嘘だろ?
たったあれだけで四割なくなるって事は下手したら次死ぬって事か! 今まで以上に集中する。流石「職業:魔法剣士」「ランク:Eランク」「特殊攻撃、通常攻撃、魔力、スピード:Sランク、特殊防御、通常防御:Eランク」「所属:無」の攻撃に特化した魔法剣士だった。って事は攻撃最強? 蓮心は覚悟を決め一か八か兵士の一撃を躱しやけくそに剣を振り攻撃してみる。すると奇跡的に剣先が兵士の身体に少しだけ振れる。
兵士のHPが一瞬で八割なくなる。
成程……「防御最弱」「攻撃最強」って事ね。
納得、納得、納得、って出来るか!
あの女神、誰が生きるか死ぬか命懸けの異世界に行きたいと言った? 確かに攻撃と防御を足して二で割ると平均値ではある。これはさっき冗談半分で思っていた一撃で死んじゃうステータスだと本気で認識を改めないといけないみたいだ。何か偶発的な事故とかそうゆうのをなしにしてあの女神を見つけ出しまずは女神を問い詰める事にしよう。それが第三目標だ。っとその前に目の前の事に集中しないとだった。
その時、左上のオレンジ色のゲージがいつの間にか満タンまで復活していた。きっと兵士達と戦っている間にMPが全回復したのだろう。
『スキル獲得:基本の型(剣士)』
『スキル発動:基本の型使用しますか?(MP消費なし) YES/NO』
どうやら兵士達が使っている剣の基本となる型を模倣したらしい。
面白そうなので試しに使ってみる。
そうと決まればYES。
兵士二人の攻撃に対し意識せずとも剣で相手の攻撃を防御し反撃出来るようになった。どうやらこの世界では経験と言うよりはスキルがあるかないかが一番重要らしい。
「こいついきなり動きが良くなったぞ?」
「気を付けろ」
「わかってる」
剣と剣が何度もぶつかり合う。急に動きが良くなり強くなった蓮心に兵士達が二人がかりで攻めるが二対一で力が拮抗する。どうやらこちらの攻撃力が純粋に高すぎるのか、蓮心が攻撃した兵士が一撃で怯む。
その時、兵士二人の後方から大きく低い声が聞こえてきた。
「お前達、もういい。下がれ」
「はっ!」
「はっ!」
偉そうな奴がとうとう腰にある鞘から剣を抜刀し蓮心の方に向かって歩いてくる。そして、兵士二人が下がる。この勝負、周りの雰囲気から察してあの男を倒せば勝ちらしい。ならばと思い蓮心が笑顔になる。少し離れた検問からこちらを見ている兵士、商人、エルフ、旅人、街の人と言った方々には大変申し訳ないがこちらも本気で行くとする。
「お前何者だ?」
偉そうな奴の視線が蓮心に突き刺さる。
「えっと……さっきも言いましたが異世界から来た人間です」
「では問う?」
両者の距離が徐々に縮まる。
偉そうな奴は歩き、蓮心は剣を両手で持ちその場で立ち止まっていた。
「はい」
「お前の目的はなんだ?」
「そうですね……」
女神を問い詰め全てを吐かせた後に気が向いたら助けてやるつもりだと本心をそのまま口にすると相手の怒りを買いそうなのでオブラートに包み伝える。
「マリアのお願いを聞くかを決める為にもまずはマリアに会う事ですかね?」
「わかった」
お! 何だ見た目に寄らず話しが分かる奴じゃないか。
そうだ、こんな戦いは止めて、さぁ、マリアの元に案内してくれ。
「俺を倒したら行かせてやる」
こいつも話しの通じない奴だと認識を変える。
蓮心の表情から笑顔が消える。
「本気で来い、小僧!」
偉そうな奴が急に走ってくる。
『スキル獲得:達人の型(剣士)』
『スキル発動:達人の型使用しますか?(MP消費なし) YES/NO』
当然YESだ。
まだ剣すら合わせてないのにスキルを模倣したらしくウインドウが出現した。
そのままメニューから「スキル一覧」を開く。
『スキル発動:隕石召喚使用しますか? YES/NO』
YES。
力の差を見せてやる。
『連続スキル発動:隕石誘導使用しますか? YES/NO』
勿論YESだ。
上空に隕石が出現する。ようやく溜まりに溜まった怒りを隕石に乗せて相手にぶつけて発散する時が来た。走っていた剣士が突如上空に出現した隕石を見て急に足を止め何かを口にするが隕石が落ちてくる音が煩くてよく聞こえなかった。
そして検問の一部が城壁と一緒に壊れ、蓮心と戦闘中だった三人が瀕死の状態となる。勿論手加減はした。ドラゴンですら一撃で倒す魔法をいくらイライラしていても人に向けて本気で打つようなことはしない。
「ふぅ~すっきりした」
とりあえずストレス発散になったので背伸びをして深呼吸をする。
視界に『検問兵士三名撃破。報酬獲得』とウインドウが出現する。
報酬は『9000ギルド』『兵士の兜(下位)』『兵士の鎧(下位)』『兵士の剣(下位)』『兵士の籠手(下位)』『兵士の鞘(下位)』『兵士の紋章(下位)』だった。
どうやら勝ったらしい。
検問近くにいた人々は蓮心を見て、恐怖する者、物珍しそうに見る者、目を大きくして驚きながら見ている者、中には気絶した者と色々といた。MPゲージも手加減したからなのか二割程度しか減ってなかった。MPが残り八割にHPが六割と序盤にしてはそこそこいいスタートだと自分を褒める。いつの間にか検問にいた兵士達は隕石の効果範囲から逃げていた。蓮心と戦っていた三人は重傷でまともに話せそうにないので他の兵士の所に行く。
「あの~?」
「はっ……はい?」
「ここ通っていいですか?」
「どっ、どうぞ」
兵士が蓮心を見てオドオドしながらも答える。蓮心からしたらそんなに凄い魔法なのか?と少々疑問では合ったがとりあえずローズ街に到着で来たので良しとする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます